最新ARグラス『XREAL One』レビュー 集中力が格段に上がり、“没入感”も想像以上

XREAL社は、AR(現実拡張)グラス『XREAL ONE』を1月17日に発売した。
これは同社が開発する空間コンピューティングチップ「XREAL X1」を搭載した初のモデルであり、単独3DoF(※首を軸にヨー、ピッチ、ロールの3軸運動)に対応している。簡単に言えば、移動しない限りにおいて周囲に空間を生み出してくれるというデバイスだ。0.68インチのソニー製Micro-OLEDディスプレイを搭載し、50度の視野角と3msという低遅延を実現している。
そしてツルの部分に搭載されたスピーカーはBOSEのサウンドエンジニアによって調整されたもの。「Spatial Sound Field 3.0」によって周囲への音漏れを極力抑えながら、臨場感のある音響を実現したという。
使うときは対応デバイスとUSB-Cケーブルで接続するだけ。ひとことで言えば、上質なメガネ型ディスプレイだ。デバイスの画面を映す以外のことはできない。今回は、お借りしたモデルを実際に試してみた。
メガネ利用者は専用レンズの購入忘れにご注意を
まずは手に持ってみての率直な感想から。サイズ感はゴツめのサングラスぐらいのもので、ケースも一般的なメガネケースと遜色ない。ディスプレイ部分の厚みもあるため、さすがに“サングラスと見紛う”とまでは言わないが、XR系のデバイスとしてはかなりコンパクトにまとまっている印象だ。
光沢を抑えたマット感のある本体は高級感がある。右側のツルには、Xボタン、音量ボタン(上下)、ショートカットボタンの4つのボタンが搭載されている。

付属のUSB-Cケーブルを接続すると、ディスプレイにロゴが浮かび上がり、接続したデバイスの画面がミラーリングされる。Xボタンをダブルクリックすることで設定画面が開き、ディスプレイ上の「画面サイズ」「表示距離」の設定と「ワイドモード」「3Dモード」の切り替えができる。もちろん音響設定やショートカットキーの割り当て、言語設定等の細かい調整もできる。
設定画面からはXボタンとショートカットボタンのクリック、ダブルクリック、長押しなどで各操作へ。「ワイドモード」「画面の透過」といった設定画面からアクセスできる操作を割り当てられる。

ここで注意しておきたいのが、メガネユーザーは度付きのインサートレンズの購入を忘れないこと。筆者は普段メガネをかけて生活しており(視力は両目とも0.4程度だったと思う)、メガネがなくても生活には困らないが、映画館では字幕が読みづらい。
『XREAL One』は最短でも4m先の100インチ程度のモニターを見るイメージなので、近視の自分は裸眼では文字がぼやけてしまい、そのままではほとんど使い物にならなかった。幸いにも薄く、軽い眼鏡をもっていたので重ねがけで対応できた。本来であれば度付きのインサートレンズを使用するのが正攻法なので、メガネユーザーは忘れずに手に入れておきたい。日本では株式会社ジュンが運営する眼鏡店「JUN GINZA」で専用のレンズを作ることができる。もしくはコンタクトレンズを使うのも良いだろう。
大迫力の画面に集中! 映像コンテンツへの高い没入感で一気見がはかどる
筆者が最も実用性を感じたのは映像コンテンツの鑑賞だ。今回は『iPad mini7』に接続し、10年以上気になったたまま放置していた鶴巻和哉監督のOVAシリーズ『フリクリ』全6話(約180分)をU-NEXTで一気見した。
驚くべきは映像の解像度だ。画面のピクセルが気になってしまうことなど全くない。というか、そもそもピクセルが見えないのでストレスがない。そして筆者が最も気に入ったのは周囲の情報をシャットダウンできる点だ。
自宅で映像コンテンツを鑑賞する際はだいたい手元にスマホがある。通知が来るといちいち集中が削がれるし、通知すら来なくとも手癖のようにSNSを開いてしまう。それは視界にスマホが入ってくるからだろう。
そこで『XREAL One』を使うと、周囲の視覚情報のほとんどを遮断してくれる。映画館よりもずっと集中できたし、映像そのものに深く没入できた。画面に引かれた線の筆致まで目で追えるような、人の手によって描かれた作品なんだな、と感じ入る手触りすらあった。また抽象的な心象風景のような絵が続く画面では、その世界に入り込んでしまったかのような感覚も覚えた。ここまでの没入感を得られたのは、正直驚きだ。
一方で音響に関しては、さすがにイヤホンやヘッドホンを使った時の満足感には劣る。映像作品のBGMや効果音、セリフを聴く分には違和感がない程度には仕上がっているが、「音楽鑑賞は無理」とまでは言わないものの「向いてはいない」という印象。具体的には、低音の出力が弱く、ベースやキックが聴こえないのだ。手元のMac Book Air(M2,2022)のスピーカーで聴いているのと同じような印象だったので、こういったコンテンツ鑑賞の際はイヤホンなりヘッドホンなりを用意しておくほうがベターだろう。
鑑賞時はベッドに寝転がりながらだったためか、装着感による疲労やストレスはそれほど感じなかった。それもそのはず、重量はわずか82gだ。途中1〜2回の休憩を挟みつつ、180分の間コンテンツに集中できた。ディスプレイは固定と追従を選べるので、好きな体の向きで楽しむことができた。
ゲームプレイも全く問題無し 遅延を感じさせず、綺麗な画面を楽しめる
ゲームプレイも全く問題ない。再び『iPad mini7』に接続し『原神』をプレイ。画質は「高」、フレームレートは60fpsでプレイしたが、入力や描画の遅延はまったく感じなかった。デバイスとしてゲーム向きかと言われれば特化したメリットはないが、美麗な画面を楽しむ作品には向いているだろう。何度も繰り返すようだが、集中力が上がるので没入感を上げてプレイできる。
なお有線接続限定のため、iPadなどポートが1つしかないデバイスで使うときはご注意を。『XREAL One』への給電も同時に行うためバッテリーの減りは早い。