のんに聞く、俳優・モデル・アーティストのクリエイティブに活きる「リスニング体験」

のんに聞く「リスニング体験」

 俳優、モデル、アーティストなど様々な分野で表現活動を行っている“のん”。現在公開・配信中の映画『Ribbon』では脚本・監督・主演をつとめるなど、活躍の幅はさらに広がっている。

 今回は、奔放な創造性を発揮し続けている彼女に、クリエイティブな活動に活きる「リスニング体験」についてインタビュー。普段どんな作品やコンテンツのリスニングを楽しみ、インスピレーションを得ているのか。また、音楽や映像を視聴する際にかかせないイヤホンのこだわりなどについて聞いた。(森朋之)

のんが語る、自身の“アウトプット”と“インプット”

——以前から忌野清志郎さん、矢野顕子さんの音楽に影響を受けていることを公言していますが、最近も音楽から刺激を受けていますか?

のん
のん

のん:そうですね。最近は、『NON KAIWA FES vol.2』にも出ていただいたリーガルリリーさんがすごく好きで。「こんな展開なんだ!」と驚くくらい曲の構成がドラマティックだし、歌声もすごいんですよね。激しい感情が乗ってるのに、空気に溶けてる感じがあって、複雑ないろんなイメージが湧いてきます。

——音楽が創作のヒントにもなることも?

のん:影響はすごく受けていると思います。音楽によって気分が変わって、ドラマティックなものを描きたくなったり、孤独な絵を描きたくなったり。たとえばリーガルリリーさんだったら、夜中の風景、暗いなかにポツンと光が見えるようなものを作りたくなるんですよね。私自身、インスパイアされたいと思って音楽を聴いているところもあります。サンボマスターさんもずっと大好きです。映画『Ribbon』の主題歌(「ボクだけのもの」)を書いていただいたんですが、改めて「やっぱりすげえーー」ってしびれました。元気になるし、勇気をもらえるし、パワフルだし、泣けるし、感動的な曲ですね。

——映画『Ribbon』の劇伴は、ギタリストのひぐちけいさんが担当しました。ひぐちさんに依頼したのはどうしてなんですか?

のん:けいさんには、私が音楽を始めてからずっとギターを弾いていただいていて。コロナ禍になって、『おうちで観るライブ』を開催したんですけど、ハードな時期も付き合ってくれて、一緒に乗り越えて。思い入れが深いし、すごく信頼してるギタリストなんです。『おちをつけなんせ』(のんの初監督作品)のときもけいさんが音楽を作ってくれたんですが、それもめっちゃカッコよくて、エモくて。繊細さと力強さが両方あるんですけど、それが『Ribbon』にも合うだろうなと思ったんですよね。脚本を書いてたときも、ずっとけいさんのギターが頭のなかで鳴ってたし、ぜひお願いしたいなと。

——のんさんからイメージを伝えて、それを曲にしてもらう、という流れだったのですか。

のん:そうですね。私が編集作業をしているアトリエに来ていただいて、映像を見ながら、「このシーンには、こういう音楽が欲しいです」と。あとはメールなどでやりとりしながら作っていったんですけど、かなり壮絶だったんですよ。正直に「これは全然違いますね」みたいなことも伝えたし、結局、半分くらいボツになったりもしましたから。

——クライマックスの場面で流れる、歪んだギターサウンドはめちゃくちゃカッコよかったです。

のん:いいですよね! あのシーンは絶対、ギターがいいですってお願いをして。青春を感じる曲だし、めちゃくちゃいい場面になりました。けいさんの曲を聴いてから編集を変えたシーンもあるし、お互いに共鳴し合っていたと思います。

のん

——映画『Ribbon』のインスピレーション盤が配信リリースされました。新曲も収録されたそうですね。

のん:はい。映画で使った曲を全部ミックスし直したんですが、その他に『Ribbon』のテーマになってる曲に歌詞を付けて私が歌った曲もあるし、けいさんに「映画にインスパイアされた曲を作ってください」とお願いした曲もあります。

——映画『Ribbon』から派生した曲なんですね。

のん:そうですね。けいさんに作っていただいたのは「鮮やかな日々」というタイトルで、主人公の「いつか」がおうちのなかでモヤモヤしている姿だったり、そこからどうにか抜け出して、希望を見出すまでを曲にしていて。『Ribbon』のテーマに歌詞を付けた曲「ribbon」は、ちょっと違う感じのストーリーなんですよ。孤独でいる人に向けて、“大切な人と一緒だったら、前に進めるはず。がんばろう”と語りかけているような曲ですね。

——映画『Ribbon』は、コロナ禍によって、卒業制作の発表の場を奪われた美大生たちのストーリーです。主人公はある出来事によって、創作にのめり込んだきっかけを思い出しますが、のんさんご自身がクリエイティブに向かった原点はどんなことだったんですか?

のん:どうだろう……まず、小さいころから自分がやりたいことをやってるときに、「そんなことばっかりやって、ダメでしょ」みたいなことを言う人が周りにいなかったんですよ。両親も私の意思を尊重してくれて。もちろん厳しいときは厳しいんですけど、学校のテストの点がちょっと落ちちゃっても、「楽しくバンドをやっているんだから、それでいい」みたいに思ってくれたので。あと、地元に面白い人たちがいたんですよね。子どもに楽器を貸してくれて、公会堂みたいなところで弾かせてくれる人とか、ギターを教えてくれる人もいて。「好きなことをやっていい」と許容されていたというか、やりたいことができる自由な環境だったんです。だから、いまも止まらないのかもしれないですね。「やりたいことやっちゃいけない? そんなわけないでしょ!」という気持ちはずっとあります。

 ——素晴らしい。アート、音楽、映画などから刺激を受けて、それを新たな表現としてアウトプットして……。

のん:そうですね。ただ、去年はずっとアウトプットしていたんですよ。舞台に2本出演させていただいて、映画の撮影も重なって。すべて自分でやるって決めたことなんですけど、作品が4つくらい同時進行している時期もあったんです。そのなかで自分のプロジェクトを進めたり、おうちライブがあったり。作品展(『のん Ribbon展 不気味で、可愛いもの。』)もやらせてもらったし、全部に力を注いでたら、すごい疲弊しちゃったんですよ。「もう出せるものは何もありません!」という感じになってしまったので、今年はいっぱいインプットしようと思っています。そうしないとダメなんだなと痛感しましたね……。なんか愚痴みたいになっちゃいました(笑)。

のん

——(笑)。ちなみに、いまインプットしたい、気になっている作品は?

のん:たくさんありますね! 『ドライブ・マイ・カー』や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』も観れていないし、一方で10代の頃に読んでた辻村深月さんの『スロウハイツの神様』を読み直したりもしています。時間が足りないですね(笑)。

——今後の活動については?

のん:『Ribbon』が劇場で公開もされていますが、デジタル配信も始まったので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。あと、今年の夏に公開される『さかなのこ』でも主演をさせていただいて。さかなクンの半生を描いた映画なんですが、私にとっては大事件なんですよ。自分で言うのもなんですけど、私がさかなクンの役をやるのって、すごくシックリきたんですよね。沖田修一監督のファンでもあったので「絶対やる!」と思いました。めちゃくちゃ胸いっぱいの現場だったし、素敵な内容になっているのでこちらもぜひ観ていただきたいです!

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