バルミューダは国内スマホの救世主となるか? 成功のカギは「デザイン」ではなく「ソフトウェア」
国産スマホに未来はあるのだろうか。多くの国内メーカーがスマホ事業から撤退し、今や片手で数えられる程になった。ガラケー時代から続く歴史は、緩やかに終わりを告げようとしている。
こうした中、新興家電メーカーの「バルミューダ(BALMUDA)」がスマホ市場への参入を発表した。国内メーカーのスマホ事業が斜陽になりつつある今、バルミューダの参入は明るいニュースといえるだろう。しかし、このタイミングでの参入には、誰しもが期待と不安を覚えるはずだ。
そこで今回は、バルミューダの参入を通して、「国産スマホ市場の現状」や「スマホ事業を成功させるカギ」について考えていきたい。
新興・大手も苦戦する国産スマホ市場
2021年5月13日、バルミューダはスマホ事業への参入を発表した。現段階で判明している情報は、「5G対応」「2021年11月以降の発売」「製造パートナーは京セラ」「ソフトバンク専売(SIMフリー化の計画もあり)」のみだ。
具体的な情報は少ないものの、発表直後からTwitterのトレンドに入ったり、バルミューダの株価が上がったりと、多くの反響があった。その背景には、国産スマホの現状が大きく関係しているように思える。
現在、国内でスマホを販売しているメーカーは、京セラ、ソニー、FCNT(富士通グループ)の3社のみだ。(SHARPは台湾・鴻海の傘下にあるため除外)かつて、NECや東芝、パナソニックなどが参入していたが、思うように売り上げが伸びず姿を消していった。
また、大手メーカーだけではなく、数多くの新興メーカーも撤退している。
代表的なのは、バルミューダと似た境遇で参入したデザイン家電メーカー・amadanaだ。過去にはNECと共同開発し、ドコモからガラケーを発売していたが、スマホになってからは1モデルを残したきり、後継機は登場していない。
新興メーカー、そして大手メーカーでも上手く舵取りができないスマホ市場という存在。これまでにない差別化を実現するには、バルミューダらしさを反映させる必要があるだろう。
バルミューダ"らしさ"はどこまで通用するのか
バルミューダを語る上で、「革新性」と「デザイン性」は欠かせないキーワードだ。
バルミューダの革新性は、これまでに発売した製品が物語っている。飽和状態の各市場で、常にイノベーションを巻き起こしてきた。
「The GreenFan」と呼ばれる扇風機では、従来の製品とは違った"自然の風"を再現し高い評価を得た。「BALMUDA The Toaster」と呼ばれるトースターでは、"スチーム"と"温度制御"を採用し、焼き立ての味を実現した。
そして今回、バルミューダはその革新性をスマホに反映する。どのような切り口でスマホ市場に挑むのか。少なくとも私たちの憶測の域を出ない革新性では、一定の評価を得られないのは確かだ。
続いて、バルミューダのデザイン性に着目してみよう。バルミューダのデザインは、国内メーカーの製品に見えないほど洗練されている。どれもスタイリッシュで、他社の家電とは一線を画す仕上がりだ。
こうした製品は、日本の「グッドデザイン賞」を始め、ドイツの「iF Design Award」や「Red Dot Design Award」などを受賞してきた。
そんなバルミューダのデザインに対する姿勢は、ストイック以外の何物でもない。「BALMUDA The Toaster」を開発する際は、スケッチやレンダリングを含めて、約2,000のアイデアが生まれたそうだ。飽和したスマホのデザインを打開するには、十分なアイデアの数といえるだろう。
また製造パートナーの京セラは、こうしたデザインを実現するプロフェッショナル集団だ。長年の経験はもちろん、過去には「au Design project」にて、いくつかのINFOBARシリーズを手がけた実績がある。
しかし、スマホのデザインは、家電製品と違って改善の余地が少なく、どのメーカーも差別化に苦戦している。固定化されたデザインをどう覆すのか、バルミューダの手腕が試されるところだ。
革新性とデザイン性、その両輪がしっかりと噛み合えば、他にはないスマホを生み出すことができる。ただ、国産スマホ市場を制するには、それだけではもの足りない。
なぜなら、スマホ事業成功のために重要なのは、デザインではなくソフトウェアだからだ。