「若いインフルエンサーに『なにそれ全然わかんない』って言うポジションは楽だけど……」 大久保佳代子が“TikTokで積極的に発信する理由”

大久保佳代子がTikTokで発信する理由

 土曜日17時半よりTBSラジオで放送中の『TikTok Presents 大久保佳代子とトレンド遊び』が話題を呼んでいる。オアシズの大久保佳代子が、大好きな韓国の大ヒットドラマ『愛の不時着』に出演しているヒョンビンの目に留まるTikTok動画を作るコーナー「ヒョンビンに届けっ!」から生まれた“加工前・後”の動画がバズを起こし、さまざまなメディアに取り上げられたことは記憶に新しい。

 そこで、リアルサウンドテックでは大久保へインタビューを実施。TikTokに対する第一印象とイメージの変化、芸人としてTikTokに向き合うスタンスなどを伺うなかで、2020年代の“お笑いのやり方”にまで話は発展していった。

「なんだこれ」という気持ちと「良いな、楽しそうだな」という気持ちが半分ずつ

――番組が始まるまで、大久保さんはTikTokにどういった印象を持っていましたか。

大久保:もちろん存在自体は知っていましたが、若者が少ない秒数で踊っているというイメージで。数年前に森三中の黒沢(かずこ)さんが楽屋で「こんなのがあるらしいです。みなさんで撮りましょう」と一緒に「全力〇〇」を一回やったきりでした。面白いなと思ったものの、私はTwitterもやっているし、おそらくもうやることはないんだろう、と思っていたら、まさかのオファーに驚きました。

――あらためてTikTokに触れてみて、その時の第一印象からどう変化しましたか?

大久保:こんなにいろんなジャンルの動画が挙がっているとは思わなかったので、みなさんに教えていただいて色んな動画をみています。私が好きなワンちゃんやネコちゃんの動物動画から、カップル動画や人の人生を切り取った重めのものまで、なんでもアリなんですよね。ジャンルが広いからこそ、自分が好きなものを見続けちゃうんだろうなと。

――見るのと撮るのはまた違う感覚だと思うんですが、実際に撮影してみてどうでしたか。

大久保:思いつきでパッとやってもバズらないのはわかっているので、このトレンドに乗っかったほうがいいというアドバイスをもらいながら投稿しています。最初にバズった動画も、アップしてから1~2日はそこまで再生数が伸びなくて、スタッフさんと軽い反省会をしたんですけど、そこから数時間後にすごく再生されて。だからこそ、あまり自分では狙ってバズった感がないんです。ギャンブル要素というか、これがバズるんだ、これが意外と全然引っかからないんだというのがわからないからこそ面白い、というのもありますね。とはいえ、バズらないのが3本くらい続いちゃうと、モチベーションが下がりそうだけど(笑)。

――番組やTikTokを通して、10~20代のトレンドを知ることも増えたと思います。最近大久保さんが特に気になったトレンドはありますか?

大久保:基本的にあんまり好奇心とか冒険心が少ない人間なので、新しいことに触れようとあんまりしてないんですが、電動で動く緑のキックボードみたいなやつが気になりました。うちのパコ美ちゃん(大久保の愛犬)を散歩していても、横を通り過ぎて行くのをよく見ますし、すごく吠えて追いかけようとするので。あとは「肉巻きおにぎり」が最近また流行っていると聞いて驚きました。私のなかでは極楽とんぼの山本さんで止まってるから(笑)。

 自分から見ているトレンドの動画、って何だろうと思ったんですけど、カップル動画はよく見ているかも。ただイチャイチャしている動画を「なんだこれ」という気持ちと「良いな、楽しそうだな」という気持ちが半分ずつの状態で覗いています。

――ちなみにカップル動画で一番衝撃を受けたのは?

大久保:一番印象に残ってるのは、夜中に急に「デートに行こう」って男の子が女の子を誘って、女の子が「えーいまー? 無理だよもうーだって化粧してないし」と断って、でも最終的にはいいよと言う、というそれだけのやりとりなんですけど。どういう感情で見ればいいかわからなくなって、逆に正解を求めて何回も見ちゃう自分に驚きました。

――フリとオチがきいてるものだと思ったら、ヌルっと終わっていって、それがクセになると。

大久保:そうそう。私たちはテレビのバラエティしか知らないので、フったら落とすのが当たり前だし、一連の流れのなかで、何かしら人の感情を動かさなきゃいけないと思ってるんですけど、TikTokはそうではないという。

――すぐに続きや他の動画が見れるからこそ、そういう仕組みになっているというのは、テレビと比較すると面白そうですね。

大久保:TikTokの世界では有名なカップルだと思うけど、テレビではもちろん知られていない人たちの私生活の一部が、世の中の人に支持を受けて沢山見られてるというのは、多少慣れた今の私からしてもやっぱり不思議ですよ。

――他方で、最近のテレビバラエティでは、ここ数年でTikTok経由でブレイクしたインフルエンサーさんが出演することも増えています。大久保さんはその流れをどう見ていますか?

大久保:いわゆるトークバラエティもクイズ番組でも、何組かゲストを入れるとなったときに「インフルエンサー枠」があることが増えてきましたし。たとえば『踊る!さんま御殿!!』にYouTuberの方やInstagram・TikTokで何十万人フォロワーがいますという方が出てきたとして、ちゃんとしてる人もいるし、なんか自由な振舞いをする人もいるわけです。私たちは未知なるものを見るような目で、その方たちとさんまさんをやり取りにヒヤヒヤしながら「どう絡んでいくのが正解なんだろうか」とその場を乗り切っていたりしますね。

――バラエティ番組の立ち位置的なところでいうと、若い女性タレントさんが出てきて、ちょっとやり合いになる……みたいな流れって一時期かなり多かったですし、いまも求められることは少なくないと思います。大久保さんが今回の番組でTikTokに触れることを通じて、その方たちへの見方や立ち振る舞いが変わったり、独自の立ち位置を築けるのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。

大久保:「インフルエンサーって何?」とか、「何十万人ってすごいの?」みたいに振り切ったトンチンカンなオバさん芸人のボケって多いし、「なにそれ全然わかんない」っていうポジションは楽でわかりやすいんですけど、そこにはもう何人も諦めてる同年代のオバさんたちがいるんですよね(笑)。だったら、私がそこで少し知っている人として立ち回って「こういうことやってるからあざといよね」とか「こういうことでこの子はすごいんだ」って言えたり、そこ起点のボケに繋げていくと、見せ方・見え方が変わってくるのかも、というのはありますね。

 50歳にもなると、色んなものを「もういいや」と諦めがちになるんですが、やっぱり新しいものを見てると面白いなと思えるし、刺激を受けて幅が広がる感じはあります。そういう意味で、この番組をやることやTikTokに触れることは、ここにきてさらに成長する機会をもらえた気がしますね。

――ただ触っているだけじゃなく、毎週番組として何かをやったり撮ることをルーティーンにしていることは、たしかに大きそうです。

大久保:そうなんです。ラジオが大好きなので、最初に「大久保さんがパーソナリティのラジオ番組が始まります」と聞いた時はすごくテンションが上がったんですけど、フタを開けたらTikTokががっつり絡んでいて、最初こそ戸惑ったんですが、いまは「一粒で二度おいしい」じゃないけど、ラジオもできてTikTokのことも知れる、ある意味得した気分になれたので。あとは自分次第だなと思っています。

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