早すぎた次世代機進出。『ロックマン8 メタルヒーローズ』発売25周年で考える、シリーズ展開のいま

早すぎた次世代機進出『ロックマン8』25周年

間を置き、予告をするようになった後発作品。そして……

 このように『ロックマン8』の性急な判断は、以降のシリーズでどう活かされたのか。まずひとつに、前述に名を出したスーパーファミコン向けの新作『ロックマン&フォルテ』の誕生である。新しいゲーム機を自分の自由で買えず、『ロックマン8』が遊べなかったプレイヤー、特に低年齢層をターゲットに事実上の“お詫び”も兼ねて制作されるに至った。

 その後、『ロックマン8』の経験が活かされたと思しきものでは、前述の新シリーズ『ロックマンX』がある。具体的には2000年発売の『ロックマンX5』、2001年発売の『ロックマンX6』の2作。

 いずれもPlayStationの後継機、PlayStation 2の存在がチラつく時期に発売された新作だった。『ロックマンX6』に関しては2001年なので、すでにPlayStation 2が発売済みである。しかし、2作はともにPlayStation向けに発売。PlayStation 2へと進出したのは2003年、『ロックマンX7』でのことで、比較的ゲーム機本体の普及が進んだ時期でもあった。

 『ロックマン8』の時を思うと、適切なタイミングでの進出だったと言えるだろう。件の『ロックマンX7』が、2Dから3Dへと大きな刷新を試みた作品のため、制作に時間がかかったのもある意味では救いと言えたかもしれない。

 ちなみに『ロックマンX5』の開発に携わったディレクターは、2000年当時の『東京ゲームショウ』に出展された同作を見た子どもの来場者から「『これ何で出るの? PS1? よっしゃあ!』と、喜んでくれた姿が忘れられないんですよね」と、いまはなき公式サイトのお手紙紹介ページでコメントしている。その出来事が、続く『ロックマンX6』がPlayStationで発売される判断に繋がったのを思えば、良い判断だったと言えるだろう。

 『ロックマンX』以外では、2021年に発売20周年を迎えた『バトルネットワーク ロックマンエグゼ』もある意味、『ロックマン8』の経験が活かされたロックマンと言えるかもしれない。

 当時すでに展開されていた『ロックマン』、『ロックマンX』、そして『ロックマンDASH』直接の続編ではなく、あらゆる設定を一新した完全新作であるのに加え、同作が発売された携帯ゲーム機、ゲームボーイアドバンス本体との同時発売タイトルでもあった。

 特に後者の件は大きく、ゲームボーイアドバンスの発売元たる任天堂側からも情報が早々と発信されたほか、ゲーム機本体価格がそこまで高くないこともあり、比較的購入しやすい雰囲気も醸し出されていた。20本以上もの同時発売タイトルの中で、もっとも異彩を放つ完全新作というインパクトもあり、エグゼがその後、どのような成功を収めたのかは語るまでもない。

 また、エグゼも後継作『流星のロックマン』に移行する際には、前年度に発売された新作で明確に完結を宣言し、直前に発売された『ロックマンエグゼ5DS ツインリーダーズ』で、近々ニンテンドーDSでの本格展開を示唆するなど、唐突な進出にならないよう伏線を貼るようにしていた。時期も2006年、ニンテンドーDS本体の普及も相応に進んだころであったので、おおむね良いタイミングだったのは間違いないだろう。

 こうした複数の作品の例から、『ロックマン8』での反省はいい形で活かされた……と思いきや。実は活かされず、同じ轍を踏んだ作品もある。

 2005年と2006年に携帯ゲーム機、PlayStation Portable(PSP)向けに発売された『イレギュラーハンターX』と『ロックマンロックマン』だ。いずれもPSP本体普及が本格化する前に出たあまり、本来届くべきファンへと満足に届かず埋もれてしまった。

 特に『ロックマンX』第1作のリブート作品『イレギュラーハンターX』は、本編シリーズの新作『ロックマンX8』の発売から約9カ月後だったのもあって殊更に早い。『ロックマン8』以上である。

 ただし、『ロックマン8』のように直接的な続編ではないので、比較する対象としては際どいところだ。とはいえ、同作は非常に手の込んだ出来の良作だっただけに、急な進行で本来届くべきファンに届かなかったのは惜しまれる限りである。

 そして、同じ轍を踏みそうだったのがいまや幻に消えた『ロックマンDASH3(ロックマンDASH3 PROJECT)』だ。ニンテンドー3DSでの発売はかなり早い段階で報じられたものの、2万5千円と高額だった当時の3DS本体、過去の『ロックマンDASH 鋼の冒険心』、『ロックマンDASH2 エピソード2 大いなる遺産』の移植版が前述のPSPで発売済みで、過去のストーリーを振り返りやすい環境が整っていた状況を思えば、若干の性急さと判断への違和感は否めなかった。

 結局、同作は開発中止が確定したことで懸念は消えたが、いまなお過去作が揃っている環境での展開を考えられなかったのかというのが筆者の率直な思いだ。前作『ロックマンDASH2』が明らかに続きそうな終わり方をしていただけに尚更である。

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