「hazama」がTikTok経由でバイラルヒット。4naが語る“一夜で変わった人生” 「音楽中心の生活になって、本当に幸せ」

4naが語る“TikTokで変わった人生”

 TikTokによって人生が一変した表現者たちに話を聞き、彼らのルーツやブレイク前後の秘話、改めて振り返る“バズ”の思い出や、TikTokというプラットフォームに思うことを記録していく連載「それは、TikTokからはじまる。」。

 第二回では、今年4月、上野シュンの楽曲「hazama」をカバーした音源がTikTok経由でバイラルヒットしたことで、瞬く間にスポットライトを浴びることになったシンガーソングライター・4naへインタビュー。昨年11月にYouTubeに投稿された「hazama」は、TikTokからのバブルを受けて急速に再生回数を伸ばし、3月にはデジタル配信リリースも決定。リスナーによる共感共有の度合いの高さを示す「Spotify バイラルトップ50」でも、1位までの距離を急速に縮め、トップへと咲き誇った。

 もともとは歌い手としてキャリアをスタートさせ、昨年12月にオリジナル曲「Fickle Girl」でアーティストデビューした4naに、音楽遍歴、アーティストデビューへ至った経緯や「hazama」のブレイクまでの軌跡などを聞いた。

「歌をネットで発信したい」ボカロカバーを始めたきっかけ

ーーボカロ曲のカバーをネットに投稿する「歌い手」としての活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

4na:もともと歌うことはずっと好きで。コピーバンドでボーカルを担当していたこともありました。自宅に閉じこもっていたちょうど4年前、歌を歌いたい、発信したいと思ったことが、音楽活動を始めたきっかけでした。今でこそTikTokのおかげで歌ってみたという言葉は歌をメインに活動していない有名人さんでも芸人さんでも気軽に歌えるカテゴリーになっていると思いますが当時は、「歌ってみた=ボカロ」というイメージがやっぱり強くて。小さいころから音楽は幅広く好きでしたが、歌をネットで発信してみたいと思ったときに、まずはボカロ曲を歌いはじめました。

ーーちなみにコピーバンドではどういったバンドの音楽を演奏されていたんですか?

4na:そのときはクリープハイプさんとかONE OK ROCKさんのような邦楽ロックバンドのカバーをするのが多かったです。いまの僕はウィスパーボイスを主に使って歌っていますが、実はオルタナティブのJ-ROCKやUKロックを通ってきているんです。僕が音楽を好きになったきっかけもELLEGARDENさんだったりしますから。

ーー最近4naさんのYouTubeアカウントに投稿される楽曲がHIP HOPやR&Bへと寄ってきたのは、様々なジャンルが好きなことも影響しているんですか?

4na:好きでずっと聴いているのがLo-fi Hip Hopだったり、R&Bだったというのもありますし、アーティスト活動を始めることにしたとき、自分なりにいろいろ研究・分析して「これから来る音楽はR&B系だろう」と予測したことも大きいです。それと、歌を何曲も歌っているなかで、自分の声質の一番映える歌い方を考えたときに、声を張るよりもR&Bテイストな歌い方のほうがいいのかなって。

――いろいろと分析を重ねた結果だったんですね。昨年の12月に「Fickle Girl」でアーティストデビューされた理由についても教えてください。

4na:もともと自分が好きだったアーティストさんたちの多くが、今では日本の代表的なアーティストになっています。僕はメロディー重視で曲を聴きますが、自分で「ヒットする前の彼らのメロディーを自分がいいって思っていたのなら、自分が作ったメロディーはもっといいでしょ!」という見解に至って、アーティストデビューの一歩を踏み出しました。コロナ禍でも、どんどん輝いてきてるアーティストさんを見るほどに、自分のやりたかったことが浮き彫りになりました。よく考えたら彼らは当時から、聴いたら絶対好きになる音楽を作り上げてきていたんですよ。結局ビッグアーティストになるかならないかは、世間に知られるか知られないかだけなんだなって気付いて、一歩を踏み出しました。

「hazama」は「強いて言うなら“載せた部分”が一番良かった」

ーーそして、ご自身のTikTokアカウントに投稿された「hazama」の音源が、TikTokでのバズを生み、4naさんの名前を世に知らしめるきっかけとなりました。当時のことを教えてもらえますか。

4na:今年の1月にTikTokのアカウントを作ってから、1個目の投稿が「Fickle Girl」で、「hazama」は2個目の投稿だったんですよ。TikTokは自分なりに分析したうえで始めて、「Fickle Girl」は、当時2,000〜3,000いいねくらい反響があったんです。次の「hazama」も最初の段階でそのくらいの数字だったので、分析通りだなと一日放置したら次の日にはすごいことになりまして……「これは予想外だ!」と驚きました(笑)。

ーーどのようにTikTokを分析されてから動画を投稿したんですか?

4na:TikTokを利用してる方々のほとんどは常に新しいものを求めていると思うんです。なので、新しいアーティスト・曲であることはちゃんと伝えつつ、あまり情報を載せすぎないことが大事なのかなと。載せすぎると満足しちゃう気がして、謎を残すためにあえて曲名とか自分の名前とかも載せずに、「今のうちに見つけて下さい。」と一言だけ書いて投稿しました。

ーーたしかに謎めいていると気になる、というのは人間の性ですね。改めて振り返ってみて、「hazama」がバズった要因は何だと思いますか。

4na:上野さんの楽曲が素晴らしいのはもちろんのこと、強いて言うなら“載せた部分”が一番良かったのかなと思います。〈終わりにしようぜ〉って歌詞が始まるところから無音になって〈愛されたいんだ〉という歌詞につながるところが、今のネットシーンにぴったりはまる。動画を投稿する前は全然考えてなかったんですが、いま考えたらにあのフレーズはTikTokの使い方にぴったりハマってたなと。上野さんもそういう目的で作ってないでしょうし、そう考えるといろんな偶然で今があるなと思います。

ーーそのなかでも印象的な使われ方をした動画はありますか?

4na:「hazama」が使われていた動画は、無音になったところで推してる俳優さんだったり声優さんのセリフが入って、そのままその人のムービーが流れるという使い方が多かったんですが、そのあとに弾き語り動画もたくさん投稿いただいて。なかでも自分が当時からずっと聴いていたアーティストの方々ーーりりあ。さんなどが歌ってくださっている動画を見たときは、本当に衝撃的でしたね。

ーーバイラルヒット後、生活は大きく変わりましたか。

4na:当時いち視聴者として音楽を聴かせていただいていた方々と関わったりして、本当に世界が変わったなと思いました。アーティストさんや裏で音楽を支えてくださる方々だったり、いろいろな方と音楽で関わる機会が本当に増えて、音楽中心の生活になれているのが、いまは本当に幸せです。

 あと、夢だったものが目標になったのはすごい大きいですね。自分がずっと考えていた想像とか妄想が、今は目標になって。その目標のために動いているという状況が、少し前の自分だったら本当に考えられないです。「hazama」をリリースしたのは3月ですけど、もう半年経つんだなと考えたら、時間が経つのがめちゃくちゃ早いなと。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる