歌広場淳が語る「格ゲーマー人狼」参戦&無双の裏側 「雑魚死する可能性も大いにあると思っていた」

歌広場淳が語る「格ゲーマー人狼」の裏側

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は人気配信イベント「格ゲーマー人狼」に出場し、他を寄せ付けない活躍でMVPを獲得した歌広場に、参戦に至る経緯から、他のプレイヤーを震え上がらせた思考のプロセスまで、じっくり話を聞いた。アーカイブ動画と合わせて楽しんでいただきたい。(編集部)

“人”の面白さが際立つ「格ゲーマー人狼」

 このゴールデンウィーク、格闘ゲーマーによる人狼ゲームイベント「格ゲーマー人狼」に参戦しました。

 以前、この連載でも紹介しましたが、「格ゲーマー人狼」は格闘ゲームプレイヤーで人気配信者のこくじんさんが主催しているもので、いまや格闘ゲームファン/人狼ゲームファンの垣根を超えた人気コンテンツになっています。一般的には禁止されることが多い、「メタ考察」(※プレイヤー同士の関係性などにより、その人にしか知り得ないメタな情報で推理すること)や「パワハラ」(※先輩・後輩などの関係性を使って圧をかけること。もちろんネタ)など大体のことが認められており、人狼の上級者が集まる企画と比較すればもちろん、プレイ自体のレベルは高くないのですが、“人”の面白さが際立っていて、回を重ねるごとに人気を広げています。

 念のために簡単に説明しておくと、「人狼ゲーム」は「村人陣営」と「人狼陣営」に分かれて戦う、議論によるゲーム。村人は昼の議論により人狼を暴いて処刑し、人狼はうまく隠れて夜に村人を一人ひとり襲撃していくことで、それぞれの陣営の勝利を目指します。人狼を見破ることができる「占い師」、処刑したのが村人か人狼かを判別できる「霊媒師」、人狼の襲撃から村人を護ることができる「騎士」、人間だけれど人狼陣営に味方する「狂人(多重人格)」など、能力者やプレイ人数はレギュレーションにより変わり、戦略やセオリーも様々です。

 さて、僕はもともと、各業界から上級者が集まる「アルティメット人狼」という大型イベントに出演させていただくなど、人狼ゲームをやり込んできました。もちろん理屈だけで戦えるものではないのですが、基本的には論理的に進めるゲームであり、上級者はセオリーも共有しています。けれど、格ゲーマー人狼はまったく違う。動画で少し予習したところ、まるで“違う星のゲーム”という感じで、人狼をやり込んだプレイヤーが入っても、必ずしも無双できるものではないんです。例えるなら、無人島にお金をいっぱい持っていっても使えないでしょ、という感じ(笑)。自分が参戦しても活躍できるかどうかは大いに疑問でしたが、とにかく出たい理由がありました。

 きっかけは、格ゲーマー人狼の舞台になっている配信プラットフォーム「Mildom」にチャンネルを開設したこと。ぜひMildomのご担当者方との対談記事(https://realsound.jp/tech/2021/04/post-752413.html)も読んでいただきたいのですが、新しい世界に入ったからには、その世界の“王”たちのもとで勉強させていただく必要があると考えていて、僕が特にすごいと思う配信者が、前出のこくじんさんだった。僕は格ゲーマーだし、人狼ゲームもできるんだから、「格ゲーマー人狼」には出られるはずだ!ということで、ご本人に「機会があれば出させてください」とお願いしていたんです。それが、ゴールデンウィークといういいタイミングで実現した、というのが参戦の経緯でした。

 正直、出演できることが決まった段階で、僕の目標の半分は達成されていました。人狼ゲームは議論するゲームですから、参加するからには「普段とは違う自分のお利口な部分を見せたい」と思うし、どうしても爪痕を残したくなります。でも、前述の通り格ゲーマー人狼は絶対に自分の思い通りにはならないということはわかっていたので、前日の配信でも「僕の参戦を楽しみにしてくれていても、何もできず雑魚死する可能性がある」ことをファンの皆さんにきちんと伝えていました(笑)。

初日“全役職言い当て”の理由

 そうして迎えた当日。格ゲーマー人狼は1回の放送で大体3戦行います。プレイヤーは9人で、人狼が2人、役職は占い師、霊媒師、騎士があり、その他はただの村人。そして僕は初戦、村人陣営にとって非常に重要な「占い師」という役職を引き、なぜか初日に処刑されました。格闘ゲーマーに「ゲストだから」という忖度はありません。

【#格ゲーマー人狼 36】え?真占いでなんで嘘つくの!?歌広場淳が魅せたひとつ上の戦術とそれをすべて無に帰すスラム街【1戦目】(2021/4/30)

 しかし、人狼ゲーム自体が“そういうもの”でもあります。僕は「アルティメット人狼」の初戦でも、鳴り物入りのゲストとしてご紹介いただきながら、『ドラゴンクエスト』の生みの親である堀井雄二さんとともに、初日の処刑候補になりました。結局、処刑まではされませんでしたが、そういう死線を越えてきた経験があるからこそ、凹んだりせず、「自分が思ったことを全部言ってやる!」と思い切ることができた。

