世界大会のキャスター陣も参加する『VALORANT』カスタムマッチ「エルデ」 その意外な正体と可能性に迫る

 このところ世界中で人気を博している5対5の爆破ルールFPS『VALORANT』。そのeスポーツ大会『VALORANT Champions Tour(以下、VCT)』のキャスター陣としておなじみのyukishiroとOooDaが先日、そろって「エルデ」のカスタムマッチに参加するという告知ツイートをした。ところが参加者10名のうち、彼らを除く8名は『VALORANT』界隈では見慣れない名前ばかり。

 それもそのはず。実はほかの参加者は、人狼ゲーム『Among Us』のストリーマーなのである。『Among Us』とは、宇宙船内にいる10名前後の乗組員の陣営が密かに振り分けられ、それぞれの勝利条件を目指していくゲームだ。行動ターンでインポスター陣営はタスク妨害と暗殺を実行し、議論ターンでクルーメイト陣営が犯人を推理し疑わしき者を追放、先に目的を達成した陣営の勝利となる。

 『Among Us』のストリーマー界隈では「二次会」と称して夜中にさまざまなゲームを配信しており、そこで『VALORANT』をやるために集まった初期メンバーが中野あるま、なつめ先生、ハッチャン、さんしあ、先端恐怖症の5名であった。せっかくなのでカッコいいチーム名をという先端恐怖症の提案で、「エルデ」と命名。ドイツ語で「地球」という意味なのだとか。

 当初から「エルデ」は交代制のチームとして始動し、参加できない人の代わりとしてアベレージ、のすけ、卯月うゆが次々に合流。このころから、同じシルバー帯で熱量の高い中野あるま、さんしあ、のすけの3名で朝までランクマッチを回す機会が増えていった。レベル差がありすぎると一緒にランクマッチができない『VALORANT』のゲームシステム上、いち早くプラチナ帯に昇格したなつめ先生とランクマッチをしたいという思いも彼らを後押ししたようだ。

 そんな「エルデ」が急展開を迎えたのが、年の瀬も押し迫った12月末。いつものように中野あるまとさんしあの2名でランクマッチ配信を始めると、なんとyukishiroがコメント欄に登場。もともとyukishiroは趣味として『Among Us』配信を楽しんでおり、中野あるまのチャンネル視聴者だったのだそう。当然「エルデ」のことも把握しており、ひそかに見守り続けてきたのである。その後ハッチャン、しょぼすけ、ねろちゃん、ポン酢野郎の合流が決定した時点であと4人集めようということになり、しょぼすけと親交のあるyukishiroが急きょ参加することに。さらに参加者はうめけん、エレジー、maŸUkoにまで広がった。

 そして冒頭で触れたとおり、年明けにはついにOooDaまでもが参加メンバーに名を連ねたのである。これにより、少しずつ「エルデ」の存在が知られるようになってきた。彼らのレート帯はそれほど高くないものの、持ち前のトーク力を発揮しつつ楽しくプレイすることで『VALORANT』の魅力を最大限に伝えている。yukishiro、OooDaの豊富な知識から繰り出される指示に耳を傾け、憧れの人たちとプレイできる喜びを素直に表現する姿は、ファンであれば微笑ましく、ゲーマーであれば共感できる部分も多いだろう。

 プロeスポーツ大会である『VCT』もストリーマーカスタムの「エルデ」も、『VALORANT』配信という意味ではひとくくりに見なされるかもしれないが、ガチプレイ勢が楽しむeスポーツ界隈とエンジョイ勢が楽しむストリーマー界隈は、視聴者層の棲み分けがされている。裾野を広げたいeスポーツ業界にとって、これは大きなチャンスなのではないだろうか。というのも、『Among Us』ストリーマーの熱心な視聴者層は、ゲーマーではない女性の割合がかなり多い。そして彼女たちがいま、「推し」のために一生懸命『VALORANT』を覚えるという実に興味深い現象が起こっているのだ。

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