アプリ版『ポケトーク』は普及するのか ハードウェアとの違いから考える

アプリ版『ポケトーク』は普及するのか

 携帯型翻訳機として、トップシェアを誇る『ポケトーク』のスマホアプリ版が間もなく登場する。iOSとAndroidに両対応しており、料金は1週間120円から。月単位だと360円、年単位だと3600円。どちらも、iOSやAndroid標準の課金機能を利用して支払う仕組みだ。ボタンをタップして話すと設定した言語に翻訳される仕組みは、これまでの『ポケトーク』と共通している。

『ポケトーク』のアプリ版が登場する。元々は4月25日にサービスが開始される予定だったが、現時点では延期になっている

 『ポケトーク』は、翻訳機に特化したデバイスとして人気を博し、シリーズ全体の累計販売台数は2021年9月時点で90万台を突破している。競合の翻訳機も多い中、シェアは90%以上の月もあり、高い支持を集めていることがうかがえる。ボタンを押すだけとシンプルで簡単に利用でき、複数の翻訳エンジンを用いた翻訳精度の高さが人気の秘密だ。

 元々はソースネクストが開発、販売を手掛けていたが、2022年2月には『ポケトーク』の事業を分社化。新会社では海外での販売も強化しており、米国での販売状況は2021年と比べて「非常に好調で、4.8倍に拡大している」(ポケトーク 代表取締役社長兼CEO 松田憲幸氏)。『ポケトーク』のスマホアプリ化も、こうした拡大戦略の一環だ。松田氏は「アプリだと、一瞬でグローバルでグロー(成長)することができる」と語る。

米国での販売が大きく伸び始めている。こうした状況を受け、ソースネクストは『ポケトーク』を分社化。アプリを手掛けたのも、拡大戦略の一環だ

 ハードウェアの場合、「それぞれの国の認証などがあり、法律も1つ1つの国ごとにあるため、スピードがどうしても遅れる」(松田氏)。これに対し、スマホは現状、iOSとAndroidの2大プラットフォームに集約が進んでおり、どちらのOSもグローバルで展開しているため、ストアにアプリを公開するだけで展開が可能となる。ハードウェアをゼロから販売していくより、展開の速度は高まるのだ。

 一方で、サブスクリプション型のビジネスモデルとはいえ、料金は1年で3600円と、ハードウェアの『ポケトーク』と比べると安価だ。ハードウェアの『ポケトーク』は、もっとも安価な『ポケトークW』でも9900円、ハイエンドモデルの『ポケトークS』になると3万2780円かかり、ハードウェアが伴うぶん、アプリよりも割高になる。ハードウェア型の『ポケトーク』と市場でバッティングしてしまう可能性はないのか。

料金は年間3600円で、ハードウェアの『ポケトーク』を購入するより割安感がある

 これに対し、松田氏は「共存すると思っている」との認識を示す。まず、既存の『ポケトーク』には、専用ハードウェアならではの翻訳に特化した性能のよさがある。「マイクが非常によく、うるさいところでも使える。スピーカーの音量も大きい」(松田氏)というのが、その1つだ。スマホでも音量を大きくできる端末はあるが、アプリを利用して相手に音を聞かせるときだけ音量を上げるのは煩雑になる。あらかじめ設定した専用機であれば、それを取り出すだけでいい。

 さまざまな用途で使われるスマホの場合、「立ち上げてロックを解除し、アプリを立ち上げるというかなりのステップが必要になるが、『ポケトーク』は(取り出すだけで)瞬時に対応できる」(松田氏)のも、専用機を別に持っておくことのメリットだ。スマホで録音ができるようになったのにも関わらず、依然としてボイスレコーダーが使われているのに近い役割分担があると言えるだろう。

 ハードウェアの『ポケトーク』については、法人での利用も多いが、これも「特化している利点」(松田氏)だという。店舗などで利用する場合、スタッフ個人のスマホに『ポケトーク』をインストールするのは難しい。一方で、スマホを購入しようとすると、本体価格に通信料が乗り、『ポケトーク』を購入するよりも高くついてしまう。アプリ登場後も、スマホと翻訳機が分かれていることのメリットは少なくないというわけだ。

気軽に導入できる『ポケトーク』アプリだが、スマホは汎用機ゆえに、ロックを解除したりアプリを選択したりと、利用し始めるまでの手間がかかる

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