『ファイアーエムブレム無双』が見せる新たな『風花雪月』の可能性 目まぐるしく忙しいが、本編ファンは通るべき作品

『FE無双 風花雪月』が見せる新たな可能性

ストーリーについては『風花雪月』本編プレイ済みであることが望ましい

 今作のストーリーについては、本編をすでに遊んだプレイヤーに向けたものという印象が強い。

 『ファイアーエムブレム 風花雪月』の醍醐味は、学園生活と戦記モノを融合させたからこそ成り立つ、戦場の悲哀にこそあるのではないだろうか。かつて学び舎で青春を共にした旧友たちと敵として戦わなければならないという、プレイヤーの良心をかき乱す演出は本編ならではだ。

 しかし、『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』では士官学校編が序章として扱われ、わずか3マップで終了してしまう。したがって、本編未プレイの場合、他クラスのキャラクターにいきなり感情移入することは難しそうだ。ほんの少し顔を合わせただけの別クラスのキャラクターと戦場で顔を合わせてもピンとこない人も多いだろう。

 その一方、戦争編のボリュームは膨大で、戦禍のなかにある自軍のキャラクターの内面は丁寧に描かれていく。新たな支援会話も用意されており、本編とは異なる角度から各キャラクターが掘り下げられている。愛着あるキャラクターの新たな一面が見えるのは嬉しい。

 ファンにとって嬉しい要素はそれだけではない。たとえば、ヒルシュクラッセを選択するとヒルダの兄「ホルスト」が登場する。ホルストに関しては、本編で何度も名前が出ていたものの、一度も登場することはなかったキャラクターだ。このほかにも、本編では姿を見せなかったキャラクターが何人か登場する。

 また、本編ではプレイヤーの分身としてあまり声を発することがなかった「ベレト/ベレス」だが、『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』ではシェズの宿敵として立ちふさがり、会話シーンがふんだんに用意されている。本編とは別の角度から描かれる「ベレト/べレス」にも注目してほしい。

 『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』で描かれるのは、士官学校の生徒たちが「ベレト/ベレス」という類まれな先生に出会わなかったifストーリーだ。先生と出会わなかったからこその驚きの新展開が待っており、新たなフォドラの歴史が紡がれていく。

 本編のファンのなかには、かつて自分が遊んだルートこそが正史であり、新作のストーリーを受け入れがたい人もいるかもしれない。しかし、『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』はそんな人にも遊んでみてほしいと思えるほどに、本編のエッセンスをしっかりと継承しながら、新たな可能性を見せてくれている。かつて先生としてガルグ=マク修道院で過ごしたあなたも、この生まれ変わったフォドラにいま一度降り立ってみてはいかがだろうか。

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