舞元啓介の持つ「度量の広さ・深さ」 プロレス流のエンタメ術に迫る
舞元自身の度量の広さ・深さというと、意外なまでにゲーマーであることも挙げられる。「スポーツ好き」というと「インドア趣味に興味がなさそう」という先入観が宿りそうではあるが、舞元啓介はそのような認識をハミ出していく存在なのだ。元々MMO系のネットゲームをやりこんでいたこともあり、実はやりこみ要素のあるゲームに関してかなり熱中しやすいゲーマーな一面がある。
プレイしてきたゲームも非常に幅広く、スポーツ好きということで『実況パワフルプロ野球』『FIFA』といった名作スポーツゲームはもちろん、『マリオカート8 デラックス』『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『マジック:ザ・ギャザリング アリーナ』『ELDEN RING』『太閤立志伝Ⅴ』と、ゲームジャンルという点で見えればその幅広さはかなり大きい。
カードゲーム『シャドウバース』ではVTuberを中心に集めたカジュアル大会で優勝するほどの腕前で、その他のカードゲームにも精通していることも同僚らの話から伝わってくる。
ゲームと一言いっても、ビデオゲームだけに留まらない。ポーカー、競馬、パチンコ、スロットといったギャンブル性のあるゲームも愛好しており、麻雀に関しては同僚の群道美玲とプロ雀士・多井隆晴とともに『雀魂』の公式番組「にじたま」でメインパーソナリティーを務めている。
アクション、RPG、シミュレーション、MOBA、ボードゲーム、スポーツなどなど、ゲーム好き・ゲーム上手が集まるにじさんじのなかでも、彼のゲームに対する造形深さ・幅広い知識はあまり知られていない部分かもしれない。
そんな彼だが、配信中はゲームスキルで魅せるタイプではなく、むしろ視聴者にエンタメを楽しんでもらおうとプレイすることに重きを置いているのが分かる。時たまにこの点を気にしてリスナーに語りかけることも見られるほどだ。
オープンワールド系ゲームでもある『ARK』シリーズがにじさんじ内で流行した際には、初めてのプレイから徐々に慣れていくと、「蛮族」と称して偶然出会った同僚らに襲撃して回り、プロレスのヒール系レスラーよろしく視聴者を盛り上げるようなプレイング・立ち回りを見せていた。
ゲーム性への慣れの速さ×エンタメ精神と魅せ方、この掛け合わせとバランスに重きを置き、常にリスナーの興味を持たせてくれるのが彼の配信スタイルであろう。
こういった彼のエンタメ精神を忘れぬ心意気には、とあるスポーツが関係していると感じている。自身の3Dお披露目配信にも友人の「マスクドいちから」が登場していることからも分かるように、舞元啓介にとって「プロレス」は切っても切れぬ関係にある。
プロレスは一種のエンターテインメントである。派手な技の数々とビジュアルや衣装に凝り、挑発的な煽りや言動、試合中の振る舞いなどを通して常に観客を意識し、対戦相手に技を仕掛けていく。
ある程度の筋書きが試合開始前から決まっているパターンもあり、「勝負ごとに筋書があるのは八百長である」と非難する声があがり、派手な言動にも「演技性」が絡んでいるスポーツではある。
はじめまして、舞元啓介(まいもと けいすけ)と申します。
この度お二方の後輩としてバーチャルライバーデビュー致しました。
年齢は32歳、農家をしております。
好きなプロレス技は619とレインメーカーです。どうぞよろしくお願い致します。— 舞元啓介👨🌾にじさんじ (@maimoto_k) August 9, 2018
舞元啓介が食らいたいプロレス技ランキング
1 デスティーノ
2 人でなしドライバー
3 やり投げ
4 デスライダー
5 ドロップキック(オカダ・カズチカ)— 舞元啓介👨🌾にじさんじ (@maimoto_k) November 28, 2019
舞元はプロレスの魅力についてこのように語っている。
「エゲつない技を受ける様と、エゲつない技をやる様。そこにしっかり技術を感じる。そしてそれがカッコイイんですよ。自分の決め技があるんですけど、相手の決め技をいかにかい潜りながら自分の決め技にもっていくか、その攻防が面白いんですよね」
「ケニー・オメガ対飯伏幸太の試合とか見てみろ? この技を受けたら死ぬよ? って技をいくつもやってるのよ。なぜ耐えられるのか。めちゃくちゃ受けが上手いから、鍛えているから、覚悟をしているから。ぜひ見てほしいんですよ」
「危ないかもしれないどころか、間違いなく危ないんですよ。素人はやるな! マネするな! って本当にいわれているほどには危険な技をたくさんやっている。でも、それを受けて返してを繰り返す。そこがカッコいいんだわ」
プロレスを語っているはずの舞元啓介の言葉から、彼自身の本懐・真骨頂を感じ取ることのできるにじさんじリスナーやファンは多いだろう。
リスナーの好奇の眼が入り込む生配信のトークは、単なる友達との会話感覚とは一線を画す。リスナーという第三者はいわば「観客」となり、一心不乱に応援する者もいれば、心無い野次を飛ばし続ける者も当然現れる。
彼らを満足させるために、舞台に上がった者たちは真剣にエンターテインメントに取り組む。そのやり方は各々自由であるが、忘れてはいけないことがある。攻め手がいれば受け手がいるということ、ボケをしたらツッコミを入れるということ、虚勢を張ったならば筋を通して証明するということ、相手のすべてを受け止めきったならば何かしらのリアクションをし返すということ。
これは鉄板ともいえるエンターテインメントのルール性ではあるが、これだけを尊守していても面白いエンターテインメントにはならない。素晴らしい攻め手・ボケがいても、つまらない受け手・ツッコミがいれば面白さが目減りしてしまうこともある。
しかもこういったルール性が定番・法則性としてうけとられ、陳腐なものとして嫌われる可能性も十分にある。そういったエンタメの難しさのなかで、舞元啓介は優秀な攻め手・受け手になろうと努めてきた。
舞元啓介から垣間見える度量の広さ・深さは、エンタメのために動き続けてきた証ともいえよう。
月ノ美兎、ジョー・力一、そして黛灰と、現所属・元所属を問わずエンタメをここまで熟知して行動に起こせる面々はにじさんじのなかでも中々に少ない。そんななかでも「舞元啓介がいれば安心する」とまで思わせてくれるのは、彼がプロレス流のエンターテインメント術をまさに体現しているからであろう。ローションカーリング企画は、まさにその体現のようですらある。