増加する「音楽×メンタルヘルス」のスタートアップ 27CLUBの楽曲を解析するAIも

増加する「音楽×メンタルヘルス」のスタートアップ

 現代社会において、精神的に思い悩んでいる人は少なくなく、今や精神疾患は脳卒中や急性心筋梗塞、糖尿病、がんに並ぶ5大疾患のひとつに数えられる。IT業界でも現代社会が抱える問題の解決のために、抜本的改革に乗り出す企業は少なくない。そんななか、一際注目を集めているのが、AIをフル活用した“音楽処方”だ。

 英国のヘルステック系スタートアップMediMusicは、「MediBeat」を開発。「MediBeat」とは不安に駆られたり、疼痛に悩まされていたりする患者向けに開発されたもので、いわばメンタルヘルス版Spotifyだ。パーソナライズ化されたプレイリストを作成し、そのプレイリストに音楽を分配するという仕組みになっている。

 さらに、患者の年齢や性別、国籍を問わず、社会学的および生理学的観点から試作を重ねており、20分間のプレイリストをたった数秒で編集可能だ。

 医師からの処方と聞いて、多くの人々が普通に思い浮かべるのが薬剤の処方だろう。メンタルヘルス領域では音楽療法と呼ばれるものがあるように、音楽による治癒力が注視されている。そこで音楽が持つ治癒力に着目し、MediMusicのITエンジニアの斬新な発想のもとで生み出されたのが、通常の薬剤を音楽に置き換え、患者に音楽を処方するという前代未聞の方法である。

 「MediBeat」の効果が期待されている診療領域は、認知症や術前・術後、慢性的な疼痛、歯科疾患など。ランカシャー教育病院NHS財団トラストで最初に行った治験では、コロナ禍により不安や恐怖などの感情が増幅し、それに伴い上昇した認知症患者の心拍数を22パーセント低減可能であることを証明。この研究結果を踏まえ、リハビリの一環として用いることで運動反応の改善に有効であると結論づけている。

 「音楽×メンタルヘルス」の可能性に賭けているヘルスケア系スタートアップは少なくない。例えば豪サウスウェールズ州に拠点を置くヘルスケア系スタートアップMuru Music Healthはそのひとつだ。同社の音楽視聴プラットフォームには1980年前半にリリースされた曲を中心にアップされているが、昔を偲ばせる曲を聴くことで過去の記憶や感情を呼び起こし、脳機能の低下を阻止することを狙いとする。MediMusicとはまた違った切り口でのアプローチのようだが、最終的にパーソナライズ化された音楽の提供を目指している点では共通している。

 Muru Music Healthの用途は老人ホームや高齢者コミュニティにとどまらない。医療(特にメンタルヘルス)や他の世代のウェルビーイングへの活用、コネクテッドカーやウェアラブルデバイスへの統合を経て用途を広げていく予定であると同社の設立者のニック・ジョンソン氏は海外メディアの取材に対しコメントした。

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