VShojoの日本上陸に、小学館のメタバース参入――2022年上半期の終わりに起きた大きな変動

22年上半期末に起きた「メタバースの変動」

 2022年も上半期が終わったが、これほど「嵐」を感じる上半期と下半期の境目もなかっただろう。

 まず、この記事が出る1日前の日曜日。日本時間7月3日の未明に、アメリカ発VTuberエージェンシー「VShojo」から目を見張るような発表があった。日本への本格展開開始と、それに伴う「VShojo Japan」の新規立ち上げ、そしてなにより、VTuberとしても絶賛活動中の配信者・ksonの加入だ。

【VShojoNext】 I'm here VShojo! | kson Official VSHOJO Lore

 顔出しの配信者としても、VTuberとしても活動するksonのあり方は、VTuberとしては異色だが、リアルな配信者がアバターを所有し始めている昨今では、次のスタンダードとなり得るあり方だ。発表の場でも、アバターの姿のコスプレをして現れた彼女の姿は、リアルとバーチャルを越境する“力”そのものに見えた。謎めいた新人・飴宮なずなともども、「タレントファースト」を掲げるアメリカ発エージェンシーがVTuber業界にどんな風を吹き込むか注目だ。

【ゆっくり解説】にじさんじの黛灰が活動終了を発表!? 理由は? これからどうなるの?【公式】

 その数時間前、「にじさんじ」の黛灰が7月28日をもって活動終了を発表した。新宿アルタのモニターを用いた、劇場型展開に衝撃を受けた人もいることだろう。そして「現在のANYCOLOR株式会社との方向性の違い」を契約終了の理由に掲げたことに、複雑な想いを抱く人も一定数いるにちがいない。

 東京証券取引所グロース市場によって大きな注目を集めている「にじさんじ」からは、今年に入って童田明治やメリッサ・キンレンカなど、長く活動してきた所属タレントの活動終了が見られる。2つの事象の直接的な関係は断言できない。しかし、長く活動してきたタレントの中から、少しずつ「区切りをつける」動きが生まれているのはたしかだろう。それが互いにとって「良い選択」であることを願いたいところだ。

 土日の「嵐」だけでなく、先週は興味深いメタバース方面のトピックも多く見られた。ひとつは、兵庫県養父市の地域創生メタバース企画「バーチャルやぶ」の始動だ。兵庫県で最も人口が少ない養父市を盛り上げるべく、『VRChat』に養父市の名所や市役所が再現された。ただし、ただ再現されるだけでなく、吉本芸人も登場するアトラクションなど、バーチャルならではの遊び心にあふれている。

 「バーチャルやぶ」は兵庫県養父市と吉本興業によって企画されたが、ワールド制作には、クリエイターのVR蕎麦屋タナベや、メタバース施策コンサルティングを手掛ける会社代表のあおみなど、『VRChat』発のクリエイターも関わっている。また、メタバース上でも積極的に活動してるお笑い芸人・ガリガリガリクソンも、「バーチャルやぶ」のオープニングイベントを美少女アバター姿で大いに盛り上げた。様々なプレイヤーによる、メタバースを用いた地域創生の取り組みとして興味深い事例だ。

 一方、大手出版社である小学館は、自前のメタバース構築に乗り出した。6月30日に発表された『S-PACE』は、3D・xRライブなどを手掛けてきたLATEGRAも協力して取り組むプロジェクトだ。8月の一般公開を目指し、まずは報道、業界関係者を対象としたβテストが開始となった。

S-PACE コンセプトムービー 

 創設100周年を機に、コンテンツだけでなく、コンテンツとコミュニティを作ることを目指す『S-PACE』には、『コロコロコミック』や『サライ』などの雑誌に関連する施設や、ライブ会場、バーチャルな百貨店などが立ち並ぶ、総合的な場となっているようだ。そして、「一社では『S-PACE』は成立しない」と語る小学館は、競合他社も含めた様々な企業の参加を呼びかけた。2023年までのロードマップも提示した小学館の姿勢は、なかなかの本気を感じさせる。どのようなメタバースを目指していくのか、長い目で見守っていきたいところだ。

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