人工筋肉と圧力センサーで遠隔からハグができる 「Hugtics」が示す“ふれあい”の未来
実際に「Hugtics」を体験 デバイスによる遠隔ハグが確かにもたらす“安らぎ”
実際に「Hugtics」を体験してみた。ベストを着用し、「HUG ME!」と書かれたトルソーを抱きしめてみると、自身の抱きしめた力がベストを通してフィードバックされる。たしかに「ぐっ」と抱きしめられるような感覚があった。写真で見ると網目になって貼り巡る人工筋肉は窮屈そうにも見えるが、感じる圧力は心地よいものだった。トルソーの肩に手を回したり、後ろから抱きしめてみたり、色々な形でトルソーにハグを試してみた。
続いて「他人のハグを感じる」という体験も行った。別の人物にトルソーを抱きしめてもらうことで、離れた場所でハグを体感できるのだ。体験会では目の前にいる人物がトルソーを抱いており、この感覚がベストを通して与えられるわけだが、少し気恥ずかしくもあり、不思議な感覚だ。ビデオ通話などを繋いで体験すると、また違った感覚になるのだろう。
最後には「感性アナライザ」による脳波計測を組み合わせた「幸福度の推移チェック」も行われた。1分程度、目をつむり、ヘッドホンを付けてトルソーを抱きしめる。耳元では自身の心音が聞こえる仕組みだ。心音を聞きながら自分のハグで自分を抱く体験には体験したことのない奇妙な安らぎがあった。1分の後、自分の脳波をアナライズした画面を見せてもらうと、この体験中に幸福度が上昇していることが見て取れた。
私の番が終わり、取材陣が順番に体験していくのを観察しあっていると、取材とは思えない“ほがらかな空間”が生まれていたのは印象的だった。身体コミュニケーションには安らぎや優しさを与える、根源的な力があると感じた取材だった。
本プロダクトについて大瀧氏は、今後は一般企業とのコラボレーションを加速していきたいと語っている。
「SXSWに出展したのは、日本よりも海外のほうが非言語コミュニケーションが活発だと考えたからです。出展も好評に終わり、今後は国内での広がりを大事にしていきたい。メンタルヘルスを改善することや、エンターテイメントでの活用なども色々想定できるはずです」
個人的には「非言語コミュニケーションを遠隔化して体験する」という仕組みは特にVRデバイスとの相性が良さそうだと感じる。「Hugtics」の今後の発展に期待したい。
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