「Unreal Engine 5」はゲーム業界をどう変える? 新たに発表された機能を解説

「Unreal Engine 5」はゲーム業界をどう変える? 新たに発表された機能を解説

 2021年5月26日にアーリーアクセスが始まった次世代ゲームエンジン『Unreal Engine 5(以下、UE5)』。アーリーアクセス版は実際のゲーム制作には適さないものの、UE5発表時に大きな反響があった「Nanaite」や「Lumen」といった新機能を試すことができる。

 また、今回の発表では、UE5に実装された機能について新たな発表もあった。この記事では、新たに発表された機能について、ゲーム開発未経験者でもわかるようにかみ砕いて解説する。

大規模なオープンワールドゲームの開発を助ける新機能


 UE5では、大規模なオープンワールドのエディットを簡単にする機能が複数追加されている。その中でも印象的なのは”World Partition”だ。

 これまでの開発では、開発者がワールドを手作業で複数のマップに分割し、マップをそれぞれロード・アンロードしながら開発を行っていた。しかし、この方法では複数のユーザー間でファイルを共有する際に問題が発生することが多かった。

 しかし、World Partitonでは、ワールドを自動的に多数のストリーミング可能な”セル”に分割し、必要なセルを自動的にロード・アンロードする。このシステムにより、広大なワールドを一つのマップとして開発することが可能だ。開発者が必要な部分だけ読み込んで作業できるため、リソースも大幅に節約できるという。

 しかも、パフォーマンスを落とさずに現在編集していないマップを可視化する機能も備えている。「Hierarchical Level of Detai(HLOD)」というシステムを使用すれば、現在読み込んでいないマップも描画の数を減らしたうえで可視化できるため、広い範囲のマップを確認しながらもパフォーマンスを担保できる。

 また、これまでのUEでは、ひとつのファイルに同時にアクセスできるのは一人に限られており、開発の進行を妨げるケースもあった。一方、UE5では、複数のチームメンバーが同一ファイル内の異なるオブジェクトを同時に編集できる機能も備えているようだ。編集の競合が起こったり、巻き戻しが起きたりする心配もない。

これらの機能により、開発チーム全員が、同じワールドで同時にライティングや地形の作成といった作業を行える。

アニメーション作成を快適にするツールが実装


 キャラクターの動作などのアニメーションを作成・編集するためにゲームエンジンの外で作業をするのは非常に手間がかかる。このようなクリエイターのストレスを軽減するために、UE5ではエンジン内でアニメーションを制御できるツールを実装している。

  その中でも印象的なのが「Motion Warping」だ。Motion Warpingでは、地形に合わせてモーションを自動で調整してくれる。

 たとえば、キャラクターが瓦礫を飛び越えるモーションを作る場合、Motion Warpingでは、瓦礫の高さに合わせてキャラクターの回転からジャンプの高さ、移動距離、着地位置などを変更してくれるのが魅力だ。この新機能により、瓦礫の高さに合わせてそれぞれモーションを用意する必要はなくなった。

 また、今回公開されたUE5のデモでは、映画品質のクリーチャーのモーションをUE5の中だけで作成したことも明かされていた。なんと、合計5,000万を超えるポリゴン数を誇るオブジェクトを直接スケルトン(骨格)にアタッチすることも可能だという。

 さらに、自然な動作を簡単に作成できる「フルボディIK」という機能も備えている。デモ動画では、プレイヤーキャラクターである「エコー」の位置に合わせて、クリーチャーがレーザーを発射する方向や距離が変化する様子が映っていた。

 これらの新機能を組み合わせれば、ゲームプレイに反応する動的なアニメーションをUE5の中だけで作成することが可能となる。

オーディオエンジンも改修

 UE5ではオーディオエンジンも改修されている。新たに追加された「Meta Sounds」はオーディオを合成できるシステムだが、ゲーム中のイベントやゲーム内データに基づいてサウンドを操作できるのが特徴だ。

 具体的には、「ロボットがビームをチャージする時間に合わせて、サウンドの再生時間を自動的に決定する」といった使い道がある。この機能のおかげで、ゲームプレイに応じてサウンドを再度オーサリングする手間がなくなるそうだ。

 今回紹介したように、Unreal Engine 5にはゲーム開発者の手間を減らす工夫が随所に見られる。UE5の目玉機能ともいえる「Nanaite」や「Lumen」も活用すれば、小~中規模のゲーム開発スタジオでもスケールの大きいオープンワールドゲームを制作できるようになるかもしれない。

 また、UE5はあの『ドラゴンクエストⅫ』の開発に採用されており、現在さらに注目度が増している。UE5で制作された『ドラクエ』を遊ぶのも楽しみだ。

 ゲームを遊んでいても、ゲームエンジンについてはそれほど意識していないという人は少なくないはずだ。しかし、エンジンの特徴を知り、技術的な知識をわずかにでも身に付ければ、これまで遊んでいたゲームをまた別の角度から楽しむことができるようになるだろう。Unreal Engine 5は、ゲーム業界にどのような変化をもたらすのだろうか。

■坂田憲亮
愛知県の田舎で自由気ままに暮らすフリーライター。アプリやゲームなどエンタメ分野をはじめ、国内大手の各種メディアにて記事を執筆中。取材から撮影、Webデザインまで行う自称・マルチクリエイター。

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