NFT「仮想取引」の被害額が890万ドル超に。横行する“資金洗浄”を取締まることが難しい理由

NFT「仮想取引」被害を取締まることが難しい理由

 2021年10月、NFT作品「CryptoPunk#9998」が124,457ETH(当時のレートで5億3200万ドル)で売却された。買い手は購入金額のイーサリアムをCryptoPunkのスマートコントラクトに送信。売り手に転送され取引は完了した。

 ここまでは通常のNFT売買だったのだが、奇妙なことに、売り手は1時間半後にイーサリアムを買い手に返金、作品自体も元のウォレットアドレスに送り返されるという事態が発生。そして、「CryptoPunk#9998」は250,000ETH(10億ドル以上)で再び市場に売りに出されたのだ。

 CryptoPunksの作成者であるLarva Labsは、Twitterで「誰かがこの作品をローンで購入し、同じ取り引きで資金を返済した」と発表。つまりこれは、現代版の仮装取引である、というのだ。

 従来、仮装売買は、買い手と売り手が共謀して市場を欺いた場合、実際のリスクを負うことなく証券の価値を人為的に膨らませたときに発生する。買い手と売り手は同じ資産を行き来させるが、公に報告されるのは最初の取り引きのみ。2回目の交換は、証券と資金が同じタイミングで元の所有者に返還される。

 NFTもこれと同じパターンだが、新しいウォレットに売られたアセットは、実際のところ元の所有者によって管理されている。

 仮装売買は、NFTの価格を歪め、誤った需要を生み出す重要な問題だ。

 ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスによると、2021年には110の仮装売買業者が890万ドルを荒稼ぎしたという。この調査はイーサリアムとラップドイーサリアム経由の取引のみを対象としているため、おそらく実数はこれよりはるかに多いだろう。ブルームバーグによると、2022年4月の時点で、仮装取引の売り上げは180億ドルにのぼる、もしくはNFT市場のLooksRareの取引量全体の95%を占めているとされる。

 アメリカの証券取引法(SEA)と商品取引所法(CEA)によると、連邦法下において仮装取引は違法である。内国歳入庁(IRS)には、仮装売買を管理する独自の規則すら存在する。ただし、NFTはまだ新しい資産のため、明確な「仮装」が発生した場合に立法局や規制当局が強制立ち入りすることは困難なのだ。

 もし仮装売買の被害者になった場合、残念だが資金を取り戻すのはほぼ不可能だろう。潜在的なリスクを正確に特定または予測することができるツールやメカニズムが業界には存在しないし、トランザクションに関わった者たちの故意を証明することが困難であるからだ。そのため、NFT仮装取引への規制と監視が強く求められているし、最終的には、メカニズム、トークンエコノミー、妥当性、および使用をよりよく理解するため、そして商品取引所法と証券取引法をNFT資産にも適用するために、NFT領域への法的な介入が必要になる。

 しかし、法の制定を指をくわえて待っている間にも、NFT取り引きは盛んに行われている。NFT詐欺に巻き込まれないための現時点での最善の策は、自己防衛につきる。具体的には以下の2つだ。

1.ブロックチェーンと送金先を確認する
2.コミュニティに、プロジェクトに精通しているかどうか、および投資の経験について問い合わせる

 NFT投資で何万ドルも無駄にする前に、NFTがどのように売りに出されそして宣伝されているかを理解し、仮装取引を見極めることが重要だ。

(画像=Twitterより)

(Source)
https://nftnow.com/guides/scams-explained-what-is-an-nft-wash-trade-is-it-a-crime/

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