ひろゆきVS呂布カルマ世紀の対決も 『マッドマックスTV論破王』でタレントたちが見せつける華麗なディベート
現在テレビ朝日とABEMAで放送中の『マッドマックスTV論破王』をご存知だろうか。もともとは地上波で映せるか映せないかギリギリのラインに位置するVTRを流すというコンセプトで『マッドマックスTV』の名前で放送されていた番組だ。
出川哲朗がカースタントで砂利の山に激突する映像や、井手らっきょが土佐犬に襲われる映像など、現代のテレビ番組では到底使用できない衝撃的な映像を途中まで流し「続きはABEMAで」と放送直後に生配信するという画期的な手法で一部のお笑いファンからカルト的人気を誇り、ほかにも「鬼のマナー講師」として知られる平林都がハリウッドザコシショウや錦鯉・長谷川雅紀、モグライダー・ともしげなどのマッド芸人たちにマナーを徹底指導する「マッド芸人鬼マナー指導」、芸人界でも屈指のクレイジーさを誇る野性爆弾・ロッシーが人生相談に答える「奇才ロッシー先生の人生相談室」など、常に挑戦的な企画を発信し続け、ほかのバラエティ番組とは一線を画していた。
そしてこの春から番組で一番の人気企画、2ちゃんねる開設者・ひろゆきを相手に芸能人達が様々なテーマを持ち寄りディベート対決を行う「ひろゆきの論破シリーズ」を主軸とした番組『マッドマックスTV論破王』に生まれ変わった。
このシリーズの特徴はなんと言ってもその本気ぶりにある。勝負の判定は早稲田大学雄弁会や日本弁論連盟などのディベートの専門家達に委ねられ、ネームバリューや勢いでは誤魔化すことができない本当の論破力が試される。その中でもこのコーナーの顔であるひろゆきは改めて流石だと思った。「相手が指定したテーマ」という、自分の本心とは逆の立場でディベートしなくてはならない可能性もあるという圧倒的不利な状況においてもエンターテインメントとしてのディベートができ、「日本の死刑制度は廃止すべきor廃止すべきではない」といった確信を突くテーマから、「現世の記憶 来世に持っていくor持っていかない」「ウンコ味のカレーorカレー」などのディベートする気も起きないようなくだらないテーマだろうと惑わされることなくエンターテインメントとして成立させている。
本人は自覚していないらしいが、ひろゆきの「論点ずらし」のテクニックは圧巻で、相手の意見に対する矛盾や違和感を徹底的に突いていき、相手が反論の意見をまとまっていない段階でも例え話やデータを用いて巧みに自分のペースに誘導していく。加えて、常軌を逸した早口と絶妙な表情で相手の神経を逆撫でしていき、ひろゆきとディベートとした人間は蟻地獄にハマったような感覚に陥るという。
そしてもう一人、その圧倒的強さを誇るひろゆきと「唯一」と言っていいほど互角の戦いを繰り広げていたのが、ラッパーの呂布カルマだ。本人も語っていたが、常日頃ラップバトルで「リズム」や「韻」という制約の中で戦ってきた呂布カルマにとって枷がない状態はむしろ「やりやすい」と言えるのだろう。ひろゆきとの「ラッパーに倫理観を求めるのはアリorナシ」をテーマとした対決では、呂布カルマの本心は「ナシ」としつつも「ひろゆきがラッパー側に立ってどれぐらい話してくれるのか聞きたい」という理由からあえて「アリ」の立場でスタートさせていたことからも口喧嘩に対する圧倒的な自信が伺え、その自信に違わぬ実力を存分に見せつけられた。
前述したように、ひろゆきが論点を巧みにずらしながら自分の主導権を素早く握っていくスピードタイプなのに対して、呂布カルマは相手の意見を全て受け止めつつ、それに対して矛盾点を突いていくパワータイプ。ひろゆきの術中にまるで嵌まらず、最後まで自分の意見を曲げずに虎視眈々とクリティカルヒットを狙っていくスタイルは快感すら覚えた。
この一戦がきっかけとなり、新たなるディベートモンスターとして呂布カルマ自身のスピンオフ企画「呂布カルマガチンコディベート対決」も始動。それにともない番組もさらなる盛り上がりを見せており、シリーズのYouTubeの総再生回数は1億回を超えている。2015年の「ユーキャン新語・流行語大賞」に「はい、論破!」が選出されたことからも分かる通り、人と人が意見をぶつけ合いどちらかが言い負かされるのを観るのが大好きなのだろう。まったく違うタイプの強者を軸とした「論破王」にこれからも目が離せない。