『TGSVR』のあとも続くVRメタバースイベントと、VTuberの担い手たちが打つ“次なる一手”

『TGSVR』のあとも続くVRメタバースイベント

 『バーチャルマーケット2022 Summer』と『東京ゲームショウ VR 2022(TGSVR2022)』が終わったが、VRメタバースではまだまだイベントが続く。9月23日から9月25日には、VRイベント『メタフェス』が開催される。株式会社ポリゴンテーラーコンサルティング主催の、『VRChat』にて開催される展示会イベントだ。

 昼と夜のショッピングモールのような会場には、クリエイターが作ったアバター、衣装、小物などが展示され、その場から購入ページをブラウザで開くことも可能な、展示・販促イベントとなる見込みだ。さらに会場ではアーティストによる音楽ライブも開催される。ショッピングもライブも楽しめる、『バーチャルマーケット』に続く新たなイベントとなることを期待したい。

 有志開催の『VRCJapanEventFestival』も見逃せない。『VRChat』にて日夜開催されているイベントの特別営業や、『VRChat』で活躍するDJ、ミュージシャン、アイドルのパフォーマンスが展開される大型イベントだ。

 9月26日から10月2日の一週間に渡り開催される本イベントは、さながら『VRChat』という街を舞台にした、日本語圏の『VRChat』コミュニティのサーキットフェスだ。そう思えるほど、数多くの団体や個人が参加している。普段は各自分散して活動しているコミュニティを一挙に知ることができる、貴重な機会となるだろう。

 『VRChat』コミュニティも制作に参加したVR演劇『Typeman』は、ヴェネツィア映画祭での受賞こそ逃したものの、イタリアの独立系映画評論家が独自に選出する『Premio bisato d'oro 2022(金鰻賞)』の最優秀短編賞に輝いた。VRの没入感と、アクターのリアルタイムのパフォーマンスが融合した次世代の演劇が、映画評論家たちにも認められた形だ。世界で活躍するアーティストと、VRメタバースで生きるクリエイターが手を組めば、世界にも十分届き得る……ことが示されたのは、大きな一歩だ。

 VRデバイスに新たな流れも見られた。Diver-X株式会社が発表したグローブ型コントローラー『Contact Glove』だ。これまで基本的に法人向けデバイスとして普及した「グローブ型」のデバイスだが、『Contact Glove』はコンシューマー向けデバイスであるのが大きな特徴だ。

 指のトラッキングはもちろん、独自モジュールによる触覚フィードバック、標準的なVR向けコントローラーのようなボタン入力とスライド入力内蔵など、触覚を与えることによる没入感と普段使いの両立を目指した意欲的なデバイスだ。筆者も『東京ゲームショウ』会場で試作品をさわらせてもらったが、完成すれば可能性が広がりそうだと”その手”で感じた次第だ。9月下旬から『Kickstarter』にて、65,000円から発売予定だ。

 XR業界やメタバース業界と比較すると、ここ数ヶ月のVTuber業界は比較的落ち着いている。多くは自所属タレントを軸に据えた「安定期」に入っていると言えるだろう。そんな中、興味深い「発展」の予兆が先週は見られた。

 ひとつは、キズナアイを世に送り出したActiv8株式会社とアソビシステム株式会社による、新たなタレント事務所『ANNIN』の立ち上げだ。Activ8はキズナアイを送り出し、アソビシステムはきゃりーぱみゅぱみゅらをプロデュースした会社だ。この2社が手を組み、メタバース時代を見据えた「アバターを活用したグローバルで活躍する次世代キャラクタータレント」の輩出を目指すのが『ANNIN』とのことだ。どのようなタレントを生み出すかはまだ予測できないが、「VTuberの先」を生み出すか期待がかかる。

 もうひとつは、バーチャルシンガー・花譜の武道館ライブを成功させた『KAMITSUBAKI STUDIO』が発表した、Web3コミュニティ『KAMITSUBAKI DAO』だ。2021年に1ヶ月限定で開催された参加型コンテンツの舞台となった、仮想都市「神椿市」をメタバース化するべく、クラウドファンディング2.0サービス『FiNANCiE』にて支援を募り、共創を軸とするコミュニティの創設を目指すとのことだ。

 従来から一歩進んだ「コンテンツ創造への参加」を、業界内でも一線を画する存在としてあり続けた『KAMITSUBAKI STUDIO』が作り出せるかどうか、次なるアクションに注目が集まる。「メタバース」と同様、いまだそのかたちがあいまいな「Web3」に、バーチャルな存在の担い手が実例を産み落とせるか。各所の挑戦は続くことだろう。

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