VTuber界随一の「天衣無縫」 文野環が持つトリックスターとしての魅力

文野環、トリックスターとしての魅力

 「VTuberはゲーム配信が主な活動内容、もしくは歌を唄ってみたり、雑談をする方もいる」と形容するのはたやすい。事実、多くのVTuberはその活動内容に頭を悩ませ、どんなネタがいいかを思案する日々を送っている。

 その例として、彼女と同期のにじさんじ元二期生を一瞥してみよう。

 「媚びる」ことをせずに自身のブランディングを保ちながら活動をつづける剣持刀也を筆頭に、シーンの移り変わりにうまく順応してみせた森中花咲・物述有栖、エロやセクシャルといったセンシティブな話題を中心にして活動する鈴鹿詩子、キャラクター性を念頭において「配信をしない」ことを選ぶギルザレンIII世など。

 彼らも、ほかの世代にいれば強い個性となって目立つであろうタレントだ。だがそんな彼らすらも霞むほどに、文野環の活動は突飛かつ過激、何より徐々に強固になりつつあるVTuber像やフレーミングからは大きく逸脱すらしている。

 ここで紹介した配信は、あくまで彼女から発信された言動・配信の一部に過ぎない。当然こういった配信・言動を続ければ当人の品性や評価を大きく損ねたり、無用なパッシングを受ける言動も少なくないし、実際独断で行動し、スタッフから注意を受けることを明かすこともしばしばあるほどだ。

 現在では「文野環はこういった配信スタイル・スタンスの人」とファン・タレントを中心に広まっており、彼女自身も「失礼がないようにしないとね!」と心がけ、なにより「文野環はホントは良い子よ」と他のタレントが口にするなど、完璧にノープランで動いていたり、無礼な振る舞いをしているわけではないのは付け加えておきたい。

 VTuberという言葉がそれ以前には「バーチャルYouTuber」とも言われていたように、彼らはバーチャルな世界・姿でYouTuberらしい活動を試みてきたことを思い出してほしい。キズナアイらがこなしていた役割を、彼女は3D用のモーションスーツなどを着ることなく、果敢に試み続けてきたわけで、当然画角に収まるわけがない。本当に彼女がそこまで考えていたかどうかは、いちど彼女に伺ってみたいところでもあるが。

 3Dモデルを実装されたタレントが増え、より多くのイベント・番組が企画・出演へとつながり、より「タレント」化が進んでいくにじさんじのなかにあって、今後も彼女は変わることない天衣無縫ぶりを見せつけてくれるだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる