ユーザーとアーティストが生成AIで一緒に作り上げるバーチャルライブ体験 「LAIV」の中で舞う「haju:harmonics」を観た

ユーザーとアーティストが生成AIで共創するライブ

 Dentsu Lab Tokyoとstuが共同開発した、ユーザー参加型ライブツール「LAIV(ライヴ)」のプロトタイプが発表された。このツールはバーチャル空間上でのライブ演出において画像生成AIを用いた表現を提案するもので、ユーザーがAIで生成した画像をリアルタイムでライブパフォーマンスの一部として組み込むことができるため、アーティストとユーザーが共同で新しい表現を創造できるという。ここでは同ツールの詳細な解説と、プロトタイプ体験会の様子をお届けする。

 「LAIV」は研究・企画・開発を一手に手掛けるクリエイティブ・R&D組織であるDentsu Lab Tokyoと、エッジテックとストーリーテリングによるエンターテインメントの再発明を実現するテクニカルチーム・株式会社stuが共同で開発したバーチャルライブツールだ。近年特に注目される画像生成AIを活用して、従来のVRライブの問題点であったアーティストと観客との距離感を縮め、参加型のライブ演出を実現するという。

 具体的には、観客(ユーザー)はライブを鑑賞しながらプロンプトにテキストを入力でき、このテキストによって生成された画像がライブ空間に反映されるという仕組みを持っている。この仕組みにより双方向性のあるライブが楽しめるということだ。プロトタイプの試験運用第一弾の体験会実施にあたっては、VSinger「haju:harmonics」のライブパフォーマンスが行われた。体験会会場にはPCが用意されており、キーボードとマウスで操作しながらライブ演出を楽しめるようになっていた。

 

 ライブが始まると、体験会参加者たちが「haju red」「haju with flower」といった命令文を入力し、これがライブに反映されてさまざまな画像が生成される。背景のステンドグラスが忙しく色を変えたり、グリッチのような演出が付与されたりと面白い効果もあり、自分の命令文で生成された画像がライブを彩るという新しい演出を体験できた。また、他の参加者が入力した命令文を見ることもでき、こうした観客同士でライブを作っていく体験も新鮮だと感じた。

 Dentsu Lab TokyoのPlannerである末冨亮は、「LAIV」について、「ユーザーとアーティストによる双方向体験をコンセプトに設計されました。このツールは、AI技術を活用して、アーティストとユーザーが互いに影響を与え合い、共同で新しい表現を創造する機会を提供します。バーチャルライブで大切な熱量の可視化、その瞬間立ち会うことでしか生まれない風景を楽しんで頂ければと思います」とコメントしている。

 今回体験した「LAIV」はプロトタイプであり、実際にどのように実装されるのかはわからないが、「観客の命令文によって演出が変化するライブ」というコンセプトには大きな可能性を感じた。仕組みとしては、VRグラスやスマートフォンでも同様の体験ができるだろう。平沢進やSound Holizonなどが手掛けているようなインタラクティブ・ライブ(ここでは「観客の選択で進行が変化する仕組みを持つ音楽ライブ」をこう呼ぼうと思う)がバーチャルの世界でも実現できるなら面白い。

 その仕様上、同じ演出のライブは二度となく、アーティストは一期一会のライブ体験を提供できる。同一の公演であっても何度も生成の異なる演出を楽しむことができる点も魅力的だ。また、姿の見えないユーザ同士で演出を補完し合うような面白さも生まれるかもしれない。「ライブTシャツを買って特定の曲で同じ色のペンライトを振る」というような、現在実世界で楽しまれているようなライブの楽しみ方とも、現実世界で実験的に行われている「インタラクティブ・ライブ」ともまた別の、バーチャルにしかない独自の体験が生まれることに期待したい。

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