なぜソーシャルVRユーザーは「BOOTH」に集うのか? クリエイターとユーザーを“体験価値”で繋ぐ取り組みに迫る

なぜVRユーザーは「BOOTH」に集うのか?

 『VRChat』をはじめとしたソーシャルVRにおいて「クリエイターエコノミー」は欠かせない存在だ。

 無数に存在するアバターやワールドの数々は、企業が提供するものだけではない。ユーザー兼クリエイターである個人が手がけたものも多数存在し、彼らはそれらを販売することで収入を得て、次の制作費に充てたり、モチベーションに繋げたりしている。そうしたクリエイターエコノミーによる好循環は、ソーシャルVRの広がりに大きく寄与してきた。

 そして、『VRChat』におけるクリエイターエコノミーを語る上で欠かせない存在が、「BOOTH」だ。「BOOTH」は、ピクシブ株式会社が運営するクリエイターズマーケットで、イラストや漫画、音楽、オリジナルグッズなどなど、個人クリエイターが気軽に創作物を頒布できるマーケットプレイスである。

 この「BOOTH」では、アバターはもちろん、その衣装や髪型、アクセサリー、ワールドといった『VRChat』で利用できるアイテムが幅広く販売されている。海外のユーザーからも利用されていたり、企業がソーシャルVRに進出する際にも利用されるなど、『VRChat』とBOOTHの関係性は非常に深い。

 まず「BOOTH」において『VRChat』に関連する商品は主力といっても差し支えないほどの規模になっている。検索欄の人気順ランキングには『VRChat』用のアバターがたびたび上位にランクインするほどだ。

 

 興味深いのが、商品の単価が他ジャンルの出品物に比べて高額な点だ。アバターなどは5000円前後の価格帯のものも多く、それにも関わらずそれらのアイテムがランキングに並ぶことも多い。BOOTHの人気順のアルゴリズムは注文数も考慮されているので、そのことを考えると取引規模の大きさが伺い知れるだろう。

 こうしたアバターなどの売上は、BOOTH公式が公開している資料「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書」からも明らかだ。「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書」によると、アバターやワールドが含まれるカテゴリ「3Dモデル」は、2022年には24億円の取引高推移を、注文者数は12.9万人を示している。

 また、「3Dモデル」カテゴリを利用するユーザーは、「注文者数あたりの注文回数が他カテゴリの数倍以上ある」「まずBOOTHに来てから商品を検索する」傾向があるとのこと。このことから熱量の高いユーザーが多く存在することがわかるだろう。

 そうした背景もあり、「BOOTH」は2022年11月に『VRChat』との提携を発表。『VRChat』に「BOOTH」と連携したワールドが2つ公開された。

 最初に公開された「BOOTH House」は、モデルハウスのワールドだ。『VRChat』ユーザーが過ごしやすいように最適化されたデザインを採用しており、ワールドとしてもかなりクオリティが高いのだが、注目するべきポイントは別にある。

 このワールドには、入り口に「虫眼鏡」が設置されていて、この虫眼鏡を家具などに向けると、商品名などそのモデルの情報が出てくるのだ。そして、そのまま「BOOTH」の商品ページにアクセスすることもできる。筆者も実際に使ってみたが、虫眼鏡をあちこちと向けてみたくなって、一つ一つのアイテムに注目しながら楽しむことができる。こうした、バーチャルならではのショッピングを楽しめる仕上がりになっているのだ。

 そして8月1日に第二弾としてオープンしたのが「BOOTH Cafe」だ。こちらはアバターの試着ができるワールドとなっている。

 4つのカテゴリーに分かれた棚から好きなアバターを試着することが可能で、さらに、アバターをお気に入りに登録すると、棚に陳列されるアバターが更新される。好きなアバターを次々に登録していくことで、総勢311種類の登録アバターから自身のお気に入りを見つけやすくなるシステムとなっているのだ。

 1つのワールドでここまでの数のアバターが試着できるのは、「BOOTH Cafe」ならではの魅力といえるだろう。カフェとしても上質なワールドとなっているので、試着したアバターを使って友だちと撮影会をしてみる、なんて使い方も悪くないだろう。

 ここまでで分かる通り、「BOOTH」と『VRChat』が連携したワールドは、ユーザーとクリエイターエコノミーを自然に結ぶギミックが用意されているのが特徴的だ。いかにしてユーザーが制作したものを直接届けられるか、という点に趣を置いてあるのがよく伝わってくる。

 クリエイターエコノミーに欠かせないプラットフォームが日本企業であることは、非常に貴重だ。「BOOTH」には、これからもクリエイターエコノミーが活発化する取り組みを続けてもらいたい。

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