駆け抜けるようにパワフルで衝動的な一夜 にじさんじ『FANTASIA』振替公演2日目レポート

にじさんじ『FANTASIA』振替公演2日目レポ

 2022年10月1日に開催された『にじさんじフェス2022』初日。この日のナイトステージでは、『「FANTASIA」〈振替公演〉』の2日目が催された。

 本来は1月22日・23日に開催される予定であった同名ライブの振替公演イベントとしてセッティングされた本公演は、非常に高倍率なライブイベントとしてファンも一喜一憂。幸運なチケットをゲットしたファンがあつまり、特設ステージは満員となった。

 

 にじさんじにとって念願の初大型イベントの真ん中を飾るライブステージでもあり、熱心なファンの目と期待がこもっていた。

 この5年ほどの歴史のなかでも大小さまざまなイベントが開催されたが、このような音楽ステージの場に出演してきたメンバーはまだまだ数少ない。今回のライブでも、剣持刀也、叶、加賀美ハヤト、夢追翔、三枝明那と、昨年から今年にかけてにじさんじ内外の音楽ライブに出演したメンバーが軸となっている。

 そんなメンバーのなかにあって、初めて音楽ライブのステージを踏むことになったメンバーがいる。卯月コウとシェリン・バーガンディの2人だ。

 最新トレンドや倫理感に目くばせしつつ逆張り気味なセンスで尖っていく卯月、かたや公式番組のナレーションをはじめとして声も存在感も仰々しい振る舞いで目立つシェリン。

 初々しき2人の新しいDNAが入り込むことで、これまでライブ出演常連となっていた面々はとても刺激を受けたのではないだろうか。この日のライブは、ヤンチャで衝動的にすらみえるパワフルさ、はしゃぎまわっているかのような向こう見ずなパワーが滾っていたようにみえた。

セットリスト

1.虹色のPuddle/全員
2.テオ/三枝明那
3.ロデオ/三枝明那、シェリン・バーガンディ
4.テレキャスタービーボーイ/叶、卯月コウ、シェリン・バーガンディ
5.脱法ロック/卯月コウ
6.ロストワンの号哭/加賀美ハヤト、社築
7.ヒカリ証明論/社築
8.それじゃあバイバイ/加賀美ハヤト、夢追翔、社築
9.おそろいの地獄だね/夢追翔
10.らしさ/加賀美ハヤト、卯月コウ
11.ジャンキーナイトタウンオーケストラ/剣持刀也
12.女々しくて/剣持刀也、卯月コウ、シェリン・バーガンディ
13.爆笑/シェリン・バーガンディ
14.Jam Jam/叶
15.いのちの食べ方/夢追翔、社築
16.東京テディベア/剣持刀也、夢追翔
17.ねぇねぇねぇ。/叶、三枝明那 
18.ハミングバード/加賀美ハヤト
19.お気に召すまま/剣持刀也、叶、三枝明那
20.Snow halation/三枝明那、卯月コウ、シェリン・バーガンディ、社築
21.オリオンをなぞる/剣持刀也、叶、加賀美ハヤト、夢追翔

アンコール 
1.Hurrah!!/全員
2.Virtual to Live/全員

 セットリストを見ると分かっていただけるだろうが、1日前に催された『FANTASIA』初日の女性陣ほどではないにしろ、「テオ」「テレキャスタービーボーイ」「ロストワンの号哭」「東京テディベア」といったボカロ楽曲でも有数のロックソングにくわえ、「らしさ」「女々しくて」「オリオンをなぞる」といったロックバンドの楽曲を中心に据えたセットリストは、一見するとロックサウンドに寄せたコンセプトのように読み解ける。

 こうしてみたとき、昨年10月30日に『NIJIROCK NEXT BEAT』が開催されていたことを思い出すファンは多いと思う。ロックバンドが全曲共通であったこの時のライブにくらべ、今回のライブではボーカロイド楽曲のロックソングが比率としては多めで、世代的に鑑みればファンにとってもコレだ!」とピンとくるロックな曲は多いはずだ。

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 そう考えれば男性陣による『FANTASIA』2日目は、1年前の同イベントとどこか地続きで、継承したパッションとも感じられそうだ。

 だが、ここで気に留めておくべきなのは、生バンドが演奏を担当している点が一緒であるとか、加賀美ハヤト・三枝明那・夢追翔と8人中3人が出演者が被っているとか、なにも共通項の話だけには留まらない。

 2021年には開催できなかった大型イベントが念願叶って2022年に開催までこぎつけたという達成と嬉しさを、振替公演となった『FANTASIA』を通して悔しさを晴らそうというオマケもつけて、観客に全てをぶつけたい。そんな激情に駆られる衝動性が、この日のコアにはあった。

 そこに卯月とシェリンの初々しさや向こう見ずなパワーが加わると、良い意味でコントロールなんてうまく効くわけがない。

 事実、序盤のMCでは剣持刀也が仕切っていたのだが、彼の手綱でもコントロールできないほどに、茶目っ気ある言動やとめどなく溢れる言葉の数々が聞こえてきた。

 加賀美ハヤト、叶、社築といった落ち着いた面々が場を御するような素振りもなく、そのまま「ウワァー!!」っと盛り上がっていったテンションとノリは、普段の配信では決してお目にかかれない姿だ。

 そうして勢いよく始まったライブは、その初期衝動をほぼ失うことなく駆け抜けていくことになった。生バンドのサウンドと音圧、ギターサウンドのザラついた音、ドラムスのパワフルなリズムは、野性味や野蛮さといった色合いとなって楽曲にを色付けし、疾走していく彼ら8人の姿をサポートしていたのは印象的であった。

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