ギルザレンIII世がみせる「VTuberシーンへの強い愛情」 “配信をしない”活動形態の謎に迫る

ギルザレンIII世の「強いVTuber愛」

 2020年までの段階で、自身の配信は合計で33回、巡回と称したコラボ配信やゲスト出演は37回。2021年には自分以外のバーチャルタレントとコラボ配信・ゲスト出演した配信が29回ほどあるものの、自身のチャンネルで配信した回数はたった1度だけ。

 2021年で唯一配信した「ケンゾク10万人記念ゲリラ背信、あるいは秋のハロウィン特集」と名付けられた配信も、文野環のチャンネルでギルザレンIII世のYouTubeチャンネル登録者10万人耐久配信(?)が行なわれたことに端を発したものであり、動画自体も現在は限定公開状態で公開されている。その時間はわずか22分。

 しかもこのアーカイブ動画は限定公開状態となっており、普段通りにYouTubeチャンネルを見てしまうと見つけることができない。つまり、彼のチャンネルをサっと見て「ギルザレンIII世は2021年中に自分の配信を一度もしていなかった」と言われても不思議ではないのだ。

 合計すれば、3年間で自身の配信は34回、その他のゲスト出演は66回。積極的に活動をしない彼の配信スタイル、だがひとたび出れば心つかんでしまう話術とテンション、それらが相まって「ギルザレン配信しろ」という期待の声になっていったのだ。

 そんな彼も、2022年現在快調なペース(?)で配信をしているのはご存知であろうか。この原稿を執筆している5月上旬の時点で、すでにコラボ配信やゲスト出演を5回、加えて1年以上ぶりとなる通常配信「漂流、あるいはテスト配信」を3月1日に行なったのは記憶に新しいところだ。

 平日の深夜に突然スタートしたこの配信、その内容が彼らしい非常に凝った内容ということもあり、深夜帯ながら2万人前後の同時視聴者数を記録。その知らせに同僚ライバーたちやにじさんじ以外のバーチャルタレントも含めて大盛り上がりとなった。

 2020年7月13日に配信された「ギルザレンIII世アニバーサリークルーズ_航海1095日目(最終夜)」を筆頭に、以前からソロ配信やコラボ配信時の会話からは「別次元に何人もの自分がいる」「航海(または漂流)している」「別次元・別時間軸の記憶と間違える」といった言葉ややり取りが何度となく出てきていた。

 この配信では海の上を漂流しているギルザレンが助けを求め、未来や過去の時間軸、時には言語や種族などを飛びこえ、さまざまなにじさんじメンバーやお友達たちに連絡したり、釣りをしながらも声をかけてみるという内容となった。

 体裁としては「凸待ち」「逆凸」配信なのだが、某ゲームのトランシーバー画面をパロディした二者の通信画面、サバイバルゲーム『RAFT』をうまく利用して航海や漂流といった表現をしつつ、立ち絵やゲーム進行に合わせアドリブで進行していったのだ。

 冒頭に登場した月ノ美兎・黛灰・物述有栖・不破湊が、それぞれ過去にギルザレンIII世と関わった際の内容や無人島に関わる内容と繋げて受け答えしたり、当時NIJISANJI IDに属していたBonnivier PranajaやNIJISANJI ENに所属するPetra Gurinらが英語と日本語を交互に話して笑わせようとしたりとトークそのものも面白く、多彩かつ考察を呼ぶ内容は間違いなく満点だった。

 それに加えてどこか場当たり的でグダグダ、2022年とは思えないほどチープな絵面、しかしそんなローテクっぽさがクセになる、オリジナリティある配信を見せてくれた。

 以下の4つの動画は、月ノ美兎・黛灰・物述有栖・不破湊が会話したときに繋がってしまった世界を捉えたものである。

月ノ美兎・爆誕スペシャル【ヨーロッパ企画実況・寿命公開・凸待ち】
【にじオネア/にじリーグ】にじクイ解説やってるくらいならすぐ解けますよね?w【黛灰 / にじさんじ】
【鍋パは不滅】大量に用意してしまったお鍋を食すオンライン鍋パ【物述有栖】【にじさんじ】
【ガチ】無人島サバイバル生活ってマジ?力を合わせて生き延びろ!

 以前からこういった手の込んだ内容を配信しつづけてきた彼には、先にも述べたように独自設定が多く盛り込まれていたわけだが、ここまで大きく他のメンバーを介入させつつ、しっかりとアジャストした上でより濃い内容となったあたり、にじさんじメンバーの高いタレント力も感じられるところだ。

 コロナ禍以降に爆増した若いにじさんじファンの方々にとっては、ギルザレンIII世の姿を数少ないコラボ配信ででしか知ることができず、さまざまな場面で「おまえは配信をしろ」というネタで伝播していく存在。まさに「伝説のドラキュラ」として伝聞のなかで広がっていたような、極めて難しいレアキャラクターとして受け取られていったのだ。

 先ほど挙げた「漂流、あるいはテスト配信」でのコメント欄を見れば、「彼の配信を初めて見た」という類の声に溢れているのがよくわかるだろう。

 人里離れた山奥の豪華な城のなか、深い夜闇に住まうというドラキュラであるギルザレンIII世に、多くの配信を求めるのは酷であろう。多次元に存在するギルザレンIII世のうち誰か一人でも、いまこの苦境にいる僕らのために配信をしてくれないだろうか。そんなチャンスを少しでも願いながら、彼の活躍を祈りたいと思う。

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