YouTubeが日本に与える経済的、文化的、社会的影響とは? パリーグTVやポニーキャニオンの事例も
11月11日、YouTubeの日本における経済的、文化的、社会的影響の結果が発表された。英国の独立系コンサルタント会社・Oxford Economicsによる調査「YouTube Impact Report」によるもので、昨年2020年は日本のGDP(国内総生産)で2390億円の貢献、フルタイム雇用で75970人を創出している。
本調査では影響の全体像を把握するための定性的・定量的な分析において、ユーザー4000人超、クリエイター1080人以上、事業者500以上を対象として匿名調査を3回実施。そこで得られたデータと公式統計を用いて、YouTubeのクリエイターエコシステムの経済的な影響を、雇用やGDPへの貢献度の観点から分析した結果となっている。
経済効果は被雇用者や国内サプライチェーン全体に波及
YouTubeクリエイターはYouTubeを介して直接生み出される収入(広告収入やライセンス料など)から収益を得ることができるが、その収益でクリエイターとして生計を立てている「クリエイティブ起業家」、メディア企業、音楽業界などを問わず、その経済効果はクリエイターの収入だけに留まるものではない。
なお本件においてクリエイティブ起業家とは、YouTubeからの直接収入またはYouTubeを起点に動画以外の分野で収入を得ている者、自身のチャンネル運営をサポートする正規社員を雇用している者、自身のチャンネル登録者数が1万人以上いる者と定義されている。
DIYや料理動画を制作するYouTubeクリエイターであれば、撮影のために材料や備品などを調達し、ほかにも撮影機材・音響機材の購入や、編集・制作スタッフの雇用も必要になってくる。このようにクリエイターは国内企業からYouTube動画の制作に必要なものを購入しているため、その経済効果は広範囲に波及することになる。さらにはサプライチェーンにおけるクリエイターや被雇用者による消費が、経済や地域社会にも影響を与えていく。
またYouTubeは、クリエイターがYouTube以外でも収益を上げるきっかけを創出している。クリエイティブ起業家であればブランドとの提携や、YouTubeでの活躍をもとに自身のグッズを販売できたりする。こうした「プラットフォーム外」での収益によってクリエイター自身、被雇用者、国内サプライチェーン全体に経済効果がもたらされていく。
クリエイターだけでなく中小企業にとっても重要なツールに
クリエイティブ起業家はYouTubeが提供する誰しもが発信できる柔軟性と機会を活用してプラットフォーム内外で商業的成功を収めており、調査結果にもこのようにクリエイターの存在が明確に反映されている。
10万人以上の登録者を持つチャンネルが5500以上と前年比で45%増加し(YouTube調べ)、クリエイティブ起業家の69%が「YouTubeがビジネスの目標達成にプラスの影響を与えた」、同じく64%が「YouTubeによって、自分のニーズに合った方法で仕事をする機会が得られた」と考えている。2021年6月時点では、日本国内で100万円以上の収益を上げているYouTubeチャンネル数が前年同期比で50%増加した(YouTube調べ)。
企業は顧客とつながり、競争力を高めるためにYouTubeを活用している。自社のチャンネルを通じた戦略的な広告出稿や、YouTubeでビジネスに役立つ情報の収集などで売り上げを伸ばした。YouTubeチャンネルを持つ中小企業の51%が「ビジネスの成長を促進するうえで、YouTubeが戦略的パートナーになっている」、同じく58%が「YouTubeは顧客に関する理解を深めることに役立った」と考えている。また54%が「YouTubeで簡単に情報にアクセスできることで、従業員の生産性が向上した」、52%が「YouTubeは世界中の新しい視聴者にリーチすることに役立っている」と考えている。