“クリエイターライク”な姿勢にワクワクが止まらない Valveと争うのではなく、異なるスタンスを示したEpic Gamesに期待すること
ついに『フォートナイト』上でゲーム開発までできるように
Epic Gamesといえば、古くは『Unreal Tournament』から『Gears of War』、そして現在では『フォートナイト』とゲームスタジオとしても長い歴史と実績を持つが、それと同時にそれらを動かすゲームエンジンである「Unreal Engine」の開発・提供をおこなうソフトウェア会社でもある。
「Unreal Engine」は、1998年にリリースされたFPS『Unreal』に実装されて以降、およそ25年もの歴史を持つゲームエンジンだ。自社開発のエンジンでありながら、他社による商用利用も許可されているため、Ubisoftの「レインボーシックス」シリーズや、カプコンの「デビルメイクライ」シリーズをはじめとする競合他社のゲームにも使用され、2014年には、「最も成功したゲームエンジン」としてギネスにも記録されている。
このように、数多くのゲーム会社が利用してきた「Unreal Engine」は、2014年にリリースされた『Unreal Engine 4』では、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)によってプログラムを作ることができるシステム「ブループリント」の導入に始まり、エンジン自体もサブスクリプションを経て2015年には無料化されるなど、その道のプロだけでなく多くのクリエイターが手に取ることを考えたゲームエンジンとして進化し続けている。
そして2022年には、現行最新バージョンである『Unreal Engine 5』がリリース。グラフィックの進化とその処理のアップグレードで最新ハードすら上回りかねない表現が可能になり、さらに高クオリティなゲームを制作できるようになった。
映画『マトリックス』の仮想世界が描かれた技術デモは、そのクオリティの高さからゲーマーや開発者に限らず、多くの人の注目を浴びた。
そこから2023年になり、『Unreal Engine 5』はさらに進化を遂げる。3月22日に行われたイベント「State of Unreal」では、『Unreal Engine 5.2』のリリース発表を行うと同時に新たなツール『Unreal Editor for Fortnite』(以下、『UEFN』)が公開された。
『UEFN』とは、「Unreal Engine」を使って『フォートナイト』向けのコンテンツを制作できるツールだ。『フォートナイト』では、これまでクリエイティブモードにて、マップのカスタマイズや、同ゲームのシステムを利用したミニゲームの制作が可能だった。しかし、『UEFN』の実装により「Unreal Engine」を介して“まったく新しい”ゲーム制作までおこなえるようになったのだ。
ビジュアルアセットを用いたマップのカスタマイズもさらに幅が広がり、さらには『UEFN』の為に作られたプログラミング言語「Verse」を使うことで、より本格的な制作までできるようになった。扱いを極めれば『フォートナイト』とはまったく違うオリジナルのゲームや、映像作品すらも制作が可能となっている。
さらに、Epic Gamesから認可を受けたクリエイターが、制作したコンテンツのエンゲージメントに応じて収益を受け取ることができるシステム「クリエイター エコノミー2.0」も『UEFN』の配信と同時にスタートするという。これによりさらにコミュニティが盛り上がること間違いなしだ。
すでに『UEFN』で制作されたコンテンツが数多く配信されており、公式からも「コールオブデューティー」シリーズのマップ、ゲームモードを再現したものや、剣を振るって戦うシングルプレイ向けのアクションゲームが配信されている。
近年、任天堂から発売された『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』が、子どもでもわかりやすくゲームのプログラミングを学べるような環境・土壌を広げたり、『マインクラフト』を教材にした「STEM」教育(※1)が日本国内でも広まったりしている。
(※1)「STEM」教育……科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)、それぞれの頭文字を合わせた造語。テクノロジーやIT分野における教育モデルを指す。芸術(Art)、スポーツ(Sports)をくわえたSTEAM、あるいはSTEAMSも類語として存在する。
そして『UEFN』も、ゲームを作るうえで障害になりやすい“プログラミングの壁”を取り払い、「ブループリント」同様にビジュアルGUIを用いてわかりやすくゲームを作ることができるツールだ。大人だけでなく子どもにも高い人気を誇る『フォートナイト』で『UEFN』が利用可能になることで、広い年齢層にゲームづくりへの道が切り開かれ、多くのクリエイターが生まれるきっかけを作っていると筆者は考えている。
Epic Gamesは「Unreal Engine」でゲームエンジンのさらなる新境地を開拓しながらも、『UEFN』のような誰もがゲームクリエイターになれるツールを提供することで、後続のクリエイターが続く道を作っているのである。