TikTokとニコニコ動画の繁栄に類似点? 二次創作文化やボカロP、アニソンとの親和性から考察

TikTokとニコニコ動画の繁栄の類似点

 「TikTokって、10代の若い子たちがダンスするアプリだよね?」「美男美女がやるやつでしょ?」アラサー以上の大人たちとTikTokの話をすると、いまだにこのようなイメージを持つ人ばかりで驚かされる。

 SNSのトレンドというのは、本当に移り変わりが激しい。いまではすでに”踊らないTikToker”が幅を利かせる時代になった。日本のトップTikTokerも、コメディアンのじゅんややグルメASMRのバヤシを筆頭に、“踊らない系”アラサー男性のアカウントが目立つ。

 さらに「美男美女」どころか、顔出しナシのアカウントも多い。顔出しをしないというのは、TikTok全体というよりは日本特有の文化だが、こうしたプラットフォームの特徴は、とあるプラットフォームにとてもよく似ている。

 そう、ニコニコ動画だ。

 TikTokアプリを初めてダウンロードした時に、「これはニコ動だ……!」と胸が熱くなったのを今でも覚えている。

 いまだにTikTokを「リア充向けアプリ」と見ている人も多いが、実はそうではない。TikTokはむしろ、オタクに優しい、ニコニコ動画的なプラットフォームなのだ。

「歌ってみた」「踊ってみた」に通ずる、二次創作カルチャー

 TikTokは、JASRACなどの音楽著作権団体と提携しているため、アーティストの楽曲を動画上である程度は自由に使用できる。

 「音楽を自由に使える」ということで、人気楽曲に合わせてダンスしたり、歌ったりする動画が必然的に増えていった。この流れは、ニコニコ動画の「歌ってみた」「踊ってみた」の文脈に近い。

 このように二次創作が主流となるSNSは、そう珍しくない。YouTubeもInstagramも、ある程度トレンドはあるにせよ、基本的には完全オリジナルコンテンツを投稿するのが基本となっている。しかし、オリジナルコンテンツの制作は、一般ユーザーにとってはハードルが高い。二次創作がベースであればその参入ハードルが低いため、TikTokは爆発的にユーザー数を伸ばすに至ったのだ。

 また、そうした二次創作ベースであることから、UGCの起こり方もTikTokとニコニコ動画はとてもよく似ている。人気TikTokerが振付を考えた楽曲は、これまでまったく知名度がなかったとしてもTikTok内で大バズを引き起こすことも可能だ。「巷で売れてるわけではないのに、なぜかTikTok内だけで有名な曲がある」という点も、ニコ動の音楽文化とかなり似ているのではないだろうか。

ボカロPや同人音楽家との親和性

 TikTokがニコ動を想起させる大きな理由として、やはりボカロPの存在があるだろう。日本のTikTokにおいては、ボカロPやYouTube出身アーティストなど、いわゆる同人出身アーティストの楽曲が人気を集めやすいのだ。

 YOASOBI(コンポーザーのAyaseは元々ボカロPとしても活動していた)、まふまふ(ニコニコ動画出身の歌い手)、P丸様。(楽曲以外にYouTubeへアニメ動画投稿などもしているマルチクリエイター)など、挙げればキリがない。

 また、YOASOBI「夜に駆ける」や、まふまふ「女の子になりたい」は、海外でも大きなUGCを巻き起こした。TikTokでバズる曲には、いくつかの法則がある。ダンスしやすいテンポ感であったり、振付に変換しやすいキャッチーな歌詞であったり。そうしたプラットフォームの特性に合わせた楽曲を作れるアーティストが、インターネットに精通した同人音楽家や、そうしたルーツを持つアーティストに多いのは、ある種必然ともいえるだろう。

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