歌広場淳の続・格ゲーマーは死ななきゃ安い
歌広場淳が聞く、“ひとり格ゲーメディア”HiFight氏の信念 「格ゲーマーが持つストーリーを伝えたい」
「“ストーリー”が見えづらくなっている」(HiFight)
歌広場淳:たぶん、HiFightさんほど格ゲーの試合を観ている人はほとんどいないですよね。そのなかで、いまのeスポーツシーンが、HiFightさんからどう見えているのか、ということも気になります。
HiFight:コロナ禍以降、オフラインの大会は残念ながらほとんど止まってしまいましたが、一方で、オンラインの大会が急激に増えました。毎日のように世界のどこかで、それなりの規模の大会が開催されているので、正直、数が多すぎてとても追いかけきれなくなっていて(笑)。そのなかで、“ストーリー”が見えづらくなっている気がしますね。プレイヤーの様子が見えず、結果だけを見ても「いま誰が一番強いのか」というのもわかりにくいというか。
歌広場淳:ああ、なるほど! 確かにこれまでの大きな大会だと、プレイヤーが勝ち上がるごとにフォーカスが当たり、過去の経歴やよく対戦している仲間、最近の取り組みなどのサブテキストがたくさん得られたのに、それがないから「今日の大会で勝った人」に見えてしまうというか。
HiFight:そうなんです。例えば、2018〜2019年の『ドラゴンボール ファイターズ』だったら、アメリカのsonic fox選手、日本のGO1選手が圧倒的に強くて、その二人がEVOの決勝で戦う……というストーリーが明確でしたよね。またオフラインで対戦ができるようになって、そういう物語が動き出してくれたらいいなと。
歌広場淳:確かに、「この二人が戦うんだ!」って、ドキドキすることが減ってしまっているかもしれないですね。やっぱり、その人がどんな表情、どんな気持ちで戦いに臨んでいるのか、ということがリアルタイムでわからない分、ストーリーが見えづらくて。ただ、だとしても試合自体は素晴らしくて、HiFightさんはいまも名シーンをクリップして伝えてくれていますよね。僕も何度かクリップしてもらったことがあって、めちゃくちゃうれしかったんですが、切り取るシーンはどんな基準で選んでいますか?
HiFight:カッコいいな、盛り上がるな、と思う瞬間が多いですね。歌広場さんの場合は、試合の内容はもちろん、その後のリアクションが素晴らしくて。喜びとか、悲しみとか、感情が爆発しているシーンというのは、誰が見ても共感できると思うんです。例えば、2016年の「第6回TOPANGAチャリティーカップ」で、若手でチームを組んだ竹内ジョン選手(チームメンバーはナウマン、立川、大谷、ずんぽい)が、ふ〜ど選手やハイタニ選手など、トッププロを倒して叫んでいるシーンがとても印象に残っていて、こういう熱気を伝えたい、と思うんです。感情が出るプレイヤーは、応援したくなってしまいますよね。ひとつの試合に勝った、負けたではなく、その人自身を追いかけたくなるというか。
歌広場ケン@junjunmjgirly pic.twitter.com/RbPccmrZJR
— HiFight(ハイファイト) (@HiFightTH) March 10, 2019
歌広場淳:なるほど。HiFightさんのクリップは、プレイヤーへの応援の意味もあるんですね。
HiFight:そうです。もちろん、大会の結果だけを知りたい、という人もたくさんいると思いますが、プレイヤーのことを知って、応援する気持ちがあれば、観戦がもっと面白くなるので。そのきっかけが作れればいいなと思います。もっというと、2017年のEVOでときど選手が優勝するドラマチックな瞬間を見て、『ストV』を始めたという人も少なくないですから、いわゆる“動画勢”の方が格ゲーを始めるきっかけになってくれればうれしいなと思っています。
歌広場淳:素晴らしい。ちなみに、HiFightさんはどれくらい、格ゲーに時間を使っているんですか? ちゃんと生活できているか心配になってしまいます(笑)。
HiFight:プレイ時間はあまり取れていないのですが、大会などはほぼ毎日チェックしていますね。ただ、常に画面に張り付いて見ているわけではなく、あとから他の視聴者さんがハイライトにしているところを中心に確認したり、仕事をしながらケータイで音声だけ聴いていて、盛り上がっているタイミングで見てみたり、ということも多いです。「6つくらいのモニターを使って常にあらゆる大会をチェックしている」みたいに言われることもありますが、使っている画面はひとつですよ(笑)。
歌広場淳:はははは(笑)。そんなHiFightさんが、いま注目している大会や配信者についても教えてください。
HiFight:北米の配信団体「Team Spooky」が毎週、さまざまなタイトルのオンライン大会を開いて盛り上がっているので、よく見ていますね。アメリカの強豪プレイヤーが多く参戦しているのですが、『ストV』だったらなぜかiDomが毎回、優勝していて。
歌広場淳:iDom選手とPunk選手の試合、クリップを見ましたが盛り上がっていましたね。僕はほとんど日本の配信しか見ないので、二人の間にあるストーリーはよくわからないのですが、知らない間にHiFight兄のクリップで学ばせてもらっている、ということに気付きました(笑)。それと、HiFightさんは格ゲーのクリップだけでなく、地上戦だけで戦う対戦格闘ゲームアプリ「FOOTSIES(フッツィー)」も無料で共有されていますね。なんで作ろうと思ったんですか?
HiFight:最初はただの趣味でしたね。仕事の関係で、もともとゲームのプログラミングができるので、練習で格ゲーを作ってみようと。ひとりで制作したので、モノクロのドット絵で、「格ゲーを一番シンプルにしたらこうなる」というゲームになりました(笑)。当時、「Punkの中足ヒット確認がすごい」と話題になっていた時期で、ヒット確認と差し返しだけで戦うと面白いんじゃないか、というのがコンセプトのベースだったんですけど、実際に楽しかったので公開して、ちょこちょこアップデートも入れています。
歌広場淳:めちゃくちゃ完成されたゲームで、ひとりで作られたというのは驚きました……! 今日はありがとうございました。これからもたくさん、クリップしてもらえるようないい内容の試合ができるように頑張るので、これからも格闘ゲームコミュニティを盛り上げるために、一緒に頑張りましょう!
HiFight:はい、頑張ります!
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