藤原さくら×日高七海が語る「雑談Podcast」の魅力 浅い関係の二人が『ファミジワ』を始めたわけ
シンガーソングライター、女優として活躍する藤原さくらと、女優の日高七海が等身大の会話でありのままを語るポッドキャスト番組『今ファミレスにいるんだけど隣の席の女子が話してる内容がジワジワきてるんだが共有してもいいですか?』(以下、『ファミジワ』)。藤原と日高の飾らないトークが魅力の『ファミジワ』では普段見ることのできない2人の素顔を垣間見ることができる。また6月30日にはSpotifyが新進気鋭のアーティストを支援するグローバルプログラム「RADARポッドキャスター」の日本第一弾クリエイターにも選出され、今勢いのある番組でもある。
今回はそんな藤原さくらと日高七海本人に、Podcastの魅力について聞くインタビューを実施。アーティスト、俳優として活躍する2人だからこそ話せること、雑談系Podcastの魅力、いまのPodcastシーンについて思うことなど、『ファミジワ』の番組中のようなリラックスした温度感で語ってもらった。(Nana Numoto)
「Podcastを始めるとき、一番適任な女が現れたと思い、ナンパしました(笑)」(藤原さくら)
――Podcastを始めようと思ったきっかけを聞かせてください。
藤原さくら(以下、藤原):私から七海ちゃんを誘いました! 音楽に纏わるラジオ番組も持っているのですが、なにかもっと日常的なことや自分の考えをざっくばらんに話す場所が欲しいとずっと考えていて。私はPodcastが好きで、日常的に聴いていたので「これがいいかな」と思いました。
誰かと一緒にやりたいけれど「誰がいいんだろう」とずっと悩んでいたときに、七海ちゃんと映画で共演させていただいて。一番適任な女が現れたと思い、ナンパしました(笑)。
――どんなところが適任だと思いましたか。
藤原:映画の撮影期間中は一緒に過ごしていたのですが、不思議と地元の友達のような「地元一緒感」があって。歳は違いますが、多分学校やクラスが一緒だったら友達になっていただろうな。そういう空気感を感じ取ってお願いしました。
――日高さんは声を掛けられたときはいかがでした?
日高七海(以下、日高):本当に軽いLINEが来たんですよ。出会って以来、そこまで連絡を取っていたわけではないのですが、いきなり「Podcastをやるんだけど一緒に喋らない?」という感じで(笑)。「やる~」と答えて、本当に軽いノリで始まったので、私からしたら「本当にやるのかな!?」くらいの感じでした。
――音声コンテンツには様々な形式があると思いますが、元々好きで聞いていた藤原さんにとって、Podcastならではの魅力はどこにあると考えていますか。
藤原:耳だけ預けてしまえば同時にほかのこともできるというところです。どうしても、動画だと画面をずっと見ていないとわからないことが多いので、YouTubeの中でもラジオっぽいものが好きなんですよね。
――ちなみにPodcastでおすすめの番組はありますか?
藤原:最初は、父から雑学系や都市伝説系のニッチな番組を教えてもらって聞いていました。言語学のことを話す『ゆる言語学ラジオ』や「OVER THE SUN」』も好きで聞いています。雑談系Podcastの中では、女性が2人で話しているものが好きだったので、自分もやるとしたら、女の子と一緒にやりたいなーと思っていました。
――日高さんは誘われる以前はPodcastに馴染みはありましたか?
日高:芸人さんが好きで霜降り明星さんの『オールナイトニッポン0(ZERO)』をストリーミングサービスで聴いていましたね。それに『OVER THE SUN』も聴いていました。私もバックグラウンド再生できるところがPodcastの魅力だと思っていて。私たちの話って本当にオチがなくて、お仕事では使えないような日常のくだらない話なので、それを“聴きながせる”媒体というのはPodcastならではかと思います。みんなに「何を話していたのか、結局わからなかった」というふうにいわれるんだよね。
藤原:いわれる!
日高:もう全部忘れちゃうらしくて。クスッと笑えるけど、聴いた後に結局なんの話をしていたかが残らないみたいで。だから作業をしながら何回も繰り返して聴く人が多いらしいんです。その辺りは結構雑談系Podcastに合っているのかな。
藤原:周りの友だちも作業用BGMとして聴いてくれていて、感想をもらうこともありますね。
――親近感が湧くトピックスが多いところも魅力だと感じました。
藤原:お互いに、女優やアーティストをやっていると、オフィシャルな場でちょっとかっこつけて話すことも多いんですよ。イキった感じで話したり(笑)、それに比べたら『ファミジワ』は、同級生が喋っているような親近感を持ってもらえるくらい、ざっくばらんに話していますね。
――『ファミジワ』は「雑談」と言われるジャンルに入ると思いますが、このテーマに決めたのは藤原さんですか?
