なぜ、いま“有線イヤホン”が重要なのか ピエール中野がさまざまなイヤホンを開発して気づいたこと

ピエール中野、イヤホン開発での気づき

「ちゃんとイヤホンを選んだら、本当に音楽の聴こえ方が変わるし、好きな音楽がもっと好きなる」

ーー今回クラウドファンディングは初めての経験とのことでしたが、実際にやってみていかがでしたか?

増田:まだ実際に有線ピヤホン3の音を聴いてもらっていないにもかかわらず、沢山の反響があったことに対しては本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

 ただ、この結果に関しては中野さんがこれまで作ってきたものに対する信頼感があってのこと。それに僕ら自身が5年前にブランドを立ち上げて、低価格製品に対してもちゃんと一生懸命向き合って物作りをしてきたことに対して、ユーザーから一定の評価をいただいていることの結果だと思います。

 だからこそ、これからクラウドファンディグが終わるまでのあと1ヶ月くらいの間にどうにかして、もっとこの製品の存在を世の中に広げていかないといけないという気持ちを強くもっています

ーーちなみにクラウドファンディングではどんな苦労がありましたか?

増田:クラウドファンディングページの完成が、公開時間の3分前だったり、その後に僕が書いたブログに誤植が見つかるなど、本当に苦労話を挙げるとキリがないです(笑)。でも、中野さんに今回のプロジェクトへの想いを言葉にしてもらい、それをページとして組み立てながら、どうすれば見てくれた人に製品の魅力が伝わるかをギリギリまで一緒に考えていただいたりするなど、終わってみれば大変だったけど、面白かったという気持ちの方が強いですね。

中野:クラウドファンディング自体は僕も以前から興味があったので、増田さんと打ち合わせをしている時からこういうことをやってみたいということは伝えていました。それとこの価格帯の製品になると、販売数の見込みが立つことはメリットが大きいですね。

増田:あとはその期間中に、中野さんへ今回のチューニングの意図などを含め、自分たちがどういうことを考えながらもの作りをしてるのかということを直接伝えることができるのがクラウドファンディングの一番の利点だと思いました。

ーー現時点でクラウドファンディングは達成率200%超になっていますが、自分たちの想いが伝わっている実感はありますか?

増田:いま、実際に支援していただいている人のなかには、応援の意味で支援してくれている人も相当数いるとは思います。ですので実際にはまだそこまで自分たちの製品が多くの人に届いているという実感はなく、ブランド力を高めていくためには、これからがこれまで届いてなかったところにちゃんと届けていくべきフェーズだと考えています。

 でも、ピヤホン自体はさっきも中野さんが話されたように、オーディオで音楽を聴くことの楽しさや感動を覚える人を増やしたいと思い、その間口を広げるためにやっていることなので、そこは今後もブレずにやっていきたいです。

中野:実際に僕はイヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」のアンバサダーをやったりそこで製品レビューを書いたりしながら、色々な製品の魅力を発信するという仕事もしています。そういったことは「ちゃんとイヤホンを選んだら、本当に音楽の聴こえ方が変わるし、好きな音楽がもっと好きになる」ということをしっかり伝えていきたいからやっていることなんです。そういう意味では、今回の有線ピヤホン3はそのための第一歩となる製品だと言えますね。

テクノロジーの進化で音楽の聴き方が多様に。イヤホンもともに進化していく

ーー凛として時雨 『竜巻いて鮮脳』 × 360 Reality Audio|Special Music Videoが最近公開されましたが、このような従来よりもリッチなリスニング体験ができるようになりました。そういう音楽を良い音で聴くことでよりリスニング体験の没入感が上がると思いますが、このような音楽業界の傾向をどう捉えていますか?

中野:かなり面白い流れだと思いますね。従来の音源であれば、自分の前で演奏されているような音が聴こえています。一方、『竜巻いて鮮脳』の360 Reality Audio音源を聴くとその場に立ってるような感覚になれるという、不思議な体験ができるんですよ。それと各楽器の音もキレイに聴こえるというか、わかりやすく何が演奏されているかわかりやすいし、すごく生々しく臨場感がある感じで聴こえてきます。

 立体音響フォーマットのミキシングは従来よりも難しい部分もありますが、こういったフォーマットに興味を持つサウンドエンジニアがいまよりももっと増えてくると、それに特化したサウンドの音楽もちゃんと増えてくると思います。現時点でも立体音響で音楽を作ることを想定したアーティストが少しずつ出てきていますし、応用次第ではまたひとつ新しい音楽体験が増えることになると思います。そうなると音楽シーンもまた面白くなっていくような気がします。

増田:これまでにもレコーディング機材やシンセサイザーなどを含めて、テクノロジーが進化することで楽曲自体も進化し、新しいものが生まれてきました。そのなかでいま、立体音響音源のような新しい表現が生まれてくること自体はすごく面白いですね。当然、それにともなって音楽の聴き方も多様化していくだろうし、そこで選ばれるイヤホンも同じく多様化していくことにも期待しています。

ーー今後のピヤホンシリーズ展開の展望を教えてください。

中野:いまはピヤホンでも有線、マイク付き有線、ハイエンド有線、左右一体型のセミワイヤレス、完全ワイヤレスといったさまざまなピヤホンがあるので、全部聴き比べてみると「もうちょっと歌がよく聴こえてほしい」とか「こんなに音の解像度が高くなくていい」とか、それぞれの好みがわかってくると思います。

 そうなった時に他のイヤホンと比較して、たとえば、低域が少ないモデルを探すなど、ピヤホン自体がイヤホン選びのひとつの基準になってくれると嬉しいです。その意味では今回やっとピヤホンの有線ハイエンドモデルが出せたことは大きいですね。

 実際、有線ピヤホン1と2ではコスト面の問題もあって、音質面で妥協しているところも正直あるんですよ。でも、今回は本当に僕が理想とするイヤホンが作れたと思っていますし、有線ピヤホン3を聴くことで、以前の有線ピヤホンで意図していたものの、伝わらなかった部分が改めて理解してもらえると思います。そうなれば、有線ピヤホン自体の評価も変わるだろうし、改めてその魅力に気づいてもらえるはずです。

増田:元々Hi-Unitは「大好きな音楽をもっと好きになる」というテーマでイヤホンを作るところから事業がスタートしました。それをさらに他のプロダクトもやりたいということで、そのテーマを「あなたの大好きをあの人の大好きに」に変更しました。やっぱり自分の好きなものをもっと好きになれると、気持ちが豊かになったり、生活が豊かになることにも繋がっていきます。ピヤホンシリーズでは、そのきっかけ作りのひとつを中野さんと一緒にやらせてもらっているという感じなんですよね。

 最近は「ピヤホンのヘッドホンやスピーカーも作ってほしい」という要望もありますが、ユーザーさんが音楽に向き合う時や楽しむ段階で必要になるものは、いろいろあると思います。なので、これからも何かしらの形でそのための間口であったり、知るきっかけを提供できるような状況を作っていきたいと思ってます。

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