元Juice=Juice・宮本佳林が明かす「ボカロ愛」。DECO*27とつんく♂に共通する“魅力”とは?

宮本佳林が明かす「ボカロ愛」

 Juice=Juiceの元メンバーとしても活躍した宮本佳林が、4月30日の『ニコニコ超会議2023』内「超歌ってみた」ステージに出演。40mPの「恋愛裁判」とバルーンの「シャルル」を歌唱した。今回リアルサウンドテックでは、歌唱前の宮本にインタビューする機会を得たため、彼女がボカロに出会ったきっかけや歌唱楽曲への思いなどについて、熱い思いを語ってもらった。

宮本はボカロで育ち、ボカロに救われたーー人生の一部となっていた「VOCALOID」の存在

ーー宮本さんはかねてからボカロ好きを公言されていますが、ボカロとの出会いについて教えてください。

宮本佳林(以下、宮本):私、もともと中学生くらいのころからニコニコ動画を見ていたんですよ。良い意味で頭のネジが外れたような動画も多かったので、グッと引き込まれてしまって(笑)。色んな動画を見ていくなかで、ボカロ楽曲もそのなかにあって、それを聴いていたのがボカロとの出会いです。

 ただ、そのころは「ボカロに熱狂している」というわけではなかったんです。自分も人前で歌って踊るアイドルとして、どちらかといえば「初音ミクちゃんに仕事を取られちゃうかも」という危機感を感じていた部分もあって。でも、高校生ぐらいになったころには、気づいたらもう自分の人生の一部になっていたというか……当時の曲を聴いたらジーンとくる、くらいの存在になっていたんですよ。

ーー気づかぬうちに、音楽の原体験のひとつになっていたんですね。そこからさらに好きになったのはどのくらいなのでしょう?

宮本:以前、機能性発声障害で声を出せなくなったことがあって、さらに突発性難聴にもなってしまって。「もう歌えないかもしれない」という状態になったとき、「音楽をやめてしまおうか」とも思ったんです。ただ、そこから「もう一度ボカロを聴いてみよう」と思って聴いたら、歌詞や曲がこれまで以上にしっくりきて、「やっぱりボカロが好きなんだ」と再認識して、どんどんのめり込んでいきました。

ーーいまでは宮本さん自身が作曲もされているそうですが、そこにもボカロ文化の影響はあるのでしょうか。

宮本:作り始めるきっかけになったのは、まさに先ほどお話しした出来事に加えて、「このコードだからこういう風にメロディがハマるんだ」という風に、曲への理解を深めたいという気持ちもあったかもしれません。そこから『Logic Pro』を使うようになり、自分のバースデーイベントなどで、毎回必ず1曲は自作して、ファンのみなさんに披露するようにしているんですよ。ただ、1曲作るのにもすごく苦労してしまって……毎年苦しんでいますが(笑)。

ーー作曲するときの引き出しにも、ボカロ成分が沢山詰まっていそうです。よく聴いていたボカロPさんは?

宮本:DECO*27さんの曲がすごく好きです。かつては「ライアーダンス」や「弱虫モンブラン」などをよく聴いていて。そのころは、好きだなと感じた曲でも、誰が作曲したかまでは見ていなかったんですが、改めて好きな曲を振り返ったときに、DECO*27さんの曲がかなり多かったんですよね。

DECO*27 - 弱虫モンブラン feat. GUMI

ーーとくに好きな曲、印象にのこっている曲はありますか?

