小森めと移籍の動きに見る「VTuber業界の成熟」と、一週間でびっくりするほど広まったmocopiの輪

小森めと移籍に見る「VTuber業界の成熟」

 「VTuberの事務所間移籍」は、ありそうなようで実は意外と発生していない。理由は諸説あるが、本人だけでなく、アバターの権利なども紐づきがちな存在だから、と考えられている。2019年に雨ヶ崎笑虹が「AVATAR2.0」から「Palette Project」に移籍した事例があるくらいである(現在は独立)。暗黙の了解として「難しいもの」と思われていただろう。

 そんな業界の空気に大きな一投が投じられるかもしれない。1月26日に「774inc.」所属の小森めとが、「ぶいすぽっ!」へ移籍することを明かしたのである。2月1日より、名義やアバター、YouTubeチャンネルなどはそのままに移籍が予定されている。

【雑談】色々楽しかったねの会とお知らせもあり【小森めと / 774inc. 】

 小森めとは「774inc.」内でも元々の所属グループだった「ブイアパ」が先日解散し、「774inc.」直属のVTuberになったばかり。そしてFPS系ゲームなどの腕も立つゲーマーであり、様々な大会への出場実績も持つ一人だ。ゲーム系ストリーマーとしても認知度の高い「ぶいすぽっ!」への移籍は、自身の活動の志向ともマッチする、よい”キャリアパス”だろう。

 「774inc.」は小森めと以外にも、グループから離脱してソロタレント化するケースが直近いくつか発生している。「タレントのやりたいことを第一に考える」という方針のもと、所属などを柔軟に組み替える動きは、今後業界全体にも波及してほしいところだ。

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 また、移籍先となる「ぶいすぽっ!」では、新たに「ぶいすぽ研究生制度」がスタートする。もともと「ぶいすぽっ!」には、オーディション合格後にスキルアップに取り組む「努力枠」というものが存在したが、それを拡張し、さらに多くの人に「ぶいすぽっ!」からのデビュー機会を設けようという制度とのことだ。

 研究生制度は今後、常設オーディションに追加される形で、常時その門を開く。研究生は、応募者の中から採用され、研究生であることを伏せた一般配信者として活動をスタート。PCなども貸与された上で、ゲームと配信で実践を重ね、運営からのフィードバックを行い、研究生はデビューを目指す。なお、研究生はすでに存在するとのことだ。

 限られた才能を刈り取るのではなく、グループにマッチしたタレントを育てる動きは、「にじさんじ」の「バーチャル・タレント・アカデミー」が代表的だ。VTuberには特殊な要求スキルも多い。最初から必要な力を持つ人材は少数で、自然と奪い合いになっていた。現実のタレント養成所のような「育てる」経路を作ることで、VTuberになれる存在を少しでも増やすことは、業界全体を延命させるカギになるだろう。

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