藤原:七海ちゃんをLINEで誘ったあとに、一度会って話そうという流れになり、ご飯を食べに行って。そのときはまだ、彼女は自分をゲストだと勘違いしていたんです。「あなたのラジオに私がゲストで参加するってことね」といわれて(笑)。だから、一緒にやろうと伝えたうえで、ファミレスで2人組がペラペラ喋っているのを、隣の人が面白いこと話しているなと聴いているようなPodcastがしたいと説明しました。そしたらその場で七海ちゃんがタイトルをつけてくれたんです。
日高:さくらちゃんの話を聞いて、いま聞いたことを繋いでみようという感じで「今ファミレスにいるんだけど隣の席の女子が話してる内容がジワジワきてるんだが共有してもいいですか?」に決めました。長いタイトルがいいなと思って。長いほうが目立つんじゃないかと思ったんです(笑)。
「『ファミジワ』はさくらちゃん家に遊びに来たみたいな感じ」(日高七海)
――Podcastは女優やアーティスト活動と比較するとどんな存在ですか。
藤原:私にとっては恥部を見せるような場所という感じです。例えば昔付き合っていた人の話とか、共演者の方にプレゼントあげるのに悩むとか、そういう裏側のような部分はインタビューなどでもカットされてしまうことが多い。そういう自分の友達にしか見せないような部分を見せるところで、アーティスト活動とは乖離した場所になっていると思います。
――日高さんはいかがですか。
日高:私は作品中で意地悪な役をやることが多いので、本当に怖いと思われてしまうことも。今までは素の自分を見せられる場所がありませんでしたが、最近ではPodcastを聴いた方から「こんな人だったんだ」と言ってもらえることが増えたので、優しい私を見せることができていると思っています。そしてさくらちゃんと会う場所でもあります。さくらちゃん家に遊びに来たみたいな感じですね。
藤原:配信されることを忘れて、自分でも喋り過ぎたかもな・・・と思うところも多いです。もちろんカットされているところもありますが。
――差し支えなければ、カットされている話題をさわりだけでも教えてください。
日高:小学生の下ネタみたいな(笑)。
――そうでしたか(笑)。収録は台本やテーマなしの一発勝負なんですか?
藤原:リスナーの方から「こういう内容の話をして欲しい」というときもありますが、基本的には「今日何話そう」とダラダラしているところから始まって「そういえば最近バチェロレッテ、マジ面白かったね」みたいに友達と普段やりとりしている内容になっていく感じですかね。今日はこの話をしたいな、くらいは用意しています。日常の中で、これはネタにできそうだから今度Podcastで話そう、ということもありますね。
日高:私もメモしています。
――台本がないなかで話すことに難しさを感じることは?
藤原:ギリギリのところで誰も傷つけない笑いにすることですね。友だちと2人で話すときには盛り上がるギャグでも、それがトゲのあることのように受け取られてしまうこともあるので。カットになってすべてが無に帰すのを避けたいので、大丈夫なラインを見定めながら話しています。
――そのなかで、やりがいに感じていることは?
日高:私は結構エゴサーチをするのですが、面白いと言ってくれる方を見つけたときは嬉しいですね。元々私とさくらちゃんのファンの層は違いますが、最近では、これまで認知されなかったような人に私を知ってもらえるのがすごく嬉しくて。そこもやりがいになっています。
――なるほど。お互いの仕事上のファンのコミュニティが交差する部分があるんですね。
藤原:それもありますし、Podcastを聴いている方のなかには私たちの音楽を聴いたり映画を観てくれる方とは、またちょっと別の層の方がいたりするんです。元々Podcastが好きな層から面白いというお言葉をいただいたりすると嬉しいなと思います。
――たしかに、Podcastがすごく好きな層というのが存在しますよね。
藤原:テレビは全然観ないけど、Podcastはすごくよく聴いているという人もいたりするんですよ。
――『ゆる言語学ラジオ』とかRHYMESTERの宇多丸さんがやっている『アフター6ジャンクション』とかサンキュータツオさんの『熱量と文字数』とか、あの辺が好きな方々ですかね。
藤原:そうです、ちょっとニッチな層というか。その層の人に面白いって言ってもらえると嬉しいんです。