あの人のゲームヒストリー 第二六回:吉田早希
「ゲームやサブカルは“学びの種”」――カルチベートされた人間を目指すグラビアアイドル・吉田早希のルーツを探る
RPGのように、“知識という名のカギ”を持っていることで開く扉がある
――最近買ったゲームは?
吉田:新作ゲームではないのですが(笑)、最近、コレクションアイテムとして1991年に発売された『電脳学園IV エイプハンターJ』というPCゲームを手に入れました。
『電脳学園』シリーズの4作目で、クイズに正解するとヒロインが服を脱いでいくという、ちょっとエッチなゲームなんです。
じつはこれ、ガイナックス(※1)が開発しているんですよ。
(※1)ガイナックス……アニメ制作会社。テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』、OVA『トップをねらえ!』などが代表作。
高校・大学のころにガイナックスの作品にハマっていて、なにかの本でこの『電脳学園IV エイプハンターJ』の存在を知り、「いつか手に入れたいな」と思っていたんですけど、最近見つけたので買っちゃいました。
この作品の面白いところは、ゲームソフト(フロッピーディスク)のほかに、『高校生の現代社会科 猿害の実際』という教科書風のガイドブックが付録として付いてくるんです。
「裸にして尻尾の有無を確認しないと“人間”と“進化した猿”の区別できない」という設定を脱衣の理由にしていて、そのゲームの世界観を説明するためのガイドブックなんです。
世界観を説明するのに、わざわざ教科書風のガイドブックを作ってしまうというのが、まさにガイナックスらしいなと思うんですよね。
じつは、本日の衣装は、そんなガイナックスの前身となった、DAICON FILM(※2)のロンTでキメてみました!
(※2)DAICON FILM……アニメや特撮を中心とする自主映画の制作集団。岡田斗司夫、武田康廣、庵野秀明、赤井孝美、山賀博之などがメンバーに名を連ねていた。
――吉田さんは最近のゲームだけではなく、昔のゲームにも詳しい印象があります。
吉田:じつは私、マグナボックス社の家庭用ゲーム機「Odyssey(オデッセイ)」(1972年)がめちゃくちゃ欲しかったんです。というのも私、「日本初」とか「世界初」という枕詞にめちゃくちゃ弱くて(笑)。
だいぶまえの話ですが、たまたま読んだ『週刊ファミ通』で「Odyssey」が紹介されていて、そこには「世界初の家庭用ゲーム機!」って書かれてたのですが……こう、好きなものの起源や由来にとても興味が湧くんです。
“好きなものだからこそ、単純に知識として知っておきたい”という理由もあるんですけど……。
私、グラビア業界が長いので、撮影現場などで「〇〇が好き!」というと、「じゃあこれのルーツは〇〇って知ってる?」という謎の先輩(おじさま)が現れることも多いんです(笑)。
その方たちに“対抗する”わけじゃないですが(笑)、より「話題を広げたい」「コミュニケーションを取りたい」という思いが知識欲に繋がっている部分もあるかもしれません。
それと、中学・高校のころはあまり勉強が好きではなかったんですけれど、大学に入ってから「学ぶっていいことだなあ」と思ったんですよね。
私が大学に進学したのは、「何かを学びたい!」という気持ちではなく、「高校を卒業してそのまま働くのもなあ」という、いわゆるモラトリアム期間を延ばしたいがためでした。
最初は、授業も半分うわの空で聞いていたのですが、ある時、急に「学ぶって面白いな」と感じたんです。
というのも、1コマ90分の授業って、その先生のショーを見ているのと同じじゃないですか。そう思うと、「めちゃくちゃ面白いなあ!」と。
たとえば、RPGでフラグを立てるのといっしょで、知識という名のカギを持っていることで開く扉があるんですよね。学ぶこと、そして知識を得ることは、そのカギをたくさん手に入れることなんだな、って感じたんです。
だからこそ、昔のゲームの知識を得ることで、よりその分野の、異なる魅力や面白さに気が付けることもあると思うんですよね。
――ゲーム以外にも、さまざまなサブカルチャーにもお詳しいですよね。
吉田:学生時代、(サブカル寄りの)友だちが少なかったので、なにか知りたいことがあったら人に聞く、というよりも自分で調べることが多かったです。
たとえばファミコンの『東方見聞録』のパッケージイラストを描いているのは太田螢一さんという画家の方なのですが、その方がタコシェ(※3)の紙袋の絵を描かれている、という繋がりからタコシェの存在を知ったり……。
(※3)タコシェ……東京・中野にあるコンセプトショップ。自主制作本やインディーズ系のCDや映像などを取り扱う。
まわりにサブカル好きな友だちが多ければ「タコシェに行こうよ!」と誘われることもあったと思うんですけどね(笑)。
「〇〇に詳しい」と思っていただけるのは、そうやって少しずつ知識として得ていった結果かもしれません。
さきほども少し触れましたが、やっぱり人と話すときにいろいろな知識があると、会話が広がるじゃないですか。
それは、英語やフランス語が話せるということと同じで、“ゲーム語”や“マンガ語”という共通言語で話すからだと思うんですよね。
だからこそ、いろいろな物事のルーツを探っていくのが好きなんです。
たとえば、好きなマンガ家さんや作家さんがオススメしている作品も、すぐに気になって調べちゃいます。オススメしている作品のどんなところが、その人に影響を与えたのか、ということを知りたくなるんですよね。
先日も、手塚治虫先生のエッセイ集でベタ褒めされていたので、1957年に制作された『雪の女王』というアニメを視聴したんですけど、作画のキレイさとキャラの可愛さにグッときちゃいました。
手塚治虫先生のエッセイ集はいいですよ! 先生のマンガを読むのももちろんいいですが、エッセイはストレートにご本人の言葉で書かれているので、より先生の思考を辿れるんですよね。「手塚先生は何に影響を受けたのか?」「何を考えて作品を作られたのか?」、そういうルーツを知るのは本当に興味深いです。
それと、たぶん私はめちゃくちゃ臆病なんだと思います。“石橋を叩いて渡る”じゃないですけれど、あらかじめいろいろなことを知識として蓄えておいて、何かあったときに対応できるようにしておきたいんだと思いますね。