倍速視聴ではドラマは楽しめない? 変化する動画コンテンツの問題点を専門家に聞いた

倍速視聴ではドラマは楽しめない?

 ここ最近、映画やドラマなどの動画を倍速で視聴する人は多く、効率的に動画を楽しむ人が増えている。また、効率的と言えば、TikTokを始めとした短時間の動画も人気だ。短時間ではあるものの刺激的かつスピーティーな展開は、コスパが重視される昨今の風潮にマッチしているのかもしれない。

 ただ、倍速だったり短時間だったりの動画視聴は、動画それ自体を楽しめているのだろうか。なにより、BGMや間を楽しめないため、感受性を養えない可能性も想定される。昨今の動画の視聴方法の問題点について、玉川大学脳科学研究所教授の松田哲也氏に話を聞いた。

映像作品は倍速視聴では“楽しめない”

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した“倍速視聴”に関する調査(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000219.000004729.html)
マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した“倍速視聴”に関する調査(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000219.000004729.html)

――まず勉強系やハウツー系の動画を倍速視聴する人は多いですが、記憶の定着にはどのように影響しますか?

松田哲也氏(以下、松田):学習系の動画は、何か新しい知識を身に付けることが主目的ですよね。その学びたい分野の知識が一切ない状態で視聴すると、倍速で聞いてしまうとサッパリ理解できません。難易度が高くない動画、すでにそれなりに知識を有している分野の動画であれば、ある程度予想できるため倍速視聴でも定着します。自分の定着度を理解したうえで速度調整すれば、効率的に学ぶことができるのではないでしょうか。

玉川大学脳科学研究所教授の松田哲也氏
玉川大学脳科学研究所教授の松田哲也氏

――映画やドラマを倍速で視聴した際の記憶の定着度はどうでしょうか?

松田:人間の認知機能は意識している対象においては上手く処理できるのですが、それ以外にものは処理できないどころか認識さえしていないことが珍しくありません。ですので、1.5倍速で視聴した場合、1.0倍速よりも認識できるものが少なく、記憶にも多くのことを定着しにくく、作品全体の細部を含めた内容を後日思い出すことはより難しくなると思います。

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した“倍速視聴”に関する調査(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000219.000004729.html)
マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した“倍速視聴”に関する調査(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000219.000004729.html)

――裏を返せば「遅くすると定着しやすい」と?

松田:映像作品には最適なリズムがあり、リズムが悪いと違和感を生じさせます。そのため、速度を遅くすればより記憶に定着しやすくなる、とは言えません。

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した“倍速視聴”に関する調査(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000219.000004729.html)
マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した“倍速視聴”に関する調査(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000219.000004729.html)

――やはり1.0倍速が最適なのですね。

松田:制作側は1.0倍速を前提として、登場人物の表情や間といった言葉に表れない心の駆け引きも表現しています。当然作品の楽しみ方は自由ではありますが、倍速視聴ではそういった非言語情報がわかりにくくなり、制作側の意図した工夫や仕掛けを味わうことは難しくなると思います。加えて、目の動きやセリフの間といった非言語情報を見ることにより、登場人物の心境に寄り添ったり共感が感じられなくなる可能性があります。

着々とコミュ障化する未来

――対人関係スキルが低下する可能性がある……と?

松田:はい。映像作品はフィクションではありますが、登場人物間のコミュニケーションを無意識に参考にし、自身の日常的なスキルの1つに昇華させます。ただ倍速視聴では流れているストーリーを追うだけになりやすく、感情認知だけでなくコミュニケーション能力を知らず知らずのうちに低下させる可能性も少なくないです。

――倍速視聴の傾向が強くなると、人間関係がギスギスするかもしれませんね。

松田:十分想定されます。まず人間関係が希薄化していますし、コミュニケーションのオンライン化も進みました。さらには、仮想空間内の社会が増えており、アバターを作って間接的に他者とコミュニケーションする未来が着々と整備されています。対面で交流する機会は減り、映像作品を倍速視聴すると非言語情報を認識することもなくなり、人間関係がこれまでとは変わってくる可能性もあります。



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