tofubeatsが制作環境を見直して生まれた“新しい音楽のつくりかた” 「ゼロからもう一回やり直したいという気持ちがあった」

tofubeats、制作環境を一新した理由

深く胸に刻み続けるimoutoidの“格言”。「結局、ミックスっていうのは〜」

tofubeatsの制作環境。モニタースピーカーは『Solo6 BE』(FOCAL/上)と『SC203』(EVE AUDIO/下)。

――今回の音回りの部分で言うと、フィールドレコーディングなど素材の音を立体的に聴かせるというところにもアップデートがあったように感じます。サンプリングではなくフィールドレコーディングで作るとなると、どれだけイマーシブな音像にするかが新たな課題になったと思うのですが。

tofubeats:それも、ミックスの基本的なところを全部勉強したという話に繋がって。僕にAbletonを教えてくれたimoutoidが言っていて、深く胸に刻み続けている「結局、ミックスっていうのはEQとコンプを使えるか使えないかっていうだけの話」という言葉があるんですけど。この2つがあれば、極論ミックスはできると。実際、彼は10代にしてリバーブを一切使わないアルバム(『ADEPRESSIVE CANNOT GOTO THECEREMONY』)をリリースして我々の度肝を抜いたことがあるんですけど、それは改めて本当にそうだなと。使っているものは一緒で、どう思ってこれを使うかという……精神論みたいな話かもしれませんが。

 なんとなくEQを先に挿してその次にコンプを挿してるけど、「なんでこれはこうなってるんや」というのを突き詰めて考えていたわけではなかったので……tofubeatsって、いかにもそういうことをちゃんとやってそうと思われているかもしれませんが(笑)。

――プロとしてのキャリアを重ねてくると、どこかで自分を見つめ直す時期は来ると思うのですが、それがたまたまここだったという。

tofubeats:本当にそうですね。

――『REFLECTION』についても掘り下げていければと思うのですが、「Mirror」だけ低音の出し方が違うように感じたのですが、これはどういう作り方を?

tofubeats:たしかに、これはベースに珍しくAbletonのウェーブテーブルを使っています。このアルバムではここでしか出てきてませんね。あと、「EQ Eight」をただのスペアナとして使っていたりします。

「Mirror」の制作画面。(本人提供)

――なるほど。聴いていても“いわゆるtofubeatsっぽい音じゃない”と思っていましたが、ウェーブテーブルがそうだったと。「REFLECTION feat.中村佳穂」についてはどうでしょう? トラック数もかなり多めのように聴こえますし、制作も大変だったように思えるのですが。

tofubeats:トラック数は100くらいですね。ブレイクビーツだけで3トラックも使っていて。「Drum Rack」にブレイクビーツを何個もアサインして、ピアノロールをちょっと入れ替えるだけで同じところのビートだから入れ替えがすぐにできるという、AKAIの『S950』で色んな人がやっていたオールドスクールなテクニックを、あえていま使ってみました。この曲は外部のプラグインも多いですね。

ーー今回、外部のプラグインでよく使ったものはありますか?

tofubeats:「FabFilter Pro」ですね。ダイナミックEQ的なことをやろうと思うと、どうしても他社製のものになりがちで。ステレオイメージャーみたいなのがあまり好きではないので、「Auto Pan」もめちゃくちゃ使います。あと、『Live』ならではというわけではないのですが、キックの音にサイドチェインをかけたいとき、音が短いものに効かせてしまうとカーブが急で気持ち悪くなってしまうので、別トラックでシンセを作って、そのリリース部分にサイドチェインをかけて挿すようにしているんです。これは2008年くらいに教わったいにしえのテクニックですが……。

――とはいえ、今回見直したうえでも残った“鉄板テクニック”でもあるという。

tofubeats:そうですね。いまの『Live』なら4つ打ちだと「LFO」を使うことが多いと思うんですけど、4つ打ちじゃないものだとこういった懐かしテクニックを呼び出すこともあります。

――『REFLECTION』以前と以降で制作のスタイルが大きく変わったわけですが、現在はどのような段階といえますか?

tofubeats:色々と外仕事が多い時期でもあるので、しばらくは『REFLECTION』で得た知見を外の仕事に使っていって、自分の見つめ直したやり方がどの程度通用するのかを確かめる段階ですね。『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』に提供した「EMOTION」(歌唱:三船栞子/CV:小泉萌香)は『REFLECTION』の制作中に作った楽曲なんですが、そのときのモードがガッツリ反映されているように思えます。音数はかなり多いのですが、結構さっぱりしたミックスで仕上げていたり。これはchelmicoの「Meidaimae」にもいえるかもしれません。トラックの抜けた感じや鳴りの雰囲気は大幅に変わっていると思います。

――それを踏まえて、今後やってみたいことはありますか。

tofubeats:この作り方になってまだ日が浅いので、もう少し色んな方と仕事をして、ペースを掴んでいきたいですね。自分の曲はどうやってもこねくり回せるんですけど、ある程度制限の存在する仕事でどのくらいできるか、というのは追求の余地があると思うので。

■関連リンク
Ableton公式ウェブサイト
Ableton Liveについて
Ableton Live 11 Suite 90日間の無償体験版

■リリース情報
tofubeats『REFLECTION REMIXES』
各配信サイトにて11月3日(木)より配信開始

〈収録内容〉
1. REFLECTION (feat. 中村佳穂) [TOWA TEI REMIX]
2. PEAK TIME (KM "Back to 2006" Remix)
3. don’t like u (feat. Neibiss) [STUTS Remix]
4. VIBRATION (feat. Kotetsu Shoichiro) [OMSB Remix]
5. SMILE (荒井優作 Remix)
6. 恋とミサイル (feat. UG Noodle) [speedometer. Remix]
7. CITY2CITY (RYOKO2000 Remix)
8. Mirai(pptime)[Peterparker69 Remix]
9. SMILE (Chopped and Screwed)
10. SOMEBODY TORE MY P (tofubeats Remix)
11. Mirai (tofubeats Remix)
12. Mirror (1st demo 2019)

tofubeats『REFLECTION(LP180g重量盤)』
発売:11月3日(木・祝)
価格:¥4,180(tax in)

〈収録内容〉
[Side-A]
1. Mirai / short ver
2. PEAK TIME
3. SMILE
4. don’t like u feat. Neibiss
5. 恋とミサイル feat. UG Noodle
6. VIBRATION feat. Kotetsu Shoichiro

[Side-B]
7. REFLECTION feat. 中村佳穂
8. CITY2CITY
9. SOMEBODY TORE MY P

購入リンク:https://tofubeats.lnk.to/REFLECTION_LP

tofubeats『REFLECTION(LP180g重量盤)』(ワーナーミュージックストア限定「REFLECTION Tシャツ」付きセット)
セット価格:¥7,980(税込)
サイズ:S/M/L/XL/XXL
販売URL:https://store.wmg.jp/collections/tofubeats/products/2835
※Tシャツ付きセットはワーナーミュージックストア限定販売となります。
※Tシャツ単独での販売はございません。
※各サイズ数量上限に達し次第予約終了となります。

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