 詳しくはアーカイブ動画を見ていただきたいのですが、僕は人狼から霊媒師、騎士まですべての役職を言い当て、処刑されてもその後の村をコントロールし、村人陣営の勝利に貢献することができました。「騎士」という役職は自分を護ることができないため人狼の標的になりやすく、基本的に隠れていた方がいいため、本当なら言い当てる必要がないのですが、そこは「なめんなよ」ということです(笑)。初日に占い師候補から処刑するというのは普通あり得ないし、グレー(役職を名乗っておらず、白黒の情報がないプレイヤー)から吊っていこう、という議論時間に交わした約束もなかったことになり、想定していたこととは言えあまりに理不尽な死だったので、「ふんわり死ぬのだけはやめよう」と。

 そもそも僕は人狼ゲームにおいて、特に村人陣営を引いたときには「人狼陣営を断定する」ことを意識しています。それが当たっていれば大きなリターンがあるし、外していれば「ミスリードする村人」として人狼に襲撃されづらい。格ゲーマー人狼においては、「常に正解を言わなければいけない」という強い意識が働いているように思ったのですが、必ずしもそんなことはないんです。僕が「騎士」を断定したことについても、それほど自信があったわけではなく、当たっていれば僕の意見の信頼度が上がるし、外れていても人狼の襲撃先がブレるかもしれず、そんなに損はないでしょう。

“3CO”から真占い師を見抜けたのはなぜか

 そして2戦目。僕は「騎士」を引きました。格ゲーマー人狼においてはなぜか、初日に騎士が襲撃される確率がおよそ3割と異常に高く、僕も役職を引いた瞬間に死を覚悟しました(笑)。

【#格ゲーマー人狼 36】真狼狼炸裂!? 期待高まる展開とセオリー無視の最強占い師!【2戦目】(2021/4/30

 振り返ると、2戦目は初日、「占い師」を名乗るプレイヤーが3人出てきました。僕はその中から真の占い師を断定できたのですが、当日はきちんと説明できなかったので、思考のプロセスをお伝えしておきます。

 本物の占い師は1人なので、当然、偽物が2人紛れています。手は同時に挙がりましたが、カミングアウトの順番は、立川選手、大須晶さん、どぐら選手。占い師は初日を迎える前に、お告げで「人狼ではない人(人狼陣営の狂人も含む)」を1人、ランダムで教えてもらうのですが、どぐら選手が大須さんを「人狼ではない」と言いました。つまり、どぐら選手が本物なら、占い師の内訳はとてもクリアで、大須さんは嘘つきの人間=狂人となり、自然ともう1人の立川選手が人狼になる。しかし、どぐら選手に質問を投げかけたところ、その説明がスムーズにできなかったので、とても怪しくなった。

 そして、立川選手は3人の占い師候補が出てきたなかで、「取り下げる人はいないか。自分は下げない」としきりに言っていました。占い師が3人出てくると、3分の2が人狼陣営なのだから全員順番に処刑しよう、という「ローラー」と呼ばれる展開になることが多く、そうなると基本的に人狼陣営が不利なので、そこで「誰か降りろ」とも取れる発言をした立川選手も怪しい。立川選手は初日のお告げで僕のことを「人狼ではない」と正しいことを言っていたのですが、構わず処刑するように村を誘導しました。

 そして、処刑されることになった立川選手の遺言。そこで、「歌(広場)さんが怪しい」という趣旨の発言がありました。立川選手は僕を「人間」と言っていたわけで、つまり「狂人」の可能性を指摘したわけですが、これは占い師候補の内訳が「真・狂・狼」ではなく「真・狼・狼」だと知っているからこそ出た人狼の発言だろうと思った。そこで、大須さんが真占い師、どぐら選手と立川選手が人狼、という予測を立て、実際に当たっていました。

 さて、3人が同一の役職を名乗った場合、「真・狂・狼」という内訳であることが多くなります。これは「真・狼・狼」だと、ローラーが完遂されたときに人狼陣営の敗北が確定するためリスクが高いからですが、村人陣営は人狼をすべて排除することが勝利条件であるため、占い師候補から人狼が処刑できた時点で、ローラーを止めよう、という方向にシフトすることがあります。その場合には人狼が放置されて生き残ることになり、とても強い。

 ということで、「真・狼・狼」の陣形を作った人狼陣営は、片方が処刑されたとき、翌日に霊媒師が「黒(人狼だった)」という結果を残してほしい。だから、本来優先的に襲撃する必要がある霊媒師を生かそうとするんです。

 この試合では、初日にナウマン選手が霊媒師であることがほぼ確定しており、騎士の僕はそこに護衛を入れるのが妥当な判断です。しかし上記のように、僕は「真・狼・狼」盤面であることを確信しており、その場合に霊媒師は絶対に襲撃されないと考えたため、あえて人狼だと考えているどぐら選手を護衛しました。騎士は2日連続同じ人を護ることができず、つまりここで“捨て護衛”しておくことで、翌日誰でも護れるように状況を整えておいた、ということです。

 結果的に僕が襲撃され、思ったとおり2日連続で初日に死ぬことになったのですが、思考はきちんと伝えられたので、勝利を確信した上での死でした。

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