宮本:DECO*27さんの曲だと、先ほどお話しした以外には「妄想税」も好きです。人間が原曲キーで歌える曲なので、カラオケでもよく歌っています。ほかには、流星Pさんの「magnet」も好きでしたね。

magnet【初音ミク・巡音ルカオリジナル】

 一番衝撃を受けたのは猫虫Pさんの「繰り返し一粒」です。ミクとリンのパートをマッシュアップするとあんなことになるんだ……と衝撃的で、とても感動しました。自分の曲でもああいうことをやりたいと思ったんですが、まったくコードとかもわからないので、まだまだ先は長いですね(笑)。

【初音ミク】繰り返し一粒【オリジナル】
【鏡音リン】繰り返し一粒【オリジナル】

昨日の敵は今日の友? かつて脅威に感じたVOCALOIDは“最高のコラボレーション”相手に

ーーここ最近は『The VOCALOID Collection(以下、ボカコレ)』のようなイベントもあり、ボカロやニコニコ動画がまた脚光を浴びていますよね。シーンを古くから知る一人としてどう受け止めていますか?

宮本:『ボカコレ』は「自分でもできるかも」と後押しをしてくれるすごくいいイベントだと感じていますね。私は自分に自信も無いし、何もできない、何もない人間だって思っていた時期があって……きっとほかの人にもそういうことってあると思うんです。

 けれど、『ボカコレ』が「できるかも」と思わせてくれて、自分の作った曲にコメントとかが残ったら絶対嬉しいだろうなって。そして、それによってまたボカロシーンが盛り上がる。すごくいい循環を生んでくれているでしょうし、本当に魅力的な場ですよね。

ーー宮本さんご自身も『ボカコレ』に参加してみたいと思ったことがあるんですか?

宮本:ありますよ。でも、私のレベルが低すぎて……もっと曲が作れるようになったら「絶対にVOCALOIDを迎え入れる」って決めてはいるんですけど、まだ迎え入れられてないんですよ。いい曲じゃなかったら、初音ミクちゃんに歌わせたくないから(笑)。

ーー大好きなVOCALOIDだからこそ、導入のハードルを上げてしまっているのかもしれません(笑)。

宮本:そうなんですよ! こじらせちゃってるんです(笑)。自分で作った「なんだこれ」みたいな曲を、自分が歌う分にはいいんですけど、初音ミクちゃんやリンレン(鏡音リン・鏡音レン)に歌わせたくなくて(笑)。

 もちろん、家でVOCALOIDが歌ったら、絶対に感動すると思うんです。けど、まだちょっと先ですね。

ーーここ数年のボカロシーンの盛り上がりについては、どう感じていますか?

宮本:私は、VTuberさんの影響がすごく大きいと感じていて。もともと、ボカロ楽曲って人間が歌えないような曲を作っている方も多かったじゃないですか(笑)。それを、私にとってもカリスマ的存在である、ぐるたみんさんや島爺(SymaG)さんたちがすごく人間的に歌っていて。このお二人のあとから「歌ってみた」をやる方がすごく増えてきたように感じています。

【そんなふいんきで歌ってみた】インビジブル【ぐるたみん】

 ただ、歌以外の活動をやる方って少ないじゃないですか。私は+α/あるふぁきゅん。さんが大好きなんですけれど、VTuberみたいな活動はせずに、あくまでも「歌い手」として活動をされていて。もちろん、歌い手としての姿が好きな方もたくさんいらっしゃると思うんです。でも、活動をずっと見ていられる機会があるとファンとの距離がどんどん近くなっていくじゃないですか。

【ヤンキーぽく歌ってみた】いーあるふぁんくらぶ【あるふぁきゅん。】

 その面で、VTuberさんって普段から配信活動をされていて、ファンとの距離が近い存在だと思うんです。それで、「『歌ってみた』出すから聴いてよ!」と呼びかけたときにバーッと聴いてもらえる。それでVTuberを起点にして「歌ってみた」の文化が広まっていったようにも感じていて。昔は「ボカロに仕事を取られちゃう」「アイドルの存在理由がなくなっちゃう」と思っていたんですが、いまはお互いの良いところを引き出しながら、最高のコラボレーションができるようになってきていると思います。

ーー争ったり、食い合ってしまうのではなく、高め合っていけるような関係だと。

宮本:そうですね。個人的にはかつてのボカロシーンよりも、すごく良い環境になってきたと思っています。

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