フォートナイト公判の最終日が終了ーーAppleやや優勢か?

フォートナイト公判の最終日が終了ーーAppleやや優勢か?

 人気バトロワゲーム『フォートナイト』の開発元Epic GamesがAppleのApp Store運営体制が独占禁止法に違反しているとして訴えた「フォートナイト公判」は、ひとつの節目を迎えた。3週間にわたった公判では、アプリ市場やゲーム業界に関するさまざまな裏事情が明らかになった。

4,500ページを超える証言

 Apple専門ニュースメディア『9to5Mac』は24日、フォートナイト公判最終日の様子を報じた。Epicのティム・スウィーニーCEOとAppleのティム・クックCEOも証言台に立った公判の最終日は、イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事がEpicとAppleの弁護士にさまざまな質問をした。

 公判最終日を締めくくるにあたって、ロジャーズ判事は以下の3つの論点を強調した。

・アプリストアはApp Storeだけではなく、Google Play Storeのような同種のものが存在する。この論点は、App Storeがアプリの独占市場であることを否定する解釈につながる可能性がある。

・今回の訴訟の類似判例には、アメリカン・エクスプレスカードが設けたアンチステアリング規則の支持が指摘できる。この規則は、アメリカン・エクスプレスカード加盟店が顧客に対して同カードより手数料が安いカードを利用するように誘導することを禁じる、というものである。アメリカ最高裁判所は、この規則を支持する判決をくだした。この判決とフォートナイト公判の類似性は、アメリカン・エクスプレスカードの立場がApple、加盟店がEpicと捉えられる。類似判例は、Appleの合法性を支持している。

・公判に勝利すれば、Epicは「数兆ドル規模の企業」に変貌できる「裏の動機」が指摘できる。しかし、裁判所はEpicの便宜を図るようなことはしない、とロジャーズ判事は語った。

 以上の論点から見ると、フォートナイト公判はAppleがやや優勢のうちに最終日を迎えたような印象を受ける。もっとも今回の公判で得られた証言は4.500ページを超えるので、これらを精査して判決を下すには時間がかかる。ロジャーズ判事は判決をくだす期日を明言しなかったが、今年の夏以降になると見られている。

明らかになった裏事情

 フォートナイト公判で行われた証言から、アプリ市場やゲーム業界に関する裏事情が明らかになった。そんな裏事情をBBCは25日付の記事で報じている。

 公判ではApp Storeによるゲームアプリ市場独占の有無が争われた都合上、ゲームの定義が議論された。こうした議論の一環として、「フォートナイトはゲームなのか」についても論じられた。Epicの見解によれば、フォートナイトはゲームではなく「メタバース」である、とのこと。この見解には、訴訟をゲームに限らずアプリ市場全体に拡大したいEpicの思惑がうかがえる。

 Epicがいわゆる「Apple税」として2017年1月から2020年10月までに2億3,700万ドル(約260億円)を支払っていたことも明らかになった。もっとも、Epicは2020年にゲームプラットフォーム手数料として、Microsoftに2億4,500万ドル(約270億円)、Sonyに4億5,100万ドル(約490億円)を支払っていた。EpicがMicrosoftやSonyを訴えないのは、この2社はゲーム機本体の販売で赤字を出しているので、ゲーム開発者から手数料を徴収する正当性があると考えているからだ。

 そのほかには、ティム・スウィーニーCEOはApple主導によるApp Storeのプロモーションに反対していたこと、App Storeの収益の大部分がゲームアプリから得られていることなどが判明した。

判決後の行方は?

 ニューヨークタイムズ紙がフォートナイト公判について報じた24日付の記事では、判決後のEpicとAppleの動向が予想されている。

 フォートナイト公判が開かれたカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所がくだす判決がどのようなものであっても、EpicとAppleは双方とも控訴裁判所に控訴できる。控訴された場合、控訴裁判所の3人の判事が地方裁判所の判決を審議して新たな判決をくだす。控訴裁判所の判決に対して、さらに最高裁判所に上告できる。

 Epic勝訴の場合、Appleは控訴すると同時に地方裁判所の判決を一時無効にするように努めると考えられる。この場合における地方裁判所判決の一時無効期間は控訴裁判所の判決がくだされるまでと予想されるので、控訴裁判所も改めてEpic勝訴の判決をくだしても、App Storeの是正措置が行われるのは数年先になるかも知れない。

 Appleが勝訴した場合は、独占禁止法違反で同社が訴えられているほかの事案で有利な立場になると見られる。そして、Appleが独占禁止法違反で訴えられるようなことはなくなるだろう。

 ちなみにフォートナイト公判を担当しているロジャーズ判事はテック業界関連の訴訟を裁いた経験が豊富なことで知られており、その経験のなかにはAppleが訴えられた事案もある。この過去の事案では、Apple勝訴の判決をくだした。

 以上の予想からわかるように、フォートナイト公判の判決が夏以降にくだされたとしても、控訴されて審議が長期化する可能性が高い。それゆえ、フォートナイト公判の行方は、今後も折にふれて話題になるだろう。

トップ画像出典:9to5Mac「Apple vs. Epic court officially adjourns — here’s what comes next」より画像を引用

■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi

〈Source〉
https://9to5mac.com/2021/05/24/apple-vs-epic-adjourns/
https://www.bbc.com/news/technology-57232824
https://www.nytimes.com/2021/05/24/technology/apple-epic-antitrust-trial.html

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