年商44億円のおもしろ家電メーカー・サンコーのルーツは「Macintosh」にあった? 山光代表がコンピュータ黎明期に受けた"衝撃"とは

サンコー代表・山光博康インタビュー

ーーMacに出会ってパソコン販売店の店員となり、DTPを経由して輸入代理店、そしていまや世界最小の家電メーカーとして、年商40億円を越える企業の社長になったわけですが、著書『スキを突く経営 面白家電のサンコーはなぜウケるのか』の中では「流されてきた」と盛んに書かれています。理由はありますか。

山光:振り返ってみると、主体的に「こうしたい、こうしよう」と思ってこなかったんですね。人生のいくつかのポイントで道が分かれているからストレートじゃない。でも主体的じゃなくて、状況に流されてこうなった、というような意味で、反省も込めて書きました。

ーーあえてお聞きしますが、どんなときに主体的だったらよかったと考えますか?

山光:企業でも個人でも、やりたいこと、面白いと思ったことには、同時にリスクがあります。そういった「やりたい」という欲望、気持ちが強いときは、撤退ポイントをしっかり設定するなどして、リスクヘッジしてから「えいや」とやるべきだった、というのが今の反省点です。

 若いころは失敗を恐れてやらないことの連続で、それを覆すためにはえいやとジャンプしてみるしかない。でも闇雲にジャンプしても怪我をするだけなんで、事前に谷底まで何メートルくらいあって、ここなら足を折るくらいで済むか、クッション巻き付けて準備できないかとか、対策をしてジャンプすればいいのに、ちょっと谷間が深いからジャンプしない、安全な方に流されてしまった、というのが反省点です。

ーーそれはサンコーを創業してから思ったことですか?

山光:そうですね、やりはじめてから思ったことです。会社経営はジャンプの連続なんですね。調達する時に、ものが来なかったらどうしよう、来ても売れなかったらどうしようと不安やリスクだらけです。でもこれをやらなかったら商売にならないので、リスクヘッジをとってえいやとジャンプするしかなくて、ずっとそれをやり続けなければならないんです。

 でもやっているうちに、売れなくても値下げをすれば売り切れるなど、リスクヘッジのやり方がわかる。いいことも悪いこともあるんですが、ジャンプし続けなければ成功体験も失敗体験もできないので、それを数多くできればできるほど次の精度が高くなることを実感できたんですね。それにもっと早く気づいていればもっと手前からスタートできたので、今到達しているより高い山にのぼれていたんじゃないかと思うんです。

 若い人ほど保守的で、失敗を恐れていますよね。失敗したことを他人にあれこれいわれることを嫌がりますし、自分が失敗したと思うことを恐れているように思います。だから私は社員にいつも伝えているんですが、失敗はプロセスであって、成功するまで続ければ失敗にならないんです。

ーーご自分が若いころを振り返っても、失敗を恐れていましたか?

山光:そうですね。人からあれこれ言われるのもいやだったし、失敗すれば自分を許せないというか、やっぱりやらなきゃよかったという感情です。でも本当はそれを何度もやらないと成功もできないので、リスクヘッジをしっかりしておいて、何回チャレンジできるかという回数を増やすかというのは、若い時の方がやりやすいですし、やったほうがいいと思います。

 失敗することはダサいように思えますが、挑戦しないことのほうがもっとダサいんじゃないでしょうか。挑戦しないと失敗もしない代わりに成功もしないので、リスクヘッジしながら成功も失敗もして、成功したらまた失敗にならないよう成功するまで頑張る。どうしてもダメだというときはピボット(回転)させて、それまでの経験を生かして成功させる。そうすると失敗で止まらず成功までいける。可能性が高まると思います。

 本を出してみて、社内でも意外と読んでもらえたみたいで、気恥ずかしいですが、少しポジティブな反応もありました。なにか企画などを提案して私から否定的な評価が出てきても、それは全面的に否定しているわけじゃなくて、少しでも成功の可能性を高めるためのことを言っていただけであって、もっとみんなの意見を出してほしかったのです。それが社員に伝わったのは嬉しいですね。


■書籍情報
『スキを突く経営 面白家電のサンコーはなぜウケるのか』
山光博康
公式WEBサイト:https://www.shueisha-int.co.jp/publish/スキを突く経営

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