フォートナイト「Ariana Grandeリフトツアー」に見た、バーチャルライブの現在地と今後の進化の可能性

フォートナイト、アリアナのバーチャル公演を見た

 人気オンラインゲーム『Fortnite』が日本時間8月7日~9日にかけて、ゲーム内にて世界的ポップスターのAriana Grandeをフィーチャーしたバーチャルライブイベント「リフトツアー フィーチャリング ARIANA GRANDE」を開催した。

 『Fortnite』といえば、言わずと知れた世界中に多くのファンを持つ、人気オンラインゲームだが、昨年は、ゲーム内で映画の上映イベントを行うなど、ここ最近はゲームタイトルとしてだけでなく、メタバース的な展開に注目が集まっているバーチャルプラットフォームだ。

 今回のような音楽イベントでいえば、『Fortnite』は、昨年人気ラッパーのTravis Scottをフィーチャーしたバーチャルライブイベント「Astronomical」を皮切りにそれ以降もDiplo、J Balvinや米津玄師といった国内外の人気アーティストフィーチャーしたバーチャルライブを実施し、コロナ禍中のバーチャルライブの可能性を切り開いてきた。そんな『Fortnite』にとって、「リフトツアー フィーチャリング ARIANA GRANDE」は、世界中で1230万人にも及ぶ視聴者を集めた「Astronomical」以来となる大掛かりなバーチャルライブとなった。

 「Astronomical」は、3DCGによって再現された巨大なTravis Scottのアバターが、『Fortnite』の世界を舞台に動き回りながらパフォーマンスを見せたほか、水中や宇宙空間など時空を超えて様々なステージが展開されるなど、およそ現実には体験不可能なバーチャルライブならではの映像表現が示された。コロナ禍においては、感染拡大防止のために世界中の有名音楽フェスやライブイベントが中止や延期を余儀なくされたこともあり、少なくとも昨年から今夏にかけては世界的ビッグアーティストによるバーチャルライブは度々実施されてきた。その中で「Astronomical」が先行して示した”現実には体験不可能なバーチャルライブならではの表現”が、それ以降のバーチャルライブにおいてはひとつの大きな指針になっていたことは、ここ1年ほどの見てきた経験から強く感じている。

Rift Tour featuring Ariana Grande (Full Event Video)

 その意味ではコロナ禍以降のバーチャルライブのパイオニアと言える『Fortnite』だが、今回のリフトツアーは、その自ら切り開いたバーチャルライブの発展の歴史をうまく総括した内容だったように思う。

 例えば、今回のリフトツアーでは、巨大なAriana Grandeのアバターが「7 rings」、「positions」など人気曲6曲を宇宙や空中、またはオーロラが輝く氷の大地で披露する様子が見られた。これは今やバーチャルライブで定番化していると言っても過言ではない先述の”現実には体験不可能なバーチャルライブならではの表現”にあたる部分だ。

 また、Juice WRLD & Marshmelloの「Come & Go」など、Ariana Grande以外のアーティストの曲が使われたバーチャルライブ冒頭3曲分は、カラフルな液体の雲の中をスノーボードで移動する、巨大な花が生茂る大地を跳ねながら移動する、ゲームのボスであるストームキングを飛行機に乗って倒すといったミニゲームが用意されていた。こういったゲーム要素は今年1月と2月に2度に渡り、実施された競合ゲームタイトルの『荒野行動』でも取り入れられていた、ゲームならではの要素を取り入れたライブ演出だ。

 そして、「The Way」が披露された神殿のような場所でプレイヤーのアバターが階段を登ったり、降りたりしながらパフォーマンスを楽しめるシーンではワープポイントが用意されていた。この演出も今年4月に行われたPorter Robinsonの『Secret Sky』や7月に行われたRADWIMPSの『SHIN SEKAI “nowhere”』でも見られたもので、ここ最近のバーチャルライブではよく見られるようになった演出だと言える。

 このように振り返るとリフトツアーは、バーチャルライブの演出という面では正直なところ、目新しさはあまり見当たらなかった。しかし、その一方で見方を変えれば、”現時点でのバーチャルライブがどのような表現や体験が可能か”という、バーチャルライブの現在地が改めて示めされたものだった。

 また、今回のリフトツアーは、「Astronomical」以降のForniteのバーチャルライブではおなじみだったバーチャル空間の中に設置されたモニター越しにアーティストの実写パフォーマンスを見るというものではなく、Ariana Grandeのアバター始め、ライブ表現を再びフルバーチャルに振り切って見せたところにこれからのバーチャルライブの可能性のひとつを見たように思える。

 現在、欧米ではワクチン接種が進んだことにより、リアルライブやフェスの復活が著しい。もちろん、こういった多くの人が集まるイベント開催には復活させている国の中にも感染再拡大の懸念はある。しかし、実際に今夏だけでも数多くのリアルイベントがすでに実施されている、もしくは今後の開催が発表されていることから、少なからず欧米の音楽ファンにとってはバーチャルライブの強みでもあった、コロナ禍だからこそ際立っていたリアルイベントの代替性はあまり重要ではなくなったような印象がある。

 『Fortnite』は今年6月にイギリスの若手ロックバンド・Easy Lifeをフィーチャーした際、ロンドンに実在する巨大ライブ会場「The O2」を再現したバーチャルライブイベントを実施している。このようなリアルの世界に実在する場所をバーチャル空間に再現することは、ミラーワールド的なアプローチだと言える。しかし、音楽ファンの心情としてはコロナ禍での自粛の反動もあって、単純にリアルの代替的な立ち位置というだけでは、実際に自分がアクセスできる場所でリアルイベントが行われているのであれば、どうしてもそちらを優先する気持ちが勝るだろう。



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