SixTONESのパフォーマンス映像も撮影 先進的なバーチャルプロダクションを生み出す「ソニーPCL 清澄白河BASE」の最新技術に迫る

SixTONESの映像も手がけた最新スタジオ

 2021年2月1日、ソニーPCLが先端技術による新たな表現手法や体験を生み出し発信する場として「清澄白河BASE」をオープンした。その中に構えられたバーチャルプロダクションスタジオは体育館を改築したもので、ソニーの「Crystal LED Bシリーズ」を使用した巨大かつ高画質な曲面状のLEDディスプレイを常設。日本の新たなクリエイティブ拠点として注目が集まっている。

 3月1日にYouTubeで公開された、ジャニーズ事務所所属の6人組グループSixTONESの新曲「共鳴」のパフォーマンス映像は、一般公開された映像としては初めて清澄白河BASEで撮影された作品のひとつだ。幾何学的なオブジェクトが点在するバーチャル空間や広大な宇宙空間を表現することは、これまでもグリーンバックや作りこまれたセットを用いて行われてきたことだが、3DCGを用いた表現のリアルさは段違い。ディスプレイの前面に設置された鏡面のステージや砂、岩などの美術セットとシームレスな没入感の高い空間づくりに成功している。

SixTONES – 共鳴 [PLAYLIST -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.4]

 こういった表現を成しえているのは、曲面状の巨大なLEDディスプレイだけでなく、高解像・広色域に対応したデジタルシネマカメラ「VIENICE」や1008×1008ピクセルの天井LEDパネルも備えているからこそ。天井LEDパネルや天井には赤外線反射マーカーが配置されており、カメラ上部に置かれたセンサーがそれを読み取ることで、どれくらいの高さや傾きで撮影しているかを把握。前後左右の位置においては、内蔵されたジャイロセンサーが機能し、位置を認識するシステムになっている。これにより、カメラワークと連動した3DCG表現が可能となっているのだ。

 バーチャルプロダクションスタジオの魅力は、他にもある。1つは、ロケに行かなくていいということだ。「共鳴」のようなバーチャル空間や宇宙空間はもちろん、3DCGを用いれば荒れた廃墟や清々しい自然、ありきたりな部屋の一室まで表現可能だ。屋外ロケであれば天気を考慮してスケジュールを組まねばならないが、「清澄白河BASE」ならその必要はないし、3DCGの映像を変えるだけで場面転換できるので場所の移動も必要ない。移動コストや時間を大幅に減らすことが可能なのだ。

 「だったら、グリーンバックでいいじゃないか」という声も聞こえてきそうだが、3DCGには「演者がリアルタイムで映像を確認できる」という利点もある。「飛んでくる岩を見てください」という指示が出たとき、小道具を用いて視線を揃えることなく、全員が一斉に同じ方向を見つめることが可能なのだ。

 また、LEDパネル自体が発光するため、3DCGと連動した照明演出もできる。上下左右からの当てられてる感ある光ではなく、窓の外から降り注ぐような自然光を再現できるのだ。それでいて、清澄白河BASEで使われているCrystal LEDは触っても熱くないという優れもの。故障の際も1パーツごとに交換でき、不測の事態でも大きく撮影を止めることはない。

 そして、胸をときめかせるのは“テクノロジーの進化と共に成長していく施設”である点だ。映し出される映像は3DCGなので、モデリングさえ組めてしまえばどこまでも細かく表現できるわけだが、その情景をバーチャルプロダクションとしてリアルタイムで動かすとなると話は別。綺麗に作りこみすぎるとプログラムが重くて動かなくなってしまうため、最適なデータの軽さが求められる。つまり、CPUの進化により処理速度が上がれば、より作りこんだ3DCG映像を用いることができるのだ。同様にLEDも進化に応じて、より繊細な色彩表現が可能になるだろう。

 これだけバーチャルプロダクションに優れた設備でありながら、施設名にバーチャルプロダクションといれず“清澄白河BASE”と銘打ったのには“先端技術とクリエイティブが触れ合って新しい表現手法を追求し、想像を超えるコンテンツと感動を与える拠点”という意味がこめられているからだそう。「ここからいろんな映像表現を発信していきたいと思い、“発信拠点”という意味での“BASE”という名前をつけております。バーチャルプロダクションは、数ある技術のなかのひとつなんです」そう話してくれたのは、ソニーPCL株式会社ビジュアルソリューションビジネス部 統括部長の小林大輔氏だ。

「“清澄白河BASE”は、ソニーグループ全体で取り組んでいるのも大きな特徴のひとつ。バーチャルプロダクションの撮影や収録はもちろん、ネットワークに乗せたライブ配信も行っております。HALL+という映像の遅延が少なくセキュリティーの高いネットワークソリューションもあるので、株主総会のような秘匿性の高いイベントで使っていただくこともできます。

 さらには、LEDディスプレイを大きなスクリーンとして捉え、オフラインのイベントや発表会に使っていただくことも可能です。高精細なLEDがこの大きさであるのは、日本国内で清澄白河BASEしかないので。モーターショーやエキシビションのシミュレーションの場としても機能していけたらと思っています」

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