発展するVTuber音楽、近づきつつあるVRChatとVTuberの距離……VTuber有識者たちによる座談会企画(後編)

VRChatとVTuberの接近は、バーチャル×エンタメにさらなる化学反応をもたらすか。

ーー最後にたまごまごさんの挙げていただいたテーマである「VRChatとVTuber」についても伺いたいです。そもそもたまごまごさんがVRChatを見るようになったきっかけを教えてもらいたいのですが。

たまごまご:最初はワールドを巡ろうと思ってただけなんです。でも見ているうちに「ここまで1人でコツコツとワールドを作ってアップしている人がいるのか」「こんなに凝ったパフォーマンスをVRでしている人がいっぱいいるのか」と驚いてしまって。そこからVRクラブ文化が盛んということで見に行ったらもっと驚いて、「ここにVTuberの人が重ならないのはもったいないな」と思うようになったんです。

草野:そうしたなかで、2022年はVRChatとVTuberとの距離感に変化があったんでしょうか?

たまごまご:VRChatとVTuberの間の溝はずっとあったと思うのですが、そこが徐々に埋まっていったというか、少し近づいてきたように感じます。VRChatにいらっしゃる方はコツコツとモノづくりをする方が多い。「YouTube登録者数何千人何万人!」「毎日配信毎日投稿!」というスピード感とは別の感じがあって……たとえるなら『コミケ(コミックマーケット)』と『コミティア』くらいの、創作へのペース感覚や温度感の違いがある。一方、VRChatのなかで人気な方々がドンドン認められてきている傾向もあって、特にそれを強く感じたのは2021年12月11日から12日にかけて開催されたメタバース音楽フェス『SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland』だったんですよ。

ゆがみん:盛り上がっていましたよね。2023年の実施も先日発表されました。

たまごまご:このときにパーティクルライブのキヌさん、バーチャルミュージシャンのAMOKAさんといった面々がVRChat界隈の人以外にも見つかって「この人ヤバい!」と言われるようになったんです。今年に入ってからは横の繋がりもすごくできてきた。VRChat内でユーザーが主導していた『VRC Japan Event Festival』とか、VRchat内にあるライブハウスで24時間フェスを開催した『AWAKE24 2nd』があったりと、表現活動を全体で盛り上げる熱気が高まっているんですよね。それらはVTuberファンにはまだまだ伝わっていない部分はあるけども、感度の高いファンに刺さっている節がある。

森山:そういうファンの方、確かにみますよね。

たまごまご:VTuber側からだと、元にじさんじKRの方々がアバターを作っていたり、にじさんじENの「OBSYDIA」の記念ワールドが披露されたり、ホロライブENのメンバーがミニキャラのワールドを作っていたりしましたね。Re:Actの水瓶ミアさんもワールド制作を手掛けていて、Re:AcTの公式ワールド「Re:AcT VTuberWorld」を公開したことも記憶に新しいです。ただそういった動きがありつつ、VRChatは技術的な問題で80人くらいしか同じワールドにインできないらしくて、大規模な取り組みは難しいのですが……。VRChatにはいろんなワールドがあるので、そこで演奏したり、Vlogを撮影してみたり、できることが多いので使ってみたら面白さを味わってもらえると思います。

森山:2021年からリアルライブにはVRChatで活動しているアーティストが出てくれるようになっていて、AMOKAさんを筆頭に、てれかすさん、JOHNNY HENRYさん、memexさんなどがクラブイベントに出演するようになったことも大きなトピックですね。エンタスにはVRエンタスというVRChatのワールドがあって、リアルイベントと並行してVR空間でも見れるし、リアルエンタスに出た出演者がVRエンタスに現れたりするんです。

ゆがみん:以前からそういった試みがありましたよね。

森山:VRChatの音楽イベントが今年になって増えたというのは、たまごまごさんと同じように手応えを感じているんです。「これこそバーチャルライブ! VTuber音楽じゃん!」と思うことは多かったですよ。

ゆがみん:少しまえに自分とVR系の話をしたとき「VR空間上でのライブにはあまり興味がないかも」みたいな話をしていなかった?

森山:配信ライブに関してはそう思ってたね。VRChat内でのライブは数がかなり少なかったというのもあるけども、いまはグっと増えたし、自分の興味関心の対象になってきています。

草野:いちばん最初の話から振り返ると、IRIAMや17LIVEで配信している方とVRChatで活動している方はものすごい距離があるように感じられますけど、「アニメルックなアバターを着てバーチャルな空間で活動している」という一点でかなりグッと近い存在になる。でも大きく隔たっているのは、やはり機材の問題ですよね。

たまごまご:まさにそうだなと思います。

森山:永遠のテーマですね。

草野:機材が揃わないというハードルがゆえにニッチ化していて、今後爆発的に人が増えるという未来は見えづらいのは正直なところかなと。ですが、人が集まることで注目も人気も当然高まるんですが、どうしてもエッジィなものが出にくくなるとは思うんです。いまお話しされたことは、人が集まらないニッチな空間に参加している者同士が、グッと表現力を高め合っているフェーズに入っているとも言えて、かなりエッジィなものが育っているのかなと思いました。

たまごまご:そうですね。いまVRChatではDJ文化が盛り上がっているんですけど、彼らはリアルの現場でも回していて、バーチャル空間が好きでこちらでも回している方が多い。できる表現の幅がとても広くて、楽曲をつないで楽しむだけじゃなくて、VRのクラブではステージ演出をド派手にすることもできる、かなりトガったことができますよね。そういったことも、入れる人数に制限があるぶん負荷のかかる演出ができるというのはありますよね。そもそも英語がデフォルトで分かりづらいということもあり、VRChatは日本人にとってハイエンドな楽しみではあると思います。

【検証】VRChatに行くと外国の人にめっちゃ話しかけられるって本当?

森山:たとえ技術が上がっても、参入するひとが増えていかないとコアな方にしか伝わらないままで終わってしまう。やっぱり僕らはそういうのをもったいないなと思ってしまいますよね(笑)。

たまごまご:現状VRChatでどれだけ素晴らしいパフォーマンスをしても、お金として一銭にもならないんですよね。最近ではVRChatとBOOTHが連携したので、そこが大きな転換になればと思います。なんにせよVRChatのワールドという空間自体は自由に使えるのだから、VRChatとVTuberのそれぞれの面々がクロスしていけば面白くなると思いますね。

草野:ホロライブがメタバースプロジェクトの『ホロアース』を着々と進めていて、このままいけば2023年以内に公開されるのでは? なんて予想もあります。もしかすれば一気に浸透していくかもしれませんね。

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