『ファンタシースターオンライン2』サービス開始10周年 迷走しつつも境界を超えた挑戦を続けるオンラインアクションRPG

『PSO2』サービス開始10周年

 『ファンタシースターオンライン2(以下、PSO2)』は、2022年7月4日をもってサービス開始10周年を迎える。現在は同作の世界観を引き継いだ『PSO2 ニュージェネシス』もリリースされており、2つのオンラインゲームが同時に運営されていることになる。今回は、10周年を機に『PSO2』が辿ってきた歴史を振り返ってみよう。

直感的に操作できるキャラクタークリエイト

 『PSO2』は、2012年にサービスが開始されたオンラインアクションRPGだ。セガの『ファンタシースター』シリーズの系譜であり、宇宙やさまざまな惑星を舞台にしたサイエンス・フィクションの世界観が特徴だ。とはいえ、世界観やストーリーは完全に独立しており、過去に『ファンタシースター』シリーズを遊んだことがない人でもプレイできる。

 そんな本作だが、オンラインアクションRPGという点以上に、「キャラクタークリエイト」について言及されることが多い。オンラインゲームとキャラクタークリエイトは切っても切れない関係にあるが、本作のキャラクタークリエイトのUIは実に優秀だ。目・鼻・口・耳といった顔のパーツから体型まで、さまざまな部位を細かく調整できるため、思い思いのキャラクターを実現できる。それだけではなく、各部位を調整するスライダーは身体のパーツを直感的に調整できるような見た目になっており、だれにでも扱いやすい。

 加えて、「キャスト」と呼ばれるロボットのような見た目の種族を作れることも魅力だ。キャラクタークリエイトのバリエーションはまさに無限といっても過言ではない。このように幅広く奥深いキャラクタークリエイトを、だれでも扱えるレベルにまで落とし込んでいることは、『PSO2』最大のセールスポイントといえる。

だれでも気軽に遊びやすい仕組みづくりとプラットフォームを超えたアプローチ

 本作は当初から基本料金無料のスタイルを貫いており、有料アイテムを購入しない限りは無料でプレイできる。倉庫の容量など、課金しなければ快適に遊びにくい要素はあるものの、基本的には無課金のユーザーでも十分にバトルやストーリーなどのコンテンツを楽しむことが可能となっている。

 さらに、対応プラットフォームを次々と広げていったことも特徴で、Windows PC、Play Station 4、Nintendo Switch、Play Station Vitaなど、さまざまなハードへと進出していった(Vita版のサービスはすでに終了している)。また、2014年にはスマートフォン版『PSO2 es』がリリースされたが、こちらはPC版と経験値やゲーム内通貨、アイテムなどを共有でき、外出先でもスマートフォンでキャラクターのレベル上げが可能だ。

 このように、『PSO2』はプラットフォームの垣根を超えた意欲的な試みが多く見受けられた。そのほかにも、2度にわたるアニメ化、ボーカロイドとのコラボによるゲーム内ライブなど、さまざまな角度からのアプローチを続けてきた。この運営方針は、本作が「境界を超えるRPG」というキャッチコピーを掲げている点からも見て取れる。

数々の“事件”でネットを騒がせた問題作

 ここまでは『PSO2』の優れた点にフォーカスして紹介してきたが、本作の運営は決して順風満帆なものではなかった。

 たとえば、2013年に起きた「HDDデータ消去」事件についてはご存知の方も多いのではないだろうか。これは、PC版『PSO2』のアップデートプログラムのバグにより、『PSO2』がインストールされたHDD内のデータが(本作と関係のないものまで)消去されてしまったという事件だ。

 そのほかにも、「ヒーロー」と呼ばれる規格外に強力なクラスの導入により、その他のクラスが軒並み戦力外通告を受けてしまったこともあった。オンラインゲームでは、バランス調整によるユーザーからの批判は日常茶飯事ともいえるが、件の調整については特に否定的な意見が多かった印象だ。

 また、ストーリーに対する批判も大きかった。本作ではエピソード1~6までのストーリーが展開されており、エピソード1~3までは時間遡行の設定を活かしたスペースオペラが展開され、設定の矛盾などに対する批判こそあれども、ユーザーからの評価はそこまで悪くなかった。

 しかし、エピソード4では突如として「地球」が舞台となる。女子高生をヒロインに据え、東京やラスベガスで繰り広げられるシナリオは、従来の『ファンタシースター』シリーズとはかなり趣の異なるものであり、戸惑ったユーザーは多い。また、ヒロインを活躍させるために主人公の存在感が希薄になっていることも、エピソード4が批判された一因だろう。

 さらに、エピソード5では中世ファンタジーのような異世界「オメガ」を舞台としたストーリーが展開された。「小説家になろう」で見かける異世界転生のような展開だが、これを『ファンタシースター』シリーズに求めていた人は多くはなかったはずだ。結果、SFらしい世界観を求めていた従来のシリーズファンが離れる要因となってしまったのではないだろうか。

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