舞元啓介の持つ「度量の広さ・深さ」 プロレス流のエンタメ術に迫る
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一つであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。
メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加している。
デビューから順を追うように紹介してきた本連載。元1期生、元2期生、元ゲーマーズ組の次は2期にわたる元SEEDs組。SEEDs2期生は複数回に渡ってデビューが分かれているなかで、ここ数週は第1弾として発表された面々を中心に取り上げてきた。
春崎エアル、神田笑一、飛鳥ひな、以前に記させてもらった鷹宮リオン、先に活動を終了した鳴門こがねを含めてあと2人。今回は舞元啓介について記していきたい。
デビュー時から現在に至るまで、彼は話題に事欠かない。その理由を考えてみたとき、いの一番に挙がるのは、彼自身の度量の広さ・深さではないかと感じた。
サッカー、野球、ラグビー、バスケ、プロレスなど、スポーツ競技への造詣深さはにじさんじでも随一。2018年8月13日に初配信をした際にも「スポーツ観戦実況がしたい」と熱く語り、直後に欧州サッカー・UEFAスーパー杯の予習配信をしてみるなどのスポーツ関連した実況や配信をしていたが、その後からゲーム実況やコラボ配信を多くしていった。
2019年9月から開催された『ラグビーワールドカップ2019』では、開催国となった日本を応援するために、久々となるスポーツ観戦実況をスタート。2019年10月13日に開催されたスコットランド戦では、配信中であることを忘れて一人のファンとなって大声を張り上げて応援し続け、リスナーとともに一喜一憂。日本の勝利に泣き、勝利の味を噛みしめる配信となった。
そんな彼が思わず漏らした一言が、「こういう配信がしたかった」である。
初期のころからトライしてもうまくいかなかったスポーツ観戦・実況が、この日ようやく形になったと実感したからこその一言でもあろう。
この言葉は、翌年以降は椎名唯華が「にじさんじ甲子園」の場で感涙しながら発したり、ジョー・力一らを始めとして仲良い面々でも口をついて出てくることがあるなど、にじさんじ特有のミームとして広まってもいる。
こういった自分にまつわるアレソレをネタ扱いをされることは、舞元以外の面々でも頻繁にあることではある。だが彼が他のメンバーと異なるのは、その頻度が圧倒的に多いということにある。
当時新人だったアルス・アルマルへ「2人きりだね///」とナンパのような一声をかけてしまう、ユメノグラフィアを体験配信中に卑猥な声を上げてしまう、ローションカーリングを思いついてやり遂げてしまう、自身が初期に使用していた背景絵が椎名唯華とモロに被ってしまっているなど、「舞元炎上」と言われてしまうような前例はいくつも挙がるだろう。
チャラい挨拶をした覚えもなかったが、想像の2倍くらいは燃えていた
童田明治の放送にて条件反射的に燃やされ、さらにチャラい応対をしてしまい炎上する舞元啓介 https://t.co/9QLAvlSzta #sm34683422 #ニコニコ動画
— 舞元啓介👨🌾にじさんじ (@maimoto_k) February 25, 2019
それ以上に重要なのは、彼がこぞってお笑い・ギャグの方向に走っていきがちな性分であることと、彼の人当たりの良さが配信を通してリスナーにも伝わっているということにある。
にじさんじ所属の面々がちょっとしたヤラカシをしたり、女性関係などで危険な発言があったとき、どこからともなく「舞元のせい」「舞元炎上」とリスナーや同僚らからネタにされることがあるが、それらはむしろ場の空気をリセットする一種の浄化・鎮火作業のようにすら見えてしまうほど。
いまでもイジられやすいポジションにいるのも、舞元啓介の優しい一面とお笑い寄りなムード作りが大きな影響を及ぼしている、というと大きく買いかぶり過ぎているだろうか。