日本HP「OMEN」新製品発表会で“欲張り仕様”の万能モデルが登場 一方、ゲーミングディスプレイで定番の仕様をあえて外したワケは?

「OMEN」新製品発表会レポート

 4月6日、東京・渋谷にて日本HPが展開するゲーミングブランド「OMEN」の新製品発表会がおこなわれた。発表された製品はゲーミングノートPC6モデル、ディスプレイ6モデルの12製品。特に注目すべきは、今回新たにラインナップにくわわったゲーミングノートPC『OMEN TRANSCEND 16』『OMEN 16』『VICTUS 16』の3モデルだ。

 発表会には日本HP社 パーソナルシステムズ事業本部 コンシューマービジネス本部 本部長の沼田綾子氏、同コンシューマー製品部プロダクトマネージャーの森谷智行氏が登壇し、新製品とともに同社がゲーミング事業において掲げる戦略が紹介された。

 はじめに登壇した沼田氏が語ったのは、ゲーミング市場におけるユーザーのトレンドだ。日本HPは「クロスオーバー」「クリエイト」「ソーシャル」の3つをキーワードとして挙げ、ユーザーがPCに求めるものや使い方を分析する。

沼田綾子氏

 1つめの「クロスオーバー」は、1つのデバイスをゲーム、仕事や学業、クリエイティブのすべてに活用することを指す。「クリエイト」に関してはストリーマーや動画実況者など、オンラインコミュニティへの高い関心を示し、自らも発信する側になるユーザーが増えているということだ。最後のソーシャルは、ゲームを遊ぶ動機について多くの人が「誰かと遊ぶからゲームがより楽しくなる」という性質を持っているという意味だ。

 また、クラウドゲーミングへの関心が高まっていることを背景に、これまでゲーミングモデルにのみプリインストールされてきたアプリ「Omen Gaming Hub」がノンゲーミングモデルにもプリインストールされることを発表。グラフィックボードを搭載していないノンゲーミングPCでも、一般的なストリーミング動画の再生がおこなえる程度のスペックとネットワーク環境さえあれば『GeForce NOW』を通じてゲームをプレイすることが可能であり、今後その需要がより高まっていくと想定しての方針だ。

 続いて森谷氏から新製品に関する説明がおこなわれる。目玉は『OMEN TRANSCEND 16』で、ユーザーのトレンドを強く意識しているのが特徴だ。同モデルは沼田氏が語った「クロスオーバー層」を主なターゲットとしており「薄く、軽く」を重視したという。そのうえで、ゲーミング性能と耐久性も最大限まで高められた万能モデルになっている。

『OMEN TRANSCEND 16』

 本体の外装にはマグネシウム合金を使用しており、耐久性を高めつつも重量は2.17kgと、16インチサイズのノートPCとしては比較的軽量だ。本体のスペックに関しても、Intelの第13世代CPUとNVIDIA RTX40〜シリーズを搭載しつつ、240Hzの高いリフレッシュレートに対応したWQXGA(2560×1600)ディスプレイを採用。まさに盤石の布陣だ。さらに、上位モデルではHDR対応にくわえてmini-LEDを採用、最大1180ニトの輝度でクッキリ明るく、そして美しさもバッチリ。全部載せ、といった仕様はまさに「クロスオーバー層」にピッタリだろう。

『OMEN TRANSCEND 16』

 そのほか、『OMEN 16』は主にコアゲーマー層に向けたハイエンド機種で、電力管理を最適化する「OMEN Dynamic Power」を搭載したことで全体的な性能が向上、『VICTUS 16』に関してもRTX40〜シリーズの搭載で、カジュアル層に向けたモデルながら快適なゲームプレイをしっかりともたらしてくれるものとなっている。

 また、同社が2021年に買収したゲーミングブランド「HyperX」も、OMENファミリー内においてさらに密接した連携をおこなっていくとのことだ。その第一歩として『OMEN 16』『OMEN TRANSCEND 16』の上位モデルにはHyperXのゲーミングヘッドセット『Cloud Ⅱ Core Wireless』が同梱される。

 とはいえ、森谷氏曰く「ただ“抱き合わせ”で販売するということではない」とのこと。実際、『OMEN TRANSCEND 16』ではヘッドセットのUSBレシーバーをPC本体に内蔵するという、大幅にコミットした内容となっている。このおかげで、ヘッドセットの電源をONにするだけでペアリングが完了するという、シームレスな仕様を実現している。

ゲーミングディスプレイのお披露目 24インチ/240Hzディスプレイ不在の理由は?

『OMEN 27qs』

 今回の発表会では、ゲーミングノートPC以外に、ゲーミングディスプレイのお披露目もおこなわれた。24インチ〜34インチまでの6モデルがラインナップした。それぞれの簡易スペックは下記。

(製品名:ディスプレイのインチサイズ/リフレッシュレート/解像度)
『OMEN 24』:24インチ/165Hz/FHD
『OMEN 27q』:27インチ/165Hz/QHD
『OMEN 27qs』:27インチ/240Hz/QHD
『OMEN 27k』:27インチ/144Hz/4K
『OMEN 32q』:32インチ/165Hz/QHD
『OMEN34c』(湾曲タイプ):34インチ/165Hz/WQHD

 ラインナップを見て筆者が疑問に思ったのは、「これだけ市場やトレンドに敏感でありながら、なぜ24インチ/240Hzのモデルを出さなかったのか?」ということ。FPSジャンルにおいては特に顕著だが、24インチ前後で高リフレッシュレートに対応したディスプレイを採用するプレイヤーが多く、競技シーンにおける大会などでも同様だ。その疑問を森谷氏にぶつけてみると、こちらも将来的なトレンドを予測したものであると答えてくれた。

森谷智行氏

 NVIDIAが「FPSにおいて、24インチ/FHDと27インチ/QHDのディスプレイでは、どちらを使ったほうが人間の反応速度が早いか」という内容の検証をおこなったところ、27インチディスプレイの方が111ms(0.11秒)ほど反応速度が速かったとのこと。これは、画面サイズが大きいほうが敵の頭が大きく表示され(表示されるピクセル数が多いため)視認性が高いことが理由とされている。今回のゲーミングディスプレイのラインナップも、それを踏まえたものとなっているとのことだ。
〈出典:https://developer.nvidia.com/blog/improving-aiming-time-on-small-fps-targets-with-higher-resolutions-and-larger-screen-sizes/

 トレンドとリサーチを踏まえて、かゆい所にしっかり手が届く新製品を続々と発表するOMENブランド。HyperXとの連携も本格化し、プロゲーミングチーム「DetonatioN FocusMe」へのスポンサード締結も発表され、eSports業界において大きな存在感を放っており、今後の同ブランドの展開に要注目だ。

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