七海うらら×いかさん対談 時代を駆け抜ける歌い手同士が語り合う“戦略的な活動論”

七海うらら×いかさん対談

——うららさんは昨年3月末まではOLとして働きながら歌い手活動をしていたとか。学生時代に趣味として歌ってみたを投稿していたころと比べ、OLとして働きながら活動をおこなうとなると、意識的な変化も大きかったのではないでしょうか。

七海うらら:そうですね。学生時代からニコニコ動画をすごく見ている側でもあったし、同時に投稿者でもあって。当時もいまと同じハンドルネームを使って、趣味で歌ってみた動画を投稿していたんです。

 OLとして普通の会社に就職することになってから、「どこかのタイミングで好きなことを仕事にしたいな」と思っていた時に、突然癌になってしまい、闘病を経験しました。命の危機を感じたことをきっかけに「やっぱり自分が1番やりたいことは歌だったり、イラストだったりのエンタテインメントなんだ」と気付いたんです。

 そこからは好きなことをして生きようと決意して、OLを続ける中で、声優養成所を受けてみたり、2020年には歌い手としての活動を本格的に始めたりしました。社会人経験を経て、ビジネス的な思考も自分の中に育まれたおかげで、昨年6月に始めたVsinger活動のセルフプロデュースがしやすくなったと思っています。

七海うらら

ーーいかさんは、歌い手のほか、声優/俳優として、うららさんは、イラスト、動画、デザインなど、マルチクリエイターとしての顔があって。お二人には、歌い手というカテゴリーに縛られないスタンスが共通していますよね。

いかさん:いろんなところに手を出していくと「じゃあ、この人は何をやりたい人なんだろう」と言われることもあります。たしかに、自分の軸があるのは大事なことです。でも広く見ていくことで、可能性を拾っていくというか……最終的に自分が固めたいタイミングで自分のスタイルを確立させればいいんじゃないかな、と。「歌を歌う人です」と自分が声を大にして宣言し過ぎていれば演技の仕事も来ていなかっただろうし、まだやれることがあるので、今はまだ旅をしている段階ですね。もちろん悩んだこともたくさんありましたけど、間違いではなかったのかなと思います。

七海うらら:めちゃくちゃわかります。私はもともと絵も歌も好きで、ニコニコ動画に歌ってみた動画を投稿していた学生時代から「歌う絵師」のタグがついていた、絵師でもあり歌い手でもある秋赤音さんにずっと憧れていたので、クオリティは低いながらにも、自分でボーカロイド曲のMVの絵を描いて歌詞も入れて、歌ってみた動画を投稿していたんです。そんな中、「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」をソロで投稿したタイミングで、「お前、中途半端」みたいなコメントを書かれたことがあって……。すごくショックを受けて動画を消しちゃったんですよ。

いかさん:できるなら自分でやってみろよと思うけどな(笑)。

七海うらら:当時の私にはMIXの技術もなくて、ただ声と楽曲を重ねただけ、みたいな音源を出していたこともあって、力不足だったのは確かでした。けれど、結局、中途半端と言われている間も、最終的にできるようになるまでの通過点でしかないなって考えられるようになりました。

 他人にMIXを依頼しようとするとどうしてもかかってくる依頼料を削るためにも、歌い手を始めた頃から「自分でできることを増やそう」と考えて、MIXの勉強をしたり、イラスト、動画を作ったりしてきて。今は結果的にいろんなことができる人として見てもらえるようになったので良かったかなとは思っています。

いかさん:「中途半端」とか「何がしたいのかわからない」とか言ってくる人たちは、きっと何かを始められなかった人たちなんだろうなと思っちゃうよ。

七海うらら:やってみてなにかを得られれば万々歳だし、もし、その時点でうまくいかなくても勉強にはなるので、結果的に良かったりする。なので、やっぱり動くのが1番だと思っていて、「歌い手になりたいです」と言われることがよくありますけど、「すぐなれる、なんならこの瞬間になれるで!」と言ってあげたいです(笑)。

——その後、うららさんは、『歌コレ2022秋』のグループランキングで「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」の歌ってみた動画を投稿されて、3位に入賞するという偉業を成し遂げましたね。

七海うらら:歌い手からすると夢のような話でもあるデジタルサイネージ(池袋のハレスタビジョン)で自分の歌が放映される特典がとにかく魅力的だったので、このタイミングで自分が中途半端と言われた「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」をグループ枠で歌うことにしました。歌うこと以外に、自分で動画の編集もして投稿したので、動画自体にめちゃくちゃ思い入れはあるし、ある種、戦略的だったかもしれません。

いかさん:アツい展開だ……! 戦略というより、ストーリーだね。

七海うらら:上位入賞してから、ニコニコ公式生放送『歌コレステーション』のランキングを通して、ニコニコ代表の栗田さん、__(アンダーバー)さん、NORISTRYさんたちに自分の名前をたくさん呼んでもらえる機会があったんですよ。上位に入ると、それ以降もこんなに名前を呼んでもらえるんだ、と思って。新たな発見でしたね。

いかさん:第1回目の『歌コレ』で、ニコニコ公式生放送にゲストとして出演させてもらった時に初めて存在を知る人もいたりして、やっぱり強烈な音源を作ってきた人は一発で覚えますね。自分自身でランキングに参加したことはまだないですけど、歌コレはめちゃくちゃいいイベントだなと思います。見ていて嬉しくなるというか。昔のニコニコ動画には投稿者としても視聴者としてもランキングを見る習慣があったんですよ。でも、その習慣が長らくすっぽ抜けていた時期が続いていて。そんな中で、生まれた『ボカコレ』に『歌コレ』。画期的すぎます。

いかさん

——うららさんは歌コレに投稿する動画の選曲基準として意識していることはありますか?

七海うらら:私の場合は、名だたるボカロPさんたちの、10年程前に投稿されていた懐かしい名曲をあえて歌ったりしています。自分でも「エモいな」と思いながら(笑)。

いかさん:歌コレの開催期間は、昔ニコニコ動画でボーカロイド曲を聴いていた人たちが、「ニコニコのお祭りがやっている!」と戻ってくるタイミングでもあるからね。

七海うらら:あと、いまはボカコレの後に歌コレという流れができているので、ボカコレのランキングで投稿された新作を歌コレで歌う人もいますよね。そういうのも面白いポイントですし、私のように、今までずっと聴かれてきた名曲のタグから選んで動画を投稿する方も多いのかなと個人的には感じています。

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