『ファイアーエムブレム 風花雪月』はいかにして偉大なストーリーテリングを達成したのか 「無双」発売前に振り返る
『ファイアーエムブレム 風花雪月』は、世界で最先端のストーリー性を持つゲーム作品だ。筆者は仕事柄、映画やアニメ作品など数多く鑑賞しているが、ここ数年で最も優れた物語を選べと問われたら、迷わず今作もその候補となる。今回は6月24日の『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』発売前に、元となった本作の物語をネタバレ込みで考えたい。
『ファイアーエムブレム 風花雪月』は、2019年7月26日に発売された、Nintendo Switch用のシュミレーションRPGだ。任天堂の人気タイトルである「ファイアーエムブレム」シリーズの17作目にあたる。プレイヤーはマス目状のステージにて、各ユニットを動かしながら敵を攻撃して倒していき、城を制圧するなどの勝利条件を達成していく。将棋のような戦略的な頭脳戦と、RPGのようなキャラクターを育てる楽しみが合わさったゲーム性が特徴だ。
以下ネタバレを含みます
まず、今作の特徴は二部制を採用している点にあるだろう。主人公は士官学校の教師に就任し、個性豊かな3つの学級の生徒を指導していくことになる。今作の発表が初めて行われた際には、学園ものになるという情報に多くのファンが驚きと心配の声をあげた。
そしてその試みは成功した。第一部での学園パートでは、主人公が教師となり、多くの生徒たちと交流を深めていく。自分が育てているキャラクターたちに愛着が湧くのは当然ながら、仲間にスカウトできなかった生徒たちにも心を寄せ、次回プレイする際のことを考えているほどだ。不穏な事件が発生しつつも、3学級の対抗戦であるグロンダーズ鷲獅子戦や、白鷺杯のダンスイベントや舞踏会など、学校のイベントを通して各キャラクターたちと交流を重ねていく。
しかし、ここでキャラクターへの思い入れが深まるほどに、その後の展開に涙する。5年後に各学級が所属する国が戦争状態となり、生徒たちも兵士として、互いに傷つけ合う形となるためだ。今作の別ルートでは、操作できるプレイアブルキャラクターが、敵として対立するという構図が大きな話題を呼んだ。そのキャラクターたちの内面を知れば知るほど、倒したくないという思いは強くなる。しかし、それでも倒さなければ次のステージには進めない仕様になっている。
「ファイアーエムブレム」シリーズでは、プレイヤーの判断によって、キャラクターの生死が決まる戦略性の高さも魅力の1つだ。多くのプレイヤーは、仲間を誰1人として欠かすことなくクリアしたい。指揮を誤って仲間をロストしてしまえば、以前にセーブしたところからやり直す人も多いだろう。しかし、今作の場合はゲームシステム上、必ずプレイアブルキャラクターと対峙してしまう。過去の「ファイアーエムブレム」シリーズから連なるゲームシステムで、自分たちのプレイで愛着のあるキャラクターの命を絶つことで、より戦争の過酷さが強調され、ドラマ性が深まった。