ビジネスとクリエイティブを拡張する Adobe Expressの可能性
「これからの本好きを育てる書店」下北沢・夢眠書店のInstagram運用(前編)
アドビの提供するサブスクリプション型クリエイティブツール「Adobe Express」はiOS・iPadOS/Android/WEBに対応しており、簡単な操作で誰でも手軽に高品質なコンテンツを作成できる。本連載ではこのツールで、各業界のクリエイティブにおける「課題」を解決していく。
今回の舞台は東京・下北沢の「夢眠書店」。夢眠ねむ氏が運営する書店で、「本好きのための書店ではなく、これからの本好きを育てる書店」というコンセプトを掲げる。今回は書店におけるSNSの運用法やAdobe Expressの活用について伺った。(編集部)
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ーー夢眠書店は、どんな書店ですか?
夢眠:本屋に行く習慣がない人やお子さんに本を好きになってもらえるような、親子で本を読みに通ってもらえるようなお店を作りたくて作ったお店です。なのでメインのターゲットは、子ども連れや、お母さん、お父さんたち。私の周りにも親になる人が増えてきたけれど、子供がいると本屋さんに行く時間が全然ないし、そもそもそんな発想もない、みたいなことになりがちで、読書の時間を確保するのも難しい。だったらここにいる1時間半だけでも、本を読んで1人の自分に戻れる時間があったらいいなとか、子供と二人で本屋さんに行って一緒に選ぶ、みたいな余裕が生まれたらいいなと思って作ったんです。
普通の本屋さんだと子どもが泣いちゃったりして、ゆっくり本棚を見ることも難しい……だったらうちは子どもが泣いても騒いでもOK、みたいな雰囲気にしたくて、予約制っていうちょっとクローズドな仕組みにしたんです。実際初めてのお出かけに夢眠書店を選んでくれる方や、ママ友会に使ってもらったりしています。今年で3年目ですね。
ーー親子で来られる本屋さんですね。軽食も出していますよね。
夢眠:本だけ置いていても本見て帰るだけになっちゃうし、子どもたちも食べられて、お母さん、お父さんたちにも「他人が作ったご飯を食べるひと時」を作りたい、そういう思いがあって喫茶もやっています。料理人の姉が喫茶を担当しているんですが、私たちの実家は海産物の問屋をやっていて、乾物がメイン。かつを節や昆布の無添加のものを母がブレンドしてだしパックを作って売っています。そんな家で育ったから、「小さいときから美味しい出汁を飲んでると、味覚が育つよね」と姉と話し合って。姉は元々フレンチの料理人なんですが、うどんを作るのが一番好きだから出汁をたっぷり使ったうどんを出そうと。私は本屋をやるならやっぱりカレーを出したくて、秋葉原のカリガリの二木さんに弟子入りして、夢眠書店オリジナルのカレーを作って、カレーとうどんの2本でいこう!となりました。後にそれが合体してカレーうどんも生まれて、他にはない個性的な味で看板メニューになりました。
それと、親と出かけるときに飲む一番嬉しい飲み物がメロンクリームソーダだったので、夢眠書店でメロンクリームソーダを飲む子がいたらいいな、なんて思って小さめのメロンクリームソーダも出そうと。徐々に「こうだったらいいな」が増えていって、看板メニューが決まっていきました。今は、夢眠書店で初めて炭酸を飲んだ子たちがいっぱいいるんですよ。
ーーなにか、夢眠書店らしいお客さんとのエピソードはありますか?
夢眠:うちは「これからの本好きを育てる書店」なので、お店を始めるときに「変に選書にこだわらない」というルールを決めました。「こだわりの本屋」にしたくなかったんです。出来るだけフラットに、読ませたくない本は置かないけど、それ以外は普通に新刊を扱っています。
で、選書をしないので、「オススメ」もしない……というよりうちは「オススメ」に対して辛辣な店で、「自分で決めろ!」って感じなんですよ(笑)。
喫茶のメニューでも「カレーとカレーうどんはどっちがおすすめですか?」とか聞かれたら、「そんなのも自分で決められないんか~!」って。「米と麺、どっちが食べたい?出汁すすりたい?」と聞いて、「出汁すすりたいです」って言われたら、「じゃああなた、うどんが食べたいんだよ、オススメ聞かなくても自分でわかってるんだよ!」って返すとお客さんがハッとする、みたいな(笑)。怖い店ですねほんと。
喫茶はオススメしか置いていないし、「本のオススメはありますか?」とか聞かれても「ないよ」って答えちゃうんです。「自分で見て面白そうなやつ買えば」って。ひどいですよね、ぱっと見こんなにこだわってそうなのにオススメはしてくれない謎の店です(笑)。
でも本に馴染みがなくて、うちの店で読書を始めようと思ってくれている方には、「厚みが1センチない本から始めたらどうか」って言いますね。それだったら帰りの電車と明日の通勤時間で読み切れそう、って思える。まずは読み切れたという成功体験が大事だから、厚みのアドバイスだけ(笑)。