ミステリー作家とQuizKnock、2つの目線から考える「謎解きの面白さ」 似鳥鶏×河村拓哉対談
『推理大戦』などで話題のミステリー作家・似鳥鶏の新作『夏休みの空欄探し』(ポプラ社)が発売中だ。
本作は、古本に挟まれていた暗号に挑む美人姉妹の謎解きを、ひょんなことから夏休みの間手伝うことになるクイズ研究会会長の男子高校生が主人公の物語。 謎解きを楽しみながら、青春の爽やかな描写が楽しめる青春恋愛ミステリーだ。
リアルサウンドテックでは、本作の発売を記念し、似鳥鶏とQuizKnockの河村拓哉の対談を実施。ミステリー作家と、知的メディア「QuizKnock」のメンバーとして、それぞれ違った角度から“謎”にアプローチする2人に、謎を解くことの面白さ、そして知ることの面白さについて語ってもらった。
初めてYouTubeのチャンネル登録したのが「QuizKnock」だった
ーー河村さんと似鳥先生は以前から面識があったのでしょうか?
似鳥鶏(以下、似鳥):著作物と講談社『tree』での書評でしかお見かけしたことがなく、この対談が決まってからQuizKnockさんの動画を見たんですが、とても面白くて。生まれて初めてYouTubeのチャンネル登録をしたんですよ(笑)。
ーー似鳥先生は普段YouTubeを見たりする機会はあるのでしょうか?
似鳥:資料でよく見たりはしますね。例えばサンパウロの街並みが知りたいけど、Google Earthではわからない。コロナ禍で現地にも行けない。そんなときにYouTubeでお散歩動画を投稿している方がいるので、それを見れば街並みもわかるし音響までわかるんです。ただ、やはりQuizKnockさんの動画は衝撃的でしたね。
ーーちなみにQuizKnockさんのどの動画を見られたんですか?
似鳥:解答者が制限付きでクイズを解いていくクイズ動画を見たんです。河村さんの解答がすごかったのが、問題文から漢字を抜いて、ひらがなと句読点だけ出題者が読むクイズ。問題文を当ててから解答を言う姿を見て、「超能力者かよ(笑)」と思ってしまいました。でも、魔法じゃないんですよね。あとで河村さんが解説してくださるじゃないですか。「この時点でこうだったら、問題文はこの形しかありえないので、こう解答する」という分析をして、全てにおいてロジカルに考えられているため、1%も魔法はないんです。それが一瞬で出るのはすごいですよね。
河村拓哉(以下、河村):似鳥先生は著書『叙述トリック短編集』を読んでいましたが、いろんな方から勧められる本ですごくいいなと感じていました。今回も対談に合わせてしっかりと読んできて、軽やかな印象の小説家さんだなと思っていましたね。今日お会いできて素直に嬉しい気持ちです。
似鳥:イメージ通りによく喋る人だと言われます。脚注とあとがきでよく喋るんですよ。「本人ってどんな人?」と思って、初めて面と向かうと想像通りよく喋る人、みたいな。
河村:豆知識とかが本の中で解説されるので、わざわざ調べにいく必要がないというか。そういうところがすごく読みやすいなと感じています。
似鳥:ありがとうございます。そうですね、せっかく本を読むんだったら、ついでにいろいろと知識が増えていったら面白いという発想なんですよ。普段、生活をしているとどうしても興味のあるものに偏ってしまいますが、本を読むことで全然興味のない知識が入ると、そこを出発点に知識の根が広がっていく。こういうのは、知識の出会い方としていいなと思っています。
ーーそれはいろんな小説を書いてきた上で常に心がけていることなんですか?
似鳥:豆知識的なところはそうですね。本編で全然関係ないお話が毎回脚注に入るのも、まあいいかと。話は変わりますけど、河村さんは、本当に動画で見たまんまの印象ですね(笑)。穏やかでニコニコしてらっしゃいますけど、頭の中はすごく回転してるんだろうなぁと思って。
ーー河村さんはQuizKnockのメンバーとして謎解きだったり問題を解いたりする機会が多いと思うんですが、そういう立場でトリックのあるミステリー小説を参考として読むことはあるんですか?
河村:参考にすることもあるんですけど、読み終わった後で参考にしようと思っているので、読んでいる最中は単純に楽しんでいますね。