連載:エンタメトップランナーの楽屋(第六回)

「アイドル」大ヒットの鍵や、アーティストの活動に寄り添うための"意思統一”の重要性 FIREBUG 佐藤詳悟×YOASOBI プロデューサー屋代陽平対談

 お笑い芸人や俳優、モデル、アーティスト、経営者、クリエーターなど「おもしろい人=タレント」の才能を拡張させる“タレントエンパワーメントパートナー“FIREBUGの代表取締役プロデューサーの佐藤詳悟による連載『エンタメトップランナーの楽屋』。

 第六回は「小説を音楽にする」ユニット『YOASOBI』のプロデューサーを務めるソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代陽平氏をゲストに迎える。

 いきものがかりなどのアーティストのプロデュース事業を展開する佐藤氏と、アーティストプロデュースを生業とする屋代氏。アーティストとの付き合い方から、ヒットの法則について話を聞いた。

「アイドル」の大ヒットは狙ったホームランではない

ーーまずは屋代さんと佐藤さんが出会ったきっかけについて教えてください。

屋代:初めてお会いしたのはコロナ禍の2021年ですかね。打ち上げと称した飲み会で、いろいろとお話させていただいて。その後、MAPPAの大塚さんとFIREBUGの佐藤さんとご飯に行ったのを覚えています。今回の対談の依頼をもらい、過去の連載を見てみると、自分の知り合いが多く出ていて驚きました(笑)。

屋代陽平

佐藤:YOASOBIの楽曲「セブンティーン」をYouTubeで観ていたら、これってMAPPAが制作したんだと思って。たしか、屋代さんに大塚さんを紹介した感じがするけど、いろんな人をつないでいると、誰に誰をつないだかわからなくなりますね。

屋代:その時はたぶん、講談社の川窪(慎太郎)さんを紹介してくれるという話で、川窪さんが一緒に連れてきたのがMAPPAの大塚(学)さんだった気がします。

※川窪慎太郎とは、講談社の漫画編集者。人気漫画『進撃の巨人』を連載当初から担当。

※大塚学とは、『呪術廻戦』『チェンソーマン』の制作を手掛けたアニメーションスタジオ・MAPPAの代表取締役。

佐藤:そうだったかもしれないですね。それで早速、YOASOBIの話題に入りたいんですけど、まさに「アイドル」がめっちゃヒットしている最中じゃないですか。プロデューサーの感覚的には怖いのか、それとも嬉しいのかで言うと、どういう心境を抱いていますか?

屋代:それで言うと嬉しいですね。僕が楽曲を作っているわけでもないんで、そういう意味での怖さはないんです。ただ、「アイドル」はものすごいスピードでバズっているぶん、落ち着くのも早いかもしれないので、そこをどう下げ止まらせるかは考えないと思っています。

佐藤:「アイドル」があれだけバズっているのに、意外と淡々としているんですね。「よっしゃー!」みたいな気持ちはなかったんですか?

屋代:「アイドル」はMVのプレミア公開の同時視聴が5万人くらいだったんですけど、これはすごいなと思いました。また、YOASOBIは先日まで初の単独アリーナツアー『YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”』を行っていたんですが、その日程が進むごとに会場の反応が良くなってきているのを感じています。この前のさいたまスーパーアリーナでのライブも、凄まじい盛り上がりを見せていて、本当に勢いを感じています。

佐藤詳悟

佐藤:以前からいくつも曲を出しているものの、今回の「アイドル」の反応の良さは他とは比較にならないと思いました。これはホームランを狙ってやっているのか、 それとも仕込んだものがいろんなタイミングやきっかけが重なってホームランになっているんですかね?

屋代:基本はすべて同じ熱量を持って仕込みをしているわけなので、狙っているというよりも偶然ホームランになるというのが近いですね。自分たちでできることは限られているので、あとは外的要因なども結構絡んでくると思うので。

佐藤:数が多いと質が落ちるとか、そういうのもあまりないんですかね。

屋代:もちろん、そうならないように意識はしていて、打席になぞらえるとすると、1番最初の打席と9回裏の打席では全然意味合いが違うじゃないですか。ホームランを打たなきゃいけない瞬間、バントが効果的な瞬間みたいな異なる役割があると思うんです。

 いまだったら「こういう狙いを持って打席に立とう」という考えや、「これはホームランを狙おう」、「これは塁に出よう」みたいなことを都度判断し、メンバーと意思決定しているような感じです。

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