振り返れば色々な“初めて”があったーー25年を迎えた破壊を極めし名作3Dアクション『ブラストドーザー』
1996年に発売された任天堂の次世代機『NINTENDO64』は発売間もないころ、なかなか次の新作が発売されない深刻なタイトル不足に陥っていた。
同年秋からはサードメーカーからの新作も発売されるようになって状況は改善。任天堂も年末にかけて、多数の新作を供給することを予告していた。しかし、最終的に1996年内に発売された新作の総数はわずか4本。翌1997年を迎えても、次なる新作はすぐ発売とはならず、再びタイトル不足の状況を迎えてしまった。
だが、同年から任天堂のパートナーとして参加したある会社の活躍により、NINTENDO64は勢いを増していくことになる。
その会社とは「レア社」。2022年現在はマイクロソフト傘下のイギリスに拠点を置くゲーム開発会社だ。1994年に発売され、国内外を含め爆発的なヒットを記録したスーパーファミコン用ゲームソフト『スーパードンキーコング』シリーズを開発した会社でもある。
そんなレア社初のNINTENDO64向け新作タイトルとして発売されたのが『ブラストドーザー』。本日3月21日は『ブラストドーザー』の発売から丁度、25年を迎える日である。
西暦20XX年、化学物質「FK540」を運搬中だった無人トレーラーが故障。制御不能に陥る。この化学物質は僅かな衝撃が加わるだけで、周辺一帯が消し炭になるほどの大爆発を引き起こす危険極まりない特性を持っていた。
不要となった建造物の大規模な破壊作業を行うプロフェッショナル集団「ブラストドーザー」は、トレーラーの衝突事故並びに壊滅的大爆発を防ぐため、進路上全ての障害を除去し、最終目標の安全な爆破処理を成功させる危険なミッションへと挑む。
いま振り返っても、刺激的な設定が異彩を放つ本作だが、ゲームの中身も一言で表しがたい独自性を持っていた。また、当時の本作にまつわる情勢を見てみると、様々な“初めて”があったことにも気付かされるのだ。
暴走トレーラーのため、破壊の限りを尽くす新感覚3Dアクション
『ブラストドーザー』はどんなゲームか。簡潔に言えば無人トレーラーの衝突事故回避のため、その進路を阻む高層ビルを始めとする建造物を様々なメカを駆使して壊しまくるゲームである。ジャンルは公式に3Dアクションゲームと定義されている。
特徴はその豪快すぎるゲームルール。壊滅的な大爆発を防ぐ大義名分の下、街を壊し尽くすというのは当時に限らず、現在の視点から見ても相当ぶっ飛んだものになっている。さながら(街づくりゲームの代名詞にちなんで)“逆シムシティ”だ。本作はアクションゲームなので、遊びの方向性も何もかも別物ではあるが。
ただ、なすがまま進路上の建造物を壊し尽くせばよい訳ではなく、種類によっては特定の角度から攻撃しないと効率よく壊せなかったり、その順番を考えないと接触の危機を招くなど、結構頭を使うことが多い。そんなパズルゲーム的な手ごわさが秘められているのも特徴のひとつになっている。
無人トレーラーという名の可視化された制限時間もまた然りだ。アクションゲームにおける制限時間(時間切れ)のシステムをこうも分かりやすく、目に見える脅威で描いているのは、なかなか興味深い試みである。
それもあって、時間が迫ってきた時の緊迫感と恐怖感も桁違いで、プレイヤーを大いに動揺させる。なぜ残り時間はあるのか?という疑問にも高い説得力で回答していて、そのような環境下で任務に挑まなければならない必然性を演出している。
その意味でも『ブラストドーザー』というゲームは、アクションゲームでは暗黙の存在に等しい制限時間に明確な存在意義を与え、欠かせないものとして位置付けている稀有なタイトルのひとつ、と言えるだろう。
また、トレーラーの進路確保に終始しない、入り組んだ構成も特徴として挙げておきたい。本編はステージクリア形式で進行し、最終的に進路が完全確保されればステージクリアになる。
しかし、それでお終いとはならない。トレーラーが通過した街(ステージ)は、件の化学物質「FK540」によって全土が汚染されており、すでに人が日常生活を送るのが困難な環境になってしまっている。そのため、進路確保後はクリーンな土地にするための任務に従事する形になる。
具体的には残された建造物の全破壊、汚染を中和する装置「RDU」100個の起動に挑むというものだ。これらを成し遂げることで、そのステージは完全な形でのクリアになる。いわゆる2部構成になっているのである。それも最初はトレーラーが近づきつつある危機的な状況下、次はその脅威が無くなって自由に動ける状況下と毛色の異なるもの。“一粒で二度美味しい”を地で行く作りが大変ユニークだ。
なお、これは「メインステージ」と称された本編に該当するステージの話。それとは外れた「ミニステージ」ではトレーラーが登場しない環境下で特殊な任務に挑戦する、ミニゲーム風の構成に終始している。
ただ、その内容は制限時間内に指定の建造物を破壊するといったものから、レースゲームのようなタイムトライアルなどバリエーション豊か。
なかにはビリヤード、どこからどう見ても『パッ●マン』そのものな別ゲームに挑戦するものもあったりと、本編以上にやりたい放題になっているのも大きな見所だ。
ほかに破壊に当たって操縦するメカも10種類以上、車両タイプ(その派生のクルマタイプ)とロボットタイプに分類されていて、その性能も2門のミサイルランチャーを装備、宙返りによる攻撃が主体といった奇想天外なもの揃いでインパクト抜群。
クリア時の成績に応じて金、銀、銅の3段階に応じたメダルが得られるやり込み要素もあり、一通り極めつくした後にはその最上位「プラチナ」に挑むチャレンジが解禁されたりと、コアなゲーム好きをも唖然とさせる(むしろ絶望させる?)サービスも満載である。
こうした特徴を改めて見直すと、本作はレア社初のNINTENDO64タイトルという側面がありながらも、非常に野心的な試みが満載の作品だったように思える。また、国内においてレア社の知名度を高めた『スーパードンキーコング』シリーズは、悪く言うと『スーパーマリオブラザーズ』の派生的なゲームデザインが際立つアクションゲームだった。
対して本作は基本的なルールから世界観までオリジナル。
元々、レア社は『スーパードンキーコング』の前にも『バトルトード』を始め、多くのオリジナルタイトルを出しているが、任天堂とタッグを組んだ作品でこうも野心的な作品を出してきたのには、NINTENDO64に対してレア社が並々ならぬ熱意を持っていたのかを伺わせる。本作の後、『バンジョーとカズーイの大冒険』を始めとする新作タイトルを積極的に供給し続けたことについても、同じことが言えると同時に納得させられる次第だ。