発売30年の節目、シリーズ最新作の発売日決定と共に振り返って考える『スーパーボンバーマン』という象徴

30周年『スーパーボンバーマン』の魅力とは

『スーパーボンバーマン』後の『ボンバーマン』は風来坊だった……?

 では『スーパーボンバーマン』以外の『ボンバーマン』シリーズには、そこまでのネームバリューがなかったのか? これに関しては、厳しいが「なかった」と言わざるを得ないだろう。そのためか、『スーパーボンバーマン』がシリーズ展開を終えた後、『ボンバーマン』はどれが主軸なのか、よりいっそう曖昧になってしまった。

 スーパーファミコンの後、時代を象徴する主力のゲーム機になったのはプレイステーションだ。そちらでは『ボンバーマンワールド』なる完全新作を第1弾として発売している。また、同期の次世代機でもあるセガサターンにも、『ボンバーマンワールド』に先んじて『サターンボンバーマン』を発売。最大10人参加可能な対戦を売りとする新作だった。

『爆ボンバーマン2』は、『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー・吉田直樹氏がハドソン在籍時に関わった作品として一定の知名度がある。

 そして、スーパーファミコンの後継機になるNINTENDO64(ニンテンドウ64)には『爆ボンバーマン』なる3Dアクションとなった完全新作を発売。このように当時の次世代機すべてで新しい『ボンバーマン』が供給されるという、驚きの展開をみせたのである。

 だが、いずれの新作も『スーパーボンバーマン』ほどの長寿シリーズにはなれなかった。唯一、長い展開を見せたのが2000年に発売された『ボンバーマンランド』だが、ナンバリング的には3作止まりで、『スーパーボンバーマン』には及んでいない。

 その後、『ボンバーマン』は設定を一新した新作、原点回帰を図った新作を相次いで出している。しかし、ナンバリング展開を見せる新作はほとんどなく、ますますもって主軸がどれかが見えにくくなってしまった。

 気づいたころにはハドソンが親会社のKONAMIに吸収され、予定されていたニンテンドー3DS向けの新作も発売中止。結局、7年近くに渡って『ボンバーマン』は家庭用ゲーム機の世界から姿を消してしまったのである。

 改めて振り返ってみても、『スーパーボンバーマン』以降の『ボンバーマン』はさながら“風来坊”だ。ひとつのシリーズ、ゲーム機にこだわらず、独自の道をひた走っている。おかげで『ボンバーマン』は原点たる、見下ろし視点型のアクションゲームという枠に留まらない広がりをみせた。しかし、主軸を定めなかったがゆえ、プレイヤー側から見れば「どれを買えばいいのか?」「どれなら他のプレイヤーと話題を共有できるのか?」といった迷いと分散をまたしても生んでしまった。

 まだ『スーパーボンバーマン』の後にプレイステーション、セガサターン、ニンテンドウ64で展開されたタイトルは、おぼろげながら軸は見えていたかもしれない。しかし、その後は新作を多数展開するあまり、ファンの分散を誘発させた感は否めない。特に2005年以降に展開された原点回帰、あるいは新路線を掲げた一部の新作に顕著だろう。

 思うに『スーパーボンバーマン』という名は、そのような歴史を積み上げたことによってますます象徴的に、そして重みのあるものになった印象である。実際、シリーズの一覧を見返しても、本当に『ボンバーマン』は固有の名前を冠した単発作品が多い。また、その時代を象徴するような主軸タイトルが曖昧だ。結局、「ボンバーマンといえばコレだよね」と呼べるものは『スーパーボンバーマン』ぐらい。

 そうした歴史と実績が残っているのを思えば、2017年発売の新作が『スーパーボンバーマン』の名を冠するのも妥当といえる。いまの時代に再始動するとなれば、最も象徴的なシリーズ作の名を冠した方がインパクトがあるし、当時の世代の関心も誘いやすいだろう。

 実際には別の理由があるのかもしれないが、それほどまでに『スーパーボンバーマン』という名は、シリーズの象徴になってしまった。実際、直撃世代の筆者もその名を聞いて「おっ」と思ったほどである。

 同時に『ボンバーマン』が『スーパーボンバーマン』以降、明確に軸を定めなかった弊害の大きさも感じざるを得ないのである。実際、『スーパーボンバーマン』シリーズを追いかけていた世代の中で、その後も『ボンバーマン』を欠かさず追い続けた人はいるのだろうか。憶測にすぎないが、相当少ない気がしている。筆者とて、気づいたころには脱落していた人間である。

 それほどシリーズにおける軸の不在は、プレイヤーの関心を誘う面でも深刻だったように思う。

新生『スーパーボンバーマン』の今後と、気になるオリジナル版の復刻

 かくして『スーパーボンバーマン R』で再始動を果たした『ボンバーマン』は、以降も『スーパーボンバーマン』の名を冠した新作で『スーパーボンバーマン R オンライン』を展開し、ついにはナンバリングの続編を出すに至っている。

 また、アーケードでもスピンオフ作品だが『ボンバーガール』なる新作を展開、従来の『ボンバーマン』とは大きく路線の異なる内容で、従来のシリーズとのすみ分けを図っている。

 『スーパーボンバーマン R』の発売当初は、バグの多さからプレイヤーからの不満が続出、厳しい出だしとなってしまったが、その後、数度実施されたアップデートで改善。今となっては、問題なく遊べるものに改められている。また、一時期の“風来坊”な『ボンバーマン』の時代を思えば、現在の『ボンバーマン』はどれが主軸で、どれがスピンオフ作品なのかが非常に明瞭で、追いかけやすくなっているのは素直にいい時代になったといえるだろう。

 そんな『スーパーボンバーマン』だが、実はオリジナルたるスーパーファミコン版は発売から30年が経った現在もなお、復刻の機会に恵まれずにある。

 元々、『ボンバーマン』シリーズ自体、復刻は一部に留まっている情勢にあり、その中でも『スーパーボンバーマン』に関しては2023年現在、5作すべてが現行の環境で遊べないままとなっている。Wii、Wii Uと展開された『バーチャルコンソール』でも、シリーズは1作も復刻されなかったのだ。

 バーチャルコンソールより前に遡れば、Windows PC用ソフトとして発売された『ボンバーマンコレクションVOL.2』に『スーパーボンバーマン』から『スーパーボンバーマン3』までの3作が、さらにその前のスーパーファミコンのゲームソフト書き換えサービス『NINTENDO POWER(ニンテンドーパワー)』では『スーパーボンバーマン3』が復刻している。逆に『スーパーボンバーマン4』以降は一切ない。また、いずれもいまとなってはプレイするのも困難を極める。

 なぜ復刻されずにあるのかは、オリジナルのプログラムデータ自体が破棄されている可能性が推察される。現にスーパーファミコンでハドソンから発売された『新・桃太郎伝説』のプログラムデータは、ディレクターを務めたさくまあきら氏が自らのWEBサイトにて「破棄された」との発言を残している。そのことから、『スーパーボンバーマン』シリーズも同様の状態にあると考えられるのだ。

 ただし、後に『PCエンジン mini』で『スーパー桃太郎電鉄II』の復刻が実現していることから、今後もずっと遊べないままの状態が続くとは限らない。それがいつの日になるのかはまったく分からないが、長い歴史を誇る『ボンバーマン』シリーズの中でも、とりわけ象徴的かつ、現代にも受け継がれし作品。9月発売の完全新作も楽しみだが、その原点たる5作すべてを手軽に触れられる機会の到来を心待ちにしたい。

 そして、現行のシリーズ作が末永く続き、「これこそが今の主軸となる『ボンバーマン』だ」という存在感を維持し続けることを、ファミコンの『ボンバーマンII』からシリーズに触れ、以降の新作を追い続けた人間として強く願うばかりだ。

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