“クリエイターライク”な姿勢にワクワクが止まらない Valveと争うのではなく、異なるスタンスを示したEpic Gamesに期待すること

Epic Gamesに注目

 PCゲーマーで「Steam」を知らない人はほとんど存在しないだろう。2002年よりValve社がサービスを開始したゲーム配信プラットフォーム「Steam」は、PCゲームにおけるダウンロード販売の礎を築き、2023年4月28日現在販売されているゲームの数が8万本を超えるほどの巨大なプラットフォームとなった。
〈参考:https://store.steampowered.com/search/?category1=998&ndl=1&ignore_preferences=1

Steam公式サイトより引用

 Steamの魅力として、セール時にはフルプライスのゲームが1000円弱で購入できるような破格の割引率や、年に数度開催される大型セールが挙げられる。しかし、筆者が思うSteamの最大の強みは、ストアの見やすさやUIのシンプルさなど、ユーザビリティを第一に考えたたサービスづくりにあると考えている。そのユーザーライクな姿勢が評価されてか、2000年代から現在に至るまで、PCゲームプラットフォームにおけるトップランナーとしてほぼ独走状態であり続けている。

 だが、2023年はその環境に大きな変化が訪れるかもしれない。『フォートナイト』でおなじみの「Epic Games」は、2018年に販売サービス「Epic Games Store」をスタートさせ、PCゲームプラットフォーマーとしてもPCゲーマーに広く知られることとなった。そんなEpic Gamesは、2023年に入ってからビッグニュースを連続して発表している。筆者はそのニュースから感じられる“クリエイターライクな姿勢を見て「今年はいよいよ大きな変化が来るのではないか?」とワクワクが止まらないのである。

クリエイターへの還元率が高い「Epic Games Store」で、ついに誰でもゲームの販売が可能に

Epic Games Store公式サイトより引用

 Epic Games Storeといえば、「独占配信」や「週替わりの無料配布タイトル」がゲーマーの間で話題となることが多い。しかし、じつは「クリエイターへの還元率の高さ」もストアの大きな特徴なのだ。ゲーム1本の売上に対する手数料として、AppleのApp StoreやGoogle Play Store、Steamは、取り分の割合が7:3、つまり30%をプラットフォーム側が徴収するのに対し、Epic Games Storeのの割合は8.8:1.2となっている。インディーゲーム人気の高まりから増えた個人クリエイターや、中小のゲームメーカーにとってこの還元率の高さは非常に魅力的に映るだろう。

 しかし2018年からの5年間、Epic Games Storeは、同社が認めたゲーム会社のみ販売を許すような形でストアを運営してきた。Steamは誰でもゲームが販売できることが魅力で、それはインディーゲームの流行や昨今のPCゲーム人気を生み出す要因にもなってきた。その反面、低品質なゲームが溢れかえり、注目されるべき作品が埋もれてしまうこともある。それを危惧したEpic Gamesは、スタッフがじっくりと選定したゲームを販売するようなシステムをとっており、段階的に取り扱いタイトルの幅を広げてきたのだ。

 そして2023年3月9日、かねてより準備されてきたEpic Games Storeの自主販売サービスがスタート。Epic Gamesが定めたゲームの品質に関する条件をしっかりと定めることにより、安全なフィルターがかかった状態で誰でもゲームが販売できることとなった。さらにゲームのレーティングや、ストアページのローカライズなどを無償でおこなうとしており、このことからも、クリエイターがよりよい環境で開発・販売ができる体制を目指していることがわかる。

Epic Games公式ブログより引用

 5年の月日をかけ、ついに誰でもゲームが販売できるようになったEpic Games Store。高い収益性や手厚いサポートなど、競合他社としっかり差別化を図り、時間をかけて勝負できる土台を作り上げたことで、プラットフォームとして独自の価値が生まれていることは明らかだろう